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【是枝監督映画「真実」】特別編集版はほんの僅かなシーンの追加で全く違う切り口を見せる楽しい作品

※以下ネタバレを含みます。また映画館での鑑賞をもとに記事にしていますので内容が正確でないことがあります。

是枝裕和監督の最新映画「真実」の特別編集版が公開されました。通常版の「真実」よりもイーサン・ホーク演じるハンクら男性陣にもう少しだけフォーカスした作品です。是枝監督のオリジナルの脚本により近い内容だそうです。実際に鑑賞しましたが、通常版に比べわずか10分長いだけなのですが、通常版と違った切り口とストーリーを楽しむことができました。それでは、印象に残った通常版との違いをみていきましょう。まずは男性陣の1人、ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の現在のパートナー、ジャックについてです。

ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の現在のパートナーは浮気中!?

特別編集版ではリュミールの夫ハンク(イーサン・ホーク)とファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の現在のパートナーのジャックが市場で買い物をするシーンが追加されています。ハンクが1人買い物を終えると、ジャックがイタリア料理の先生と楽しげに会話をしています。それを見たハンクは帰り道でジャックに「料理の先生といい感じだな」と話しかけます。ジャックは「あくまで生徒のうちの1人だよ」などと見透かされながらも誤魔化します。帰宅後、ハンクら男性陣だけで集まったときに手は繋いだのかと聞かれると、ジャックは「ピザをこねるときにこう上からね」などとまんざらでもなさそうに答えます。映画の冒頭ハンク一家がファビエンヌの家に来たとき、ファビエンヌが「ジャックは最近イタリア料理にハマっているのよ」と言うシーンがあります。このセリフは通常版でも記憶に残っていたのですが、実はこういう理由があったのでした。なお、この市場でハンクが買った奇妙な木の彫り物の像も映画では小道具として活躍します。

パートナーの浮気に気づいているファビエンヌ!?

印象的なシーンの1つに、ファビエンヌが現在のパートナーのジャックに寝る前に肩を揉んでもらいながら「私ってもう女優として終わったと思う?」「やっぱり答えるのやめて。本当のこと言いそうで怖い」と言うシーンがあります。この会話の後に「今日のデザートよりも、いつものティラミスがいいな」と呟きます。「あのデザート誰に教わったの?」と聞くファビエンヌ。ジャックは「ママにだよ」と。それに対して「誰に教えてもらったのかなんてどうでもいいのよ」などとファビエンヌは続けます。通常版であれば見落としてしまいそうなやり取りですが、特別編集版だと全く意味が違ってきます。そのジャックの作った新しいデザート、あの女に教えてもらったの、と。ファビエンヌがジャックとイタリア料理の先生との関係にどこまで気づいているかはわかりません。ただ、今は飽きるくらいの定番のティラミスはもしかしたらジャックがファビエンヌと付き合い始めた頃に作ってくれた思い出のデザートなのかもしれない、などと妄想してしまいそうになります。

(続く)

是枝監督の制作秘話が満載です!この本を読んでから映画を観るとより一層楽しめました。


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