見出し画像

ドイツのファスナハト

Deutschland

ヨーロッパ各国のカーニヴァルの中で全市、全町村をあげて最も盛り上がるのはドイツカーニヴァルではないだろうか?
ドイツ語でカーニヴァルは、「ファスナハト(Fastnacht)」または「カルネヴァル(Karneval)」という。
ファスナハト(ファッシング Fashingとも言う)」とは「ファステン(Fasten 断食)」の「ナハト(Nacht 夜)」という意味でいかにも合理的なドイツらしいネーミングだ。主にドイツ中央部から南部にかけてのカトリック社会で祝われる。
ファスナハトは、「ライン河畔のファスナハト(Rheinisher Fastnacht)」と「黒い森地方のアレマン人のファスナハト(Schwäbisch-alemannische Fastnacht)」の大きく二つの地域に分けることができる。
ケルンデュッセルドルフマインツなどのライン河畔の大都市では大きな山車が繰り出し、延々と大パレードが続く。一方、黒い森地方のファスナハトは村々で独自のお面、コスチュームを造りオリジナリティに富んでいる。

ケルンのファスナハトは、その期間も規模も大掛かりだ。
毎年、11月11日がファスナハト暦の元旦とされ、この日から無礼講の宴会が始まり、40日後が聖誕祭、さらにその40日後、2月2日の「主の奉献」となる。その頃から、公会堂、ホールを使って楽団入りのファスナハト・ディナーのパーティがある。
四旬節の前週の木曜日から本格的なファスナハトへ突入。まずは、「婦人たちのファスナハト(Frauen Fasnacht)」があり、この日間違って飲食店に入ろうものなら、ネクタイは切られ、袋叩き、飲食費用の支払い代行などさまざまな責め苦が待っている。この日から仮装生活も始まり、ほとんどの人が仮装して翌週の灰の水曜日までの無礼講を楽しむ。大パレードの山車が出る日は都市によって違い、ライン河畔最大の都市ケルンでは「薔薇の月曜日(Rosen Montag)」に昼から大パレードがある。

2022年の山車に、危険な!マッチを持ったプーチンと習近平の張りぼて人形がパレードを賑わせていた。
ケルン市民の慧眼、予知力は大酒飲んでもブレていなかった。

トラック、馬、農業用トラクターに曳かれた山車の前をロココ様式の軍服、ファスナハト用のド派手なユニフォームを着た楽隊が先導する。

山車の上、パレードの行進の娘たちが花やチョコなどが観衆に投げ込む。

薔薇の月曜日は、ケルン市とその近郊町村は休日、オフィスも観客席、パーティ会場に早変わり。社員たちも仮装で出勤、朝から夜までオフィスで飲み、食べ、踊る。

観客たちの仮装の衣装もパレード参加者に負けず劣らずの変装ぶり。老いも若きも男女を問わず、この日は全市あげて大仮装パーティとなる。何と多種多様なオリジナリティに富んだコスチュームばかりで感服、感嘆。

黒い森地方のアレマン人のファスナハト
ドイツ西南部に拡がる「黒い森地方(Schwarzwald)」は、遠くから見ると森一帯がトウヒ、モミの樹々で丘陵全体が黒く見えることから「黒い(Schmalz)森(Wald)」と呼ばれる。
この地方にはアレマン人という民族が住んでいたこともあり、「黒い森地方のアレマン人のファスナハト」と呼ばれる。
フランス語でドイツのことを「アレマーニュ(Allemagne)」、イタリア語で「アレマー二ア(Almania)」、スペイン語で「アレマン(Alemán)」と呼ぶのも、ドイツ西南部にアレマン人が住んでいたことに由来する。
この地方は、他のドイツの地域と違った特殊の文化を形成していて、ドイツ南部、独伊墺の国境地域チロル地方などと文化を同じくする非常に民族色豊かな地域だ。
黒い森地方のアレマン人のファスナハトは、各町村が独自のお面やコスチュームを持っているのが特徴。

黒い森地方の中心都市フライブルグ(Freiburg am Bresgau)の北約30キロメートルに位置するハースラッハ(Haslach)は人口約6000人の小さな村だが、ファスナハトの日曜日に村民参加のパレードがある。
フェルト製の緑と黄色のコスチューム、森が多い地域だけに獣をイメージしたコスチュームなどローカル色豊かだ。怖い顔したヘクセ(Hexe 魔女)も登場する。寒い地域なので、ファスナハトは冬の寒さを追い払う行事ともいえる。

フライブルグから北東に20キロメートルの地に位置するエルツァッハ(Elzach)のファスナハトは、そのお面が黒い森地方の中でも出色だ。黒い森の木材を彫り、ぶどうの葉につくカタツムリでお面を覆う帽子、シュネケンフート(Schneckenhut)を作っている。
この地方ではカタツムリをファスナハトのお面だけではなく料理して食べる。地図を良くみると西へ15キロメートルも行けばライン河、その向こうはカタツムリ料理の本場フランスだ。グルメの国フランスではニンニクとオリーブ油で調味したカタツムリを食べるが、黒い森地方ではカタツムリは切り刻んでスープにする。双方食べてみたが軍配はやはりフランス版カタツムリ料理に。カタツムリで作った三角形の帽子の隅の赤いボールは、黒い森地方特産のさくらんぼを表している。手に手に持っている白い風船風の袋は豚の膀胱。棒につけた膀胱を道路を叩き、観客を叩き、この日一日はヤリタイ放題の一日だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?