見出し画像

「ボードレール詩集」の読書感想文

新潮文庫の堀口大學訳「ボードレール詩集」を読みました。
コメディー映画やギャグ漫画で二枚目や虚無主義者が世の儚さを憂いる時に引用される程度の知識で気楽に手に取ってみました。
お気に入りのジャズの流れる蕎麦屋で「蛇(オロチ)」、「苦悩」、「汚穢」等の文字を読みながら頭の中ではコメディやギャグ漫画のイメージがあるので楽しく、暗い気持ちにはならずに読んでいました。
全体的に暗い、重苦しい夜をイメージさせる詩が多い中で猫の可愛らしさを厳かに綴った「猫」、夜の帳が降りた頃に明かりのついた室内でのワイン・ボトルの気持ちを綴った「葡萄酒の魂」、南国の素晴らしさ綴った「マラルバ生まれの女に」が「世紀末の匂いを濃厚に漂わす」作品の中に収録されているからこそ特に好きです、
そして、七篇が収録された散文詩に確実に漂う皮肉の薫り。「子供と老人は同じ大きさ棺に収まる」と謳いながら、反りが合わない両者の関係性。
夢を背負った人々とすれ違った時の冷めた視線。人間の不可解な行動を自分の部屋の窓ガラスを明けた男で表現する手法。全ての作品の根底にシニカルな視点があるからこそ楽しめたのかなと思います。
おそらくは魔夜峰央さんの「パタリロ」でボードレールの名前は知りながら、読むことはありませんでした。約1年前に初めて詩集を読み切ってから、この詩集を最後まで読めた理由のひとつに暗い作品の出来中にもユーモアやエスプリが根底にあるのかなと自信はないけど思います。
何故でしょう?ボードレールを読むと自分で書いた文書の内容に自分が照れくさくなります。
#読書感想文
#ボードレール
#詩集
#堀口大学

この記事が参加している募集

読書感想文

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?