スマイルの値段

以前は、あのハンバーガー屋で買い物をすると、レシートには「スマイル  1 コ  0円」と書かれていたが、今も書かれているのだろうか。
先日、昔使ってた財布から古いレシートが発掘されたのだが、「スマイル  1 コ  0円」と書かれていた。頼んでもいないはずなのに、スマイルとレシートに書いてあったのだ。私は断じて頼んでいない。こんな事を書かれると、カウンターで「スマイルください」と寒い事を言った中学生みたいではないか。
ここは記憶を捏造し、カウンターに立っていた子は大学生のバイトらしき女の子だったことにして、寛大に許して怒りを収めたい。いや、可愛らしいスマイルを見せてくれるのなら、たとえつまらなくても「スマイルください」と言った記憶を捏造しても良かったとさえ思う。
そんなスマイルだが、ハンバーガー屋だけでなく、他でも取り入れてみてはどうだろう。

バーのカウンターでカクテルを飲んでいると、バーテンが近寄ってきてニヤリと笑う。
「あちらのお客様から『スマイル』でございます」
あちらのお客様とやらが、こちらに軽く頭を下げる。
バーテンのニヤリなスマイルを出されても、あちらのお客様とやらは、こちらに好意があるのか、からかっているのか分からない。まあ、どちらにしてもバーテンニヤリスマイルなぞいらないのだが。

田舎の寒村で農家をしている母さんから大学生の一人息子への手紙。
「元気に過ごしてますか。今年も凶作で仕送りは出来ないけど、心ばかりの『スマイル』を送ります」
封筒には手紙と一緒に母さんのスマイルが入っていた。息子は心の込もった母のスマイルに涙する。

料理自慢の小料理屋では、お通しで小鉢にスマイルが盛られて出てくる。酒飲みにとって、塩味の効いたスマイルは酒のお供に欠かせない。さすが料理自慢の店だけのことはある。

ある港町では、味の良いスマイルが水揚げされることで有名だ。そんな港町で評判の良い民宿では、漁師もしている主人が獲れたて新鮮なスマイルで作る、スマイル料理が名物。わさびと醤油でつるっと食べるのが、漁師流の粋な食べ方だ。

小学1年の弟が、家族団欒の時間に、無邪気に衝撃の発言。
「ママ、お兄ちゃんのスマイルって毛が生えてるんだよ」
凍りつく家族、暖かい家族の団欒が一転して極寒の世界へ。気まずい様子の父と母。お兄ちゃんは「生えてないよ、生えてないよ」と狂ったように泣き出す。

今度の選挙では、スマイルに投票したい。

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