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現時点で遺す言葉

もしも私の死体を見たのなら。
きっとあなたには色んな私の姿が浮かぶだろう。幼い私、笑う私、涙する私、怒っている私、苦しんでいる私。無表情の私かもしれない。
 
 ただ一つここに書いておくのは、私の周りにいたあなたたちが見た全ての私が、本当の私でないということだ。

私は道化が得意だった。本当と嘘を織り交ぜたとびきりの仮面、演劇。
本当の私は私しか知らない。あなたの知る私は、それも一種の私だとも言えるけれど、「本当の私」ではない。
あなたがそう捉えたのなら、それが「私」という人間と定義してかまわない。そういうスタンスが癖だった。
見る人によって私は変わる。まるでホログラムの煌めきのように。そうやって生きていくうちに、私は自分という存在と実態に自覚が持てなくなっていた。

 あなたは何一つ「本当の私」のことを知らない。
他者に捉えられた私が良いものでも、悪いものでも自分が他者としてあなたの目に映ること、それは表面的で私という人間の内面を伴わないこと。それがただ怖かった。持て余した自意識で、私は外界に強く線を引いた。それだけが臆病な自分を守る術だった。

 たとえあなたが捉えた私も私だとしても。
どうか私を語らないで。良い思い出はそのままにして、言葉で私を語らないで。あなたは本当の私を知らない。
声も出せなくなった私のことを踏み躙らないで、汚さないで。美化しないで。

 もうどこにもいなくなった私の存在は、あなたを悲しませるだろうか。この文章はあなたを傷つけたりするのだろうか。

自責で自分を殺し、いなくなった私という虚しく黒い空間で私は他人に全てを押し付けて、生涯あなたを苦しませるでしょう。ごめんね。


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