見出し画像

【是枝監督映画「真実」】あらすじと見どころに結末は?〜映画「真実」は何も真実を明かさない映画である〜

映画「真実」は、是枝裕和監督のフランスで撮影された最新映画です。是枝監督は、直近の映画「万引き家族」でパルム・ドール賞を受賞されましたが、「海街diary」「そして父になる」「海よりもまだ深く」「歩いても歩いても」など国際的に高い評価を得ている作品を製作し続けています。映画「真実」には過去の是枝監督映画の要素が多く詰め込まれており、また何度観ても新しい発見のある映画でした。

ところで、皆さんにとって「母親」とはどういう存在でしょうか?あるいは「娘」とはどういう存在でしょうか?
映画真実では、娘から見た「母親」、母親から見た「娘」のそれぞれの“真実”が交錯的に描かれています。お互いの目が映し出す母親・娘の像が交われば“真実”が浮かび上がるはずなのですが、この映画では“真実”を断定的には描いていません。映画を観てどのような像を観客が描く楽しみ、映画の余白を残した作品です。
といっても、鑑賞後に重たい気持ちになるものではなく、会話の節々に樹木希林が演じる役が言いそうなユーモアや嫌味がありクスッと笑える箇所が幾度とあります(映画館でも笑いが起きていました)。また、最後のシーンは明るさを残したまま終わります。
それでは、映画真実のあらすじをみていきましょう。

ファビエンヌの自伝「真実」に真実が書かれていない!

有名女優ファビエンヌが自伝「真実」を出版したことを祝いに、その娘のリュミエール一家(夫と孫娘)が駆けつけるが、娘リュミエールは自伝「真実」に事実とは違うことが書かれていると怒り出します。母ファビエンヌは、女優が本当のことを書くはずがないと取り合いません。長年ファビエンヌのマネージャーをしていた老齢の男性リュックは、自伝「真実」に一切書かれていないことに失望し、ファビエンヌの元から去っていきます。

劇中劇「母の記憶に」と気鋭の若手女優マノン

リュックが出て行ってしまったため、娘リュミエールがファビエンヌが出演する映画「母の記憶に」の撮影に立ち会うことになります。ファビエンヌは、その映画「母の記憶に」で娘役を演じることになっていますが、つまらない役だと言います。撮影現場では、母親役の気鋭の若手女優マノンの演技力に圧倒され、「あれぐらい私でもできるわよ」などと嫉妬します。

亡くなったエマに対するファビエンヌの思いとリュミエールの母ファビエンヌを許さない気持ち

ある撮影の終わった夜、ファビエンヌはマノンの顔が忘れられず寝つけません。ファビエンヌは、あるワンピースを大事そうにクローゼットから取り出します。それは、亡くなったエマ叔母さんが1番似合うワンピースなのでした。エマは、ファビエンヌと同様に、若くして注目を集めた女優なのでした。
そんなことを知らない娘のリュミエールは、ファビエンヌ、リュミエールの夫と娘(可愛い孫娘)、ファビエンヌの元夫が集まる晩餐の場で、「母を許さない」とファビエンヌを責めます。優しいエマおばさんが大好きだったのに、母であるファビエンヌがエマおばさんの役を監督と寝て奪って映画賞を受賞した。それが原因でエマおばさんは死んでしまったのだと。自分が幼い頃に出演した「オズの魔法使い」も観に来てくれなかったし、学校のお迎えも父かマネージャーのリュックしかしてくれなかったと。

ファビエンヌの衰え

ファビエンヌが出演する映画「母の記憶に」の撮影は続きますが、ファビエンヌは娘役を相変わらずうまく演じることができません。ファビエンヌなりに台本を無視した迫真の演技をしますが、監督からはあっさりとNGとされてしまいます。リュミエールの夫だけが、ファビエンヌの孤独、衰えを感じているようですが、娘リュミエールの中では強い母親・女優のままのようです。

ファビエンヌの告白とリュミエールの仕返し

そんなある日の晩、ファビエンヌは、リュミエールと2人で話している時に、実はリュミエールが出演した「オズの魔法使い」を後ろの方で観ていたと告白するのです。演技のことをとやかく言われるのは嫌だろうと思って娘に配慮してあえて今まで言わなかった。エマおばさんが自分の娘リュミエールに絵本「森の魔女」を読み聞かせてばかりいるから、映画の「森の魔女」は私が出演しようと思ったと明かすのです。エマおばさんに嫉妬していたのだと。ここで、娘リュミエールは母ファビエンヌに抱きしめられながら泣きます。「お母さんを許してしまいそう」
ところが、母と娘のこのシーンは長く続きません。ファビエンヌが「あーっ!この気持ちを撮影に活かせないのが悔しい」「昨日の撮影やり直せないか」と1人で興奮し出します。母から離れて呆気に取られるリュミエール。ファビエンヌがリュミエールに伝えた、“実は「オズの魔法使い」を観ていた”だとか“エマおばさんに嫉妬して「森の魔女」に出演した”というのは「真実」だったのかわからなくなります
その後、脚本家であるリュミエールは、自分の娘シャルロットに一芝居打たせる脚本を作ります。孫娘シャルロットが脚本通りに祖母ファビエンヌに「女優になりたい」「おばあちゃんに宇宙船に乗ってほしい」と言います。「なんで?」と返すファビエンヌに「そうしたら私が大きくなって女優になったところをみてもらえるから」と答えます(宇宙船のくだりは劇中劇「母の記憶に」にあります)。ファビエンヌは気持ちをコロッと動かされて喜びます。リュミエールは仕返しをしたのでした

亡きエマとエマのワンピースを着たマノンと

ファビエンヌは娘リュミエールとのやり取りがあったからか、次第に演じることへの活力を取り戻し様々なアイディアを口走り出します。映画「母の記憶に」の娘役もこなし切りました。そして気鋭の若手女優マノンに、エマおばさんのとっておきのワンピースをプレゼントします。マノンにそのワンピースを着てもらうと、まるでファビエンヌ、リュミエール、エマがまるでそこにいるかのような美しい瞬間が訪れます。

おわりに

最後は、リュミエールが脚本を書きファビエンヌが出演する映画のメディア発表会に向けて家族みんなで出発するところで終わります。


※映画館での鑑賞をもとに記事にしていますので内容が正確でないことがあります。
※映画を様々な視点から観るにはまずは正確にストーリーを把握することが必要であり、本記事がその一助となればと思い書かせて頂きました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?