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【日本語訳】シャザム2の監督がHDRについて語った件

監督の連続ツイートが良い内容だったので、まとめて日本語訳しました。

監督に影響を与えた、日本のある有名アニメ映画についても語っています。

Nerdy stuff: Finished the Dolby Vision home video version of Shazam 2 today. HDR is an interesting thing. I’ve seen home theater enthusiasts complain about movies not having full HDR levels at all times. But the thing is…
オタクっぽいこと書くね:シャザム2(神々の怒り)のホームメディア用のドルビービジョンを今日仕上げたんだわ。HDRって面白いよね。よくホームシアターオタクが映画でHDRをフルレンジで使ってないことについて不満をぶちまけてるのを(SNSで)見るけどさ、でも違うと思うんだよね。

Having the full 1000+ nits range all the time can get annoying. If you have people in a dark room and there’s an open flame, the flame will look great at 1000+ nits but that’s going to be all you’re looking at. So instead you’ll trim the scene to something like 500 nits.
1000ニト以上のレンジをずっと使い続けるなんてイライラするだけだよ。暗い部屋に誰かを連れてきて、そこで焚き火をしたとする。その焚き火に1000ニト以上の明るさがあれば素敵だろうけど、逆にそれしか見えんくなるのよ。だから(人物も見えるように)あえてそのシーンを500ニトくらいまで絞るわけ。

I went through and picked moments and scenes in Shazam 2 where it was appropriate to go full range. It’s like that saying “if everything is loud then nothing is loud”. You pick the moments where you need the impact.
僕は全編を通じて、フルレンジが必要な瞬間とシーンだけをシャザム2の中から選んだの。つまりこういうことだよ、もし全ての音がうるさかったら、最早そこにはうるさいものなんて無くなる。インパクトが必要な瞬間を選ぶんだ。

So much is about contrast as well. There’s a scene at night with lots of lightning strikes that never go above 500 nits but because they’re against black sky they look really bright. Going higher would be annoying to watch.
コントラストについても同じことさ。夜のシーンがあるんだけど、そこにある灯りは殆どが500ニト以下だよ。でもそれは黒い空の中では本当に明るく見えるからさ。それ以上明るくするとかえって見辛くなる。

Something that happens in HDR mastering is seeing too much as well. Sometimes you want details to be blown out.
HDRでマスタリングしてるとやりすぎがよく見えてしまうことが時々ある。(でも逆に)詳細を吹き飛ばしたい時もある。

There’s a shot in Shazam 2 inspired by this moment from Akira. This was one moment where I wanted 1000+ nits. There was a bunch of detail within the explosion still visible in HDR though so we had to really push things to get that solid white look.
シャザム2には『アキラ』にインスパイアされたショットがあるんだ。これは僕が1000ニト以上に選んだ瞬間の一つさ。HDRにすると爆発の内部にいろんなものがゴチャゴチャ見えてしまうから、真っ白に見せるために輝度をガッツリ上げる必要があったよ。

That happened on Annabelle Creation as well. In windows that were supposed to be blown out by sunlight you could suddenly see equipment and things outside in HDR.
『アナベル』の時も同じことをしたよ。窓が本来は日光で白飛びするはずの場面でも、HDRにすると窓の外の機材や何やらが見えてしまうんだ。

But the best thing about all this careful consideration about presentation is that it will all be for nothing at the end when people watch it with motion smoothing and store demo colors on their TVs at home.
でもね、何を見せるかで一番注意して考えるべきことは、最終的に人が見たときに、その家庭用テレビのモーションスムーズ機能や色調補正に関係なく、そんな技術的な工夫なんて何でもないと思える(くらいに作品に溶け込んでいる)ことなんだよね。■

デヴィッド・F・サンドバーグDavid F. Sandberg
スウェーデンの映画監督、映像作家。1981年1月21日生まれ。
監督作品(長編映画)
- 2016 ライト/オフ(Lights Out)
- 2017 アナベル 死霊人形の誕生(Annabelle: Creation)
- 2019 シャザム!(Shazam!)
- 2023 シャザム!〜神々の怒り〜(Shazam! Fury of the Gods)

おっしゃる通りだと思います。

監督が最初に述べている通り、確かにSNSではモニターへの出力値を分析するツールにかけて、「うーんこの映像はHDRで可能な最大まで使っていませんね」なんてドヤ顔で御意見を表明しているオタクはしばしば見ますが、私も何を言ってるんだコイツはと思うことがありますもん。(笑)

そして、スレッドでは延々とHDRの技術よりな話を展開したのに、最後は「技術を見せびらかすことではなくて、物語を適切に演出することが重要なのだ」と締めるのも非常に良いと思います。

これはあらゆるジャンルの技術者が心に刻むべき金言だと言えるでしょう。技術者はどうしても「必要なこと」よりも「可能なこと」をやりたくなってしまう性分がありますから。


以前から宣言している通りで、私はシャザム2を鑑賞するつもりは1ミリもありません。プロデューサーでジェフ・ジョンズが参加してるのでね。ザッカリー・リーヴァイのことも正直あまりよく思っていません。監督とファンの方には申し訳ないですが。

でも今回の連続ツイートで、監督のことは少し好きになりました。よく考えたらジェフ・ジョンズがあまり映画制作には口出ししてないシャザム1は良作だったと思ってます。私はザッカリー:リーヴァイを嫌いですが、それで映画の評価を下げるようなことはしませんので。

私はホラー映画を基本的に相手にしない傾向(ジェイソンのような分かりやすい殺人鬼が出てくる映画は特に)があるのですが、アナベルはどこかのタイミングで見たいと思いました。

了。

PS:この動画に関連する記事:

どんなにそれを評価する人が居たとしても、嫌いなものは嫌いですね。(笑)

最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!