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女子更生施設のお仕置き

<第一章>

「ねえ、早く出した方がいいよ~?この子さぁ、空手二段だよ?鼻とか前歯とか折れちゃうよ~ああ、痛そぉ~」

「なんもウチらもくれって言ってるわけじゃないのよ?貸してくれっつってんじゃん?返すよちゃんとさ」

 あまりあるほど裕福。そんな家庭で生まれ育った二人には女子高生としては十分なお小遣いが渡されていた。
 しかし、たまにしか学校に通わずに深夜まで遊びまわる二人にはそれだけでは到底足りなかった。

「お、結構持ってんじゃん~。いいね~、友達になろっか~?」

「アハハ、うける。とりあえずこの二万は借りとくわ。今度会ったら返すから。はい、お疲れさん」

 歓楽街の近くでブランド物を身に着けているお嬢様学校の生徒狙い。
 人通りの少ない裏路地に連れ込んで脅しつける。特殊警棒と空手。特殊警棒で看板をへこませ、跳ね上がるような回し蹴りを額スレスレで止めてやる。それで、大抵は震える手で紙幣を掴んで渡してきた。ちょろいもんである。
 無駄に近寄ってくるオラオラ系ホストと馬鹿なナンパ野郎は問答無用で容赦なくボコり、宣言通り鼻を折ってやった。ついでに財布からお札は丸ごと頂く。それが二人の日常だった。

「ちょっと飽きてきたなぁ。馬鹿なホスト殴んのは楽しいけど。札束持ってるし」

 カラオケボックスの一室でカナメが電子タバコを吹かしながらそういった。喧嘩も金も大好きだが、スリルが足りなくなってきていた。猫のような大きな瞳に母親譲りのプラチナブロンドのショートカットが良く似合う口の悪い少女。

「いや~、もうすぐ新作のリップ出るからそれ買ったら一旦止める~?何か、暴れまわる女子高生がいるってちょっと有名なってっから~そろそろヤバイかもだし~」

 カナメの向こう側で麗華がカナメの髪色そっくりに染めた自慢の金髪を弄りながらそれに答えた。せっかくアイドルメンバーの一人と言われても信じてしまう容姿なのに、ふっくらとした色気のある唇から吐き出されるだらだらとした喋り方がそれを台無しにしていた。

「んじゃ、まぁ最後の稼ぎに行きますか?」

「待って~、カナメちん。あーしピーチティー頼んじゃったぁ。それ飲んでからね~」

 分けのわからない事ばかりいう親も学校も嫌いだったが、遊んでいる時は誰にも嫌な事を言われる心配はない。強制される事ばかりで、本当の自分たちは自由だと思いたかった。
 そうして無邪気に遊んでいるだけに見える二人だったが、恐喝、あるいは強盗で所轄署に目を付けられ始めていた。歪な自由は終わりを告げようとしている。思わぬ形で。

 カラオケボックスを出た二人は路地の前に立って「獲物」を物色していた。

「お~?」「いーじゃん、あれ」

 いかにも金持ち風のお嬢様。ゆるやかな淡い茶色セミロングの髪に、手入れの行き届いた初雪のような儚げな容姿。それにブランドバッグに高級腕時計。ナンパ男たちを曖昧な笑顔でどうにかといった感じで躱している。
 背は高い。大学生くらいだろうか。ぼんやりと一人で繁華街を歩いているなんて素晴らしいとカナメと麗華は思った。二人はニシシと笑い合うとお嬢様を挟み込むように近づく。

「ハイ、そこの人。ちょっとウチらとお茶しない?暇でさぁ、遊べる友達探してんだ、お願い!」

「え、私ですか?丁度カフェ探してましたから良いですけど…」

「アンタ美人だもん。一緒出来たら最高?」

 そう言いながらもカナメは彼女の肩を抱き、路地へと連れて行こうとした。麗華は反対から腰に手を回している。

「どこ行くんです?」

「あっち、あっち。この先に良いカフェがあんのよ。もちろんウチらの奢りだよ」

「アンタ可愛いね~。お嬢様~?」

 徐々に肩を掴む力を強くする。カナメは空手の有段者だ。道場は途中でやめてしまったが、天才的な才能があり、力もその辺女子高生とは比べ物にならないくらい強い。細い華奢な身体は少女らしく柔らかだが、力を入れると束ねた鉄筋のような鋼の筋肉へと変わる。

