見出し画像

過日(22句)

俳句作品22句です。

────────────

 過日   丸田洋渡

石化する蛇のくらいみらいの稿

 ○

壜の真空霧は初めがうつくしく

夏みかん心が顔に出てしまう

サルビアの踊りまわって不純が純

かき氷法学に紙のイメージ

行と段すずしくなって紀行文

短夜の雲が痩せたら考える

にぎやかに文字が印刷されていく

三日月と刀と双方の刃毀れ

ふくろうは脚ながくして磨硝子

ふらんすの木乃伊は金魚を知らない

ピアノ分解 雨の降りはじめの匂い

文字という手がある夏の子どもには

青空が大きな分数に思えた

雲ひとつパン屋にパン無い時間帯

ゆれる舟ゆらす手秋のみずうみに

爪が降る川はこれから指になる

工場に洩れおちている銀河の銀

ロボットは星座を覚え秋茄子

葡萄世界ひと房遂にひと粒に

可読の木読まないようにして通る

 ○

ひらひらと過日の鷺が紙の上


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?