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詩集

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2017年1月の記事一覧

科学者と踊り子の恋

一つの絵画を
二人が同じように見ている
そう勘違いすることが恋なんだね

君が好きだった玄米も
君が飲んでたサプリメントも
僕は好きになれなかったけれど
そういうところも引っくるめて
君が二股かけてたところも引っくるめて
僕は本当に君のことが好きだったんだよ

僕は演繹的な愛を求め
君は帰納的に愛を探していた
すぐ、そこにあるのに
目の前にあるのに
どうして君は気づいてくれない
君は配られたカード

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継承者(ツグモノ)たちの詩

ただ、そこにいるだけで

世界に大きな影響を与えている

無名の継承者(ツグモノ)たちがいる

継承者(ツグモノ)には野心や競争心もなく

他人に敵意も悪意も持たない

嫉妬も羨望もなく

個人的な欲望は、ほんの少ししかない

そのような平和を生きる継承者(ツグモノ)は

ただ、そこにいるだけで

息をしているだけで

社会に貢献し

世界を変え

宇宙の進化を助けている

どんな慈善家よりも

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三行詩『許されざる者と魔女』

「才気のあるシスターが司祭になれないのはおかしい」
そう抗議したおれは根も葉もない噂を立てられて
挙げ句のはてに無実の罪を着せられ、教会を追放された

ボロボロになった家のドア
そこには汚い字で書かれた貼り紙がしてある
「お前は神に嫌われた」

この冷たい森の中を彷徨い歩き、三日目の朝
ふいに赤い髪の女がおれの前に現れた
事のいきさつを話すと赤毛の女はクスリと笑って

神様に嫌われたですって?

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三行詩・『看却下』

ある修行僧が叡智を授けてくれるという導師を探して旅をしていた
途中で出会った村人から山の頂上にある寺に導師が住むという話を聞く
しかし、そのためには5000段はある険しい石段を昇らなければならない

修行僧が石段を上り始めて間もなく、一人の老人に追い越された
「今日は良い天気ですな」
老人はそれだけ言うと信じられない早さで石段を上っていった

この付近に住んでいる人だろうか
きっと毎日上っていて慣

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