「あの……肩痛いです……」

「あーっと、ごめんごめん。ところでさ、お茶して買い物しようとしてたんだ?」

「え?はい、そうです」

 路地に入ると手馴れた様子で二人は確認した。金は持っているようだとニヤリと悪い顔で笑いあう二人。

「ああっ!しまったぁ!さいふわすれたぁ!」「ああカナメちん、わたしもだ~!こまったな~!」

「え?え?」

 カナメと麗華の茶番のような演技に呆気に取られて戸惑うお嬢様。目を丸くして急に妙なことを言い出した二人を見ている。

「つーわけでさぁ、お茶出来ないじゃん?悪いんだけどさぁ、お金貸してよ?」

「ちなみにさ~、これ知ってる~?特殊警棒。ネットショップでヨンキュッパなのに凄い威力の優れもの」

 お嬢様風の少しずつ彼女を壁際に追い込みながら、、カナメと麗華は大げさな猿芝居をした。状況が飲み込めないといった感じで困惑する彼女に、さらに麗華はカバンから特殊警棒を取り出すと、思い切り振りぬいて収納されている二段目と三段目を引き出した。

「そんな…私お金なんて貸せません…帰ります」

 俯いたまま足早に立ち去ろうとする彼女をカナメが腕を掴んで引き寄せた。

「おっと、どこ行くの、無理無理。ウチさぁ、空手黒帯なんよ?いいから金出せよぉ?可愛い子に怪我なんかさせたくないんだよ、な?」

「はぁ~、こういうのは三分以内にやらないと人に見られんのよ~?早く出しなよ~?」

 ガキッという音がして彼女の顔の横のコンクリートが僅かに弾けた。麗華が警棒を叩きつけたのだ。

「……うん、確定」

「はぁ~?早く出せって言ってるじゃん?頭コツンとするって、痛っぁああ⁉ちょ、痛い痛い痛いぃっ!手が、手がぁ~⁉」

「え、何?どうしたの麗華⁉」

 ぱっと見お嬢様風なのは先ほどから変わらない。立ち姿や動きはゆっくりとしていて清楚さすら感じる。
 しかし、良く見れば困惑して悲しげだった顔は見惚れるほどにこやかに笑っていて、たおやかな手は麗華の持っている警棒ごと腕を捻り上げている。和やかな空気を持つ彼女のそこだけが明らかに異質、異常だった。

「これね、家に置いておくのはいいけど、車に置いたり、持ち歩いたりしたら軽犯罪になるのよ?知らないでしょ?はい、没収」

「ああ~っ⁉痛いぃぃ!おれっ、折れるよ~!助けて~!カナメちん~!」

 相変わらず楚々としたゆっくとした動きだが、痛みに耐えかねた麗華の腕からポロリと落ちた警棒を空いている方の手で受け取った。捻り上げられていた腕を解放されると痛い痛いと騒ぎながら麗華はカナメの隣に逃げ戻る。

「は?何よアンタ…?殴られたいっての?」

「私ね、貴女達の事探してたの。警察に捕まる前に見つけないと本当に犯罪者になっちゃうからね。悪い子を見つけて躾て上げるのがお仕事の、ん~、先生かな?」

 先生と名乗った彼女は警棒の先を苦も無く手で中に押し込んで収納すると、肩から下げているバッグの中にしまい込んだ。
 麗華はあり得ないものを見る目でぽかんとそれを見ている。テレビアニメでも見ているのかと思った。だってあり得ない。特殊警棒の先は強力なバネで収納されている。壁や床に叩きつけて収納するのが普通だし、手なんかで押し込める分けがない。二メートルを超えるようなプロレスラーじゃあるまいし。

「はぁ~?センセーかよ。どこのセンセーか知らないけど、余計なお世話だって。ばぁ~か!」

「カ、カナメちん~…アイツ、アイツ今、素手、素手で…」

「まー、貴女の担当官になるはずの先生だから、悪い子を見つけてお尻ペンペンで躾けるの。さ、貴女達…カツアゲなんてした罰よ?お尻を出しなさい?」

 挑戦的なカナメと有り得ないものを見て怯える麗華。そんな二人に彼女はお仕置きを宣言した。非行少女が犯罪者になってしまう前に躾け直すのが彼女達の仕事だった。

「な、何がお尻ペンペンよ!馬鹿じゃないの!?」

「何かヤバイよ~、カナメちん~」

 何が何だか分からないが、非常にマズイ気がした。麗華は怯え、カナメにも相手がまともじゃない事だけは良く分かった。ボコって速攻逃げる。カナメはそう決めた。

「麗華っ!石でもなんでもいいから拾ってっ!はぁっ!」

 長らく道場には通っていなかったが、飛び抜けた才能のおかげと馬鹿な男共相手に技は実践向きに磨かれていた。実際、喧嘩以外の脅しで殴ったことはないし、拳で女の顔を殴る程には落ちていない。だが、逃げる為には多少痛い目は見てもらわなければならない。
 カナメは腰の捻りの加わった鞭のような下段蹴りで彼女の太もも辺りを狙った。当たれば酷い激痛で追いかけてくる事など不可能だろう。

「あら、中々腰が入ってるわね」

「うっ…くっ…嘘…?」

 彼女は足でガードしてはカナメの方が痛いだろうと思い、素早く腰を落として右手でその蹴りを掴んだ。それを見たカナメは掴まれたままびくともしない自分の足を外そうと必死に力を籠めるがまるで動くことはない。 
 大の大人が痛みで転げ回る威力があるはずだ。実際そうしてきたし、それを何度も指を差して笑ってやった。それが、片手一本で止められるとは。ありえない。相手はとんでもない怪物だった。

「じゃあ、お休み。起きたらたっぷりとお尻を叩いてあげるわね。カナメちゃん?」

「や、やだっ!カナメちん~!」

 足が離されると同時に目の前まで来た彼女がそう呟くと、顔が揺れた気がした。麗華に名前を呼ばれた次の瞬間テレビのスイッチを切るようにカナメはフッと目の前が暗転した。

 カナメが気がつくとそこは何もない十畳ほどの個室だった。いや、回りを見回すと壁に掛かったディスプレイが十台ほど並んでいる。しかも、それだけではなかった。後々全てをカナメ自身がその身で味わうことになるのだが、そのディスプレイ群の横には細長い木の棒や平たい木の板のような道具が所狭しと並べられている。後に、と言っても数日以内にだがカナメはそれらの名をケインやパドルだと知った。

「うわーんっ!」「痛ぁいっ!」「ごめんなさぁいっ!」「やめてよぉっ!」「ひぃーっ!」

 モニターの向こう側で同い年くらいの少女達がお尻を真っ赤に腫れ上がらせながら泣き叫んでいる。誰かの膝の上で、台に縛られて、機械のような物に拘束されながら様々な格好で。
 そして、驚くべき事にその中に麗華もいた。痛みに両足をバタつかせ金髪を振り乱し、大きな目から涙をボロボロと流していた。

「何なの、ここ…って、ちょ、アンタ⁉」

 カナメはぼんやりとしていた頭がはっきりとしだすと、ようやく自分が奇妙な体制になっている事に気付いた。
 柔らかくて温かい何かに身体を預けていた。それが、人肌の温もりで彼女の膝の上に腹ばいにされていると分かるのにさらに数秒必要だった。手足が柔らかな布で縛られている事も。
 縛られているものの、それはいわゆるOTKと呼ばれる強制的にお尻を突き出させる典型的なお尻ペンペンをするためのスタイル。さっき言っていたお尻ペンペンのお仕置きを本気でするつもりかとカナメは焦った。

「あら、起きた?それだけ元気なら頭とか痛くないわよね?締め技だとほら、失禁とかしちゃうと可哀想だから手の平でちょんとだけ顎を狙ったから大丈夫だと思うんだけど」

 診察してもらったから大丈夫だと思うと、柔らかな声色でカナメの体調を聞いてくる。その声にカナメは声を荒げてその膝から逃れようと藻掻く。

「ウチのこと殴っといて何いってんだよ!ウチらのことラチってどうしようって気なの!」

「指でちょんとだけよぉ。貴女じゃあるまいし殴ったりなんかしません。お尻以外はね」

 カナメは彼女の膝に肘を打ちつけたり、両手を突っ張って降りようとしながら、矢継ぎ早に大声で怒鳴る。しかし、彼女はカナメのそんな行動を苦笑いしながら巧みに躱し、抑えつけてしまう。  

「放せよ!ここはなんなのよ!」

「だからここは「施設」よ、悪い子の為のね。さて、細かい説明は後でして上げるとして、それだけ元気ならお仕置きに耐えられそうね。約束通りたぁっぷりとお尻ペンペンして上げるわ」

「は…?ば、馬鹿じゃないの⁉ウチもう高校生だっつーの!お、お尻…ペンペンなんて、きゃあっ!?」

 彼女はカナメの言葉を最後まで聞く前に、カナメのミニスカートを腰まで捲り上げた。カナメの淡いピンクのショーツが露になる。高級そうな生地で出来たそれもおそらく自分のお金で買ったものではないのだろう。

「ふーん…高そうなパンツ履いてるわね…まぁいいわ。それにしても、うふふ。生意気な口利いていてもお尻はまん丸で可愛いわね。さぁ、悪い子のお尻を出しましょうね~」

「やめっ、ちょ、やめろってマジで!やだっての!ちょ…マジやめ、やめてよぉ…」

 彼女の指がゆっくりとカナメのショーツに滑り込む。年相応に恥ずかしがるカナメの態度を微笑ましく思いながらも、恥ずかしいのもお仕置きの内ですからと十分に時間を掛けて膝で丸まるようにショーツを下ろした。カナメの小振りで形のよい丸いお尻が完全に外気に晒されてしまった。
 どれだけ意地を張っても力では叶わない。焦って肘や膝を打ち付けようにも縛られていて力は入らなかった。もっとも彼女に当たったところで恐らく少し痛い程度としか思わないだろう。
 本人に「犯罪者」だという自覚は無いだろうが、それに手を染めていてもカナメはまだ16歳の少女だ。どんな抵抗も出来ない状況に怯え、お仕置き前にカナメの心は折れかけていた。
 

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