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はてしない物語〜映画の中のジュエリー・装身具〜


春の訪れを感じる週末の午後、どこにも出かけず過ごしていると、幼かった頃のことばかり思い出してしまう。

その昔、VHSテープに録画されていた『ネバーエンディングストーリー』を、文字通りテープが擦り切れるくらいに繰り返し繰り返し観ていた。
せりふもすっかり暗記していて、姉弟での「ごっこ遊び」の定番だったほどだ。


今年は辰年、ドラゴン!?

幸運のドラゴンなのに、なぜ犬なの?
どう見てもレトリバーの顔…


ネバーエンディングストーリー

制作 1984年 西ドイツ・アメリカ
原作者 ミヒャエル・エンデ
日本公開 1985年


母親を亡くし、学校でもいじめられっ子キャラである主人公バスチアンが古書店から持ち出した一冊の本。
それはまるで魔術書のような重厚な装丁の大型本で、『はてしない物語』というタイトルだった。
内容は、魔法と空想の国ファンタージェンを統べる重病の女王を救うため、選ばれし勇者アトレイユが旅に出るというもの。
滅び始めたファンタージェンと女王を救う方法とは…?

バスチアンは読み進めるうちに、どんどん物語に引き込まれてゆく。


勇者アトレイユと愛馬のアルタクス

アトレイユには、明暗二匹の蛇が絡み合う「アウリン」が授けられる。このアウリンには不思議な力があり、装身具というよりは御守りの役割だ。
旅の中で幾度となくアトレイユを真の道へと導いてゆく。

バスチアンが読んでいる本の表紙にも、真鍮色に鈍く光るアウリンが嵌め込まれていて、架空の世界とリンクしていることを感じさせる。

バスチアンが今ここで本を読んでいる世界と、その本の中で旅をするアトレイユの世界が入れ子のように繋がって、さらに映画を観ている者もリアルタイムで物語を読んでいるように…入れ子が重なるように話が進んでゆく。
私も本を読むことが大好きな子どもだったので、あっという間に映画に引き込まれたのだった。

クライマックスが近づき、女王を救うために必要なのは新しい名前で、人間の子どもが名付けなければならないことが判明する。
バスチアンは窓を開けて大声で名前を叫ぶ。

実は、私が観ていたのはテレビの日曜洋画劇場の吹き替えで字幕がないので、何と叫んだのかがはっきりと分からず、亡くなった母親の名前をつけたのではと思い込んでいた。私の耳には“ミューゼット”?のような名に聞こえていた。

しかし、何年も後になってから原作を読んだところ、そのような名前ではなかったことを知った。知ったけれども、映画の印象が強すぎてどうにも記憶に引っかかっていない。

あらためてこのノートを書く前に検索してみると、ドイツ語版で「モンデキント」英語版だと「ムーンチャイルド」(いずれも月の子の意味)と言っていたことが分かった。


以前もnoteで取り上げたことがあるが、とある映画のタイトルが分からず長年の謎だったものが、ネット検索であっさり解けたことがある。
こんなふうにあっけなく、謎が謎でなくなっていくことが本当に増えたと思う。
「映画」も「書籍」もデータとなってしまったし、調べ物にかかる手間もまったく違う。私自身も、ペラペラと百科事典のページをめくる機会はほとんどなくなってしまった。


頭ではわかっているつもりだが、スマホ片手に単なる検索だけで簡単に世界を知ったような…
世界がずいぶんと狭くなってしまったような錯覚がしてしまう。
「大人になる」というのは、こんなにも、つまらないものだったのだろうか。

たったひとつぶの砂…


ところで、少し前からネット上では「原作改変」の問題が持ち上がっている。この『ネバーエンディングストーリー』でさえも大きく原作改変されていて賛否両論あったという。
(あまりに原作と異なるため原作者のクレジットが削除されたという事実にびっくり!)
たしかに、原作の繊細で深遠な部分は映画版にはない。
それでも、映画版にはそれを補うだけの魅力があるように感じる。たとえばその時代ならではの、CGを使わない撮影技術だったり、あまりにも印象的なテーマ曲だったり…

大人になってものづくりに関わって、制作者としての目線を手に入れた今、ものごとの裏側がほんの少しわかるようになった。
世界は狭くなんてなかった。その裏側に、人々の思いや努力や時間の積み重ねがまた広がっていたのだ。


なんとまた実写化の話が進んでいるというニュースが!
原作も映画版も、タイムレスに愛される作品である。
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もしかすると、