めぐりん★村田

~のぞいてみよう、世界のアコカルチャー!~ 日本アコーディオン協会の季刊の会報・機関誌…

めぐりん★村田

~のぞいてみよう、世界のアコカルチャー!~ 日本アコーディオン協会の季刊の会報・機関誌に2016年より連載中のコラム「ジャバラのまど」の過去記事を加筆訂正し、誌面では伝えにくい動画やリンク等を加えたものを中心に、アコーディオン関連の文章を発表するためのnoteです。番外編もあり。

最近の記事

ジャバラのまど Vol.27 Y2Kと新宿アコーディオン流し

ファッションの世界ではちょっと前まで90年代リバイバルと言われていたのが、昨年あたりから「Y2Kリバイバル」という言葉が盛んに聞かれます。Y2K、つまり西暦2000年代、2000年から2009年までのことです。 「えっ!リバイバルするほど昔だっけ?」と、びっくりする方も多いと思いますが(私もそのひとり)、思えば先ごろめでたく20回目を迎え、蛇腹楽器誕生200周年に錦を飾ったcobaさんの「Bellows Lovers Night」の第1回が2002年。つまり、ゆうに20年…も

    • ジャバラのまど Vol.26 兵役逃れとアコーディオン弾き

      ウクライナとの戦争において、事態の打開を模索するロシアが出した動員令。いわゆる徴兵です。そのせいですっかり死語になっていた「徴兵逃れ」や「兵役逃れ」という言葉がよみがえり、人々の口の端にのぼるようになりました。まったく21世紀だというのに、時代が巻き戻ったようで暗澹とします。 「兵役逃れ」というと、私には思い出されるアコーディオン奏者がいます。ディック・コンティーノ。1940年代にアメリカで活躍したイタリア系の奏者。甘いマスクに超絶技巧の「アコーディオンを弾くヴァレンチノ」。

      • ジャバラのまど Vol.25 マックスウェル通りのチキンマン

         私がアコーディオン関連の事柄を調べたいと思うときは、映像や写真を見て気になって…ということが多いのですが、今回もそのひとつ。だいぶ前に偶然見かけて、ずっと気になっていた写真のこの男性について調べてみました。頭の上に鶏をのせ、ホーナーの2列ダイアトニックアコーディオンを弾くアフリカ系の老人。蛇腹の躍動感がとても魅力的な写真です。 初めてこの写真を見かけたときにキャプションから知ることができたのは、彼が「チキンマン(Chikinman)」と呼ばれていることと、この場所が「マッ

        • ジャバラのまどVol.24 伝記映画「Weird: The Al Yankovic Story」のニュースによせて

          私がこの文章を書いているのは2022年5月初頭。今、Daniel Radcliffe主演で“Weird Al”Yankovicの伝記映画「Weird: The Al Yankovic Story」が作られるというネットニュースを読んで、びっくりしているところです。 Daniel Radcliffeは「ハリーポッター」であまりにも有名ですね。彼はこのシリーズのヒットのおかげでもう一生お金には困らないため、これからは自分がやりたい役だけをやる!と宣言。近年では「スイスアーミーマ

        ジャバラのまど Vol.27 Y2Kと新宿アコーディオン流し

          ジャバラのまど Vol.23世界最大のコレクション!? A World of Accordions Museum

          早いものでコロナ禍も2年越し。海外旅行にも自由に行けない状態が続き、旅好きの方は寂しい思いをしていることでしょう。行けるようになったらどんなところに行こうか、今からいろいろと思いを巡らせている人もいるかもしれませんね。アコーディオン好きなら、そこで旅先のひとつにアコーディオンの博物館を加えるのも楽しいもの。 アコーディオンの博物館は世界にいくつかありますが、私がざっと思い浮かぶのはイタリアのMuseo dedicato alla FisarmonicaやドイツのDeutsch

          ジャバラのまど Vol.23世界最大のコレクション!? A World of Accordions Museum

          ジャバラのまど Vol.22 スケルトンアコーディオン 「Lincordian」

          今40代以上の方なら、iMacに端を発した90年代の「スケルトンブーム」を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。いまでこそカラフルなデザインが増えてきましたが、当時はパソコンのボディといえば黒または野暮ったいベージュ。そんな中にあって発表されたiMacは、外装が透明で中の基盤が見えるいわゆるスケルトンデザイン。その斬新さ、新鮮さのインパクトはたいへんなもので、このデザインコンセプトはパソコン以外にもずいぶんと波及したものでした。特に家電や生活雑貨、文房具などに顕著で

          ジャバラのまど Vol.22 スケルトンアコーディオン 「Lincordian」

          ジャバラのまど Vol.21 ジェームズ・スチュワートとアコーディオン

          映画スターやミュージシャンなど、ひと昔前のセレブレティのポートレートを見ていると、意外とアコーディオンを持っているものが少なくないことに気づきます。マレーネ・ディートリッヒやグレース・ケリー、エルビス・プレスリーにジョン・レノン、はては、芸能人ではありませんがココ・シャネルまで。それぞれに、アコーディオンと共に思い思いのポーズで映っています。当人たちが弾けるのか弾けないのかは不明なれど、抱えて写ればなんとなく絵になる…アコーディオンにフォトジェニックな魅力があるということのひ

          ジャバラのまど Vol.21 ジェームズ・スチュワートとアコーディオン

          ジャバラのまど Vol.20 楽器と悪魔と伝説と

          「悪魔の楽器」ないし「悪魔が発明した楽器」と言われたら、アコーディオン好きの方なら「バンドネオン」を連想することでしょう。しかしこの言葉、実は出所も根拠も不明なのです。それなのになぜか定着したこの「悪魔」という言葉のせいで、バンドネオンは殊更にミステリアスに語られ、その上タンゴに対しては「情熱」という常套句による「風評被害」が追い打ちをかけ、ながらく本質の理解の妨げに。バンドネオン奏者の小松亮太さんが危機感を抱き、先日とうとう「タンゴの真実」(旬報舎)という本を上梓されたので

          ジャバラのまど Vol.20 楽器と悪魔と伝説と

          ジャバラのまど Vol.18 ロシア 究極の合奏用アコーディオン

          アコーディオン関係以外の友だちにアコーディオンの話をすると、まずは「懐かしいー!学校の音楽室にあったよ」と言われ、二言目に「でも左側にボタンなかったよ」と言われるのはアコーディオン弾きの常。小学校や中学校にあるのはたいてい合奏用アコーディオン。左手に伴奏のためのボタンがありません。この楽器で合奏をした経験がある方も多いのではないでしょうか。 1台でいろいろできるのがアコーディオンのいいところなので、やはり独奏用が技術の華。1台にどれだけ盛り込めるかが勝負のようなところがあり、

          ジャバラのまど Vol.18 ロシア 究極の合奏用アコーディオン

          ジャバラのまど Vol.17 パキスタン 歌うアコーディオン

          個人的な趣味により、さまざまなアコーディオン国際コンクールの動画配信をチェックし始めてはや8年。当初は出場するのも審査するのもヨーロッパの人たちが中心で、アジアからは中国または韓国の音楽エリートがちらほら混じる感じでしたが、今年のPIFも含め、近年の状況をしげしげ思い返してみますと、それ以外のアジアの国が少しずつ増えてきたように思います。インド、ベトナム、カザフスタンなど、以前はまったく見かけなかった国々なので、それぞれにどんなアコーディオン文化があるのか興味がかき立てられる

          ジャバラのまど Vol.17 パキスタン 歌うアコーディオン

          ジャバラのまど vol.16 幻のジャズアコーディオン奏者 Alice Hallのこと

          1940~50年代のことを、アメリカのアコーディオン史の中では「黄金時代(ゴールデンエイジ)」と呼びます。のちにジャズアコーディオニストの代名詞となるような面々が群雄割拠し、ポピュラー音楽の中でのアコーディオンの礎が築かれていった時代。ほとんどが男性奏者である中、異彩を放っていたのがAlice Hallでした。Benny Goodmanをはじめ、Duke Ellington、Peggy Lee、Nat King Cole、Lena Horne、Dizzy Gillespieな

          ジャバラのまど vol.16 幻のジャズアコーディオン奏者 Alice Hallのこと

          ジャバラのまどVol.15 モスクワのアコーディオン博物館 Alfred Mirek Russian Accordion Museum

          アコーディオンの博物館といわれる場所は世界中にいくつかあり、イタリア・カステルフィダルドやアメリカ・ウィスコンシンのものがよく知られていますが、モスクワにあるAlfred Mirek Russian Accordion Museumもそんな博物館のひとつ。 Alfred Mirek Garmon Museumとも呼ばれるこの博物館、楽器の収蔵数は他の世界的な博物館に比べると特に多いとは言えないものの、特筆すべきはバヤン、ガルモーニをはじめとしたロシア独自のアコーディオン展示が

          ジャバラのまどVol.15 モスクワのアコーディオン博物館 Alfred Mirek Russian Accordion Museum

          ジャバラのまど Vol.14 君の名は…?アコーディオン呼び名あれこれ

          アコーディオンはもはや世界共通語。どこの国に行っても「アコーディオン」といえば、誰もがほぼ同じ形の楽器を思い浮かべるでしょう。しかし、ことダイアトニックアコーディオンに関しては、地域ごとにさまざまな呼び名が存在します。アコーディオンは歴史的には新しい楽器のためか、なかでも既存の楽器の名前が転用されるケースが目立ちます。 まず目立つのがオルガン由来。わかりやすいところでは、イタリアの独特な形状のダイアトニックアコーディオン「Organetto」。 これはそもそもは「小さなオル

          ジャバラのまど Vol.14 君の名は…?アコーディオン呼び名あれこれ

          ジャバラのまどVol.13 喉歌とアコーディオン Oidupaa Style

          遊牧民、なかでもモンゴル系の顔をした人々は、アコーディオンのイメージから一番遠いような気がしていたので、彼らの音楽の中にアコーディオンの音色が混じっているものがあることに気付いたときには、びっくりしたものでした。とくに印象的だったのは、「喉歌」による弾き語り。 喉歌といえばモンゴルのホーミーでご存じの方も多いでしょう。喉を詰めて発声することにより浪曲のような低いダミ声を出す独特の発声法です。さらに舌や口腔内をうまく使うことで振動を加え、その低音の中に笛のような高い音を混ぜ込む

          ジャバラのまどVol.13 喉歌とアコーディオン Oidupaa Style

          ジャバラのまどVol.12 怪奇!心霊アコーディオン

          今でこそノスタルジックなイメージで語られがちなアコーディオンですが、発明されてから広く普及するまでの時期は、実は産業革命の時代と重なっています。技術革新によりさまざまなニューモデルが次々に開発され、人気を競い合いました。娯楽を持ち運べる最新メカということで、まあ、今で言えばスマートフォンのような存在だったのかも。 アコーディオンがバリバリの新製品だったこの時代には、「科学で解決できないことはない」と考える「科学万能主義」が台頭していました。しかし、なぜか同じ時期に、一大心霊ブ

          ジャバラのまどVol.12 怪奇!心霊アコーディオン

          ジャバラのまどVol.11 2つで充分?! ベースボタンの話

          数年前からダイアトニックアコーディオンにハマってしまい、入手しては「なるほど~!こうなってるのか!」などとやっていたら、気が付けばその手の楽器が7個も集まってしまいました。そしてよく見たら、そのうちの4種類にはベースボタンが2個しか無かったのです。 アコーディオンのベースと言えば、ご存じの通り120個が主流。もっと少なめ、あるいはもっと多い楽器をお持ちの方もいると思いますが、さすがに2個というのは理解の範疇を超えますよね。ここでいうベースボタン2個とは、ベースとコードのボタン

          ジャバラのまどVol.11 2つで充分?! ベースボタンの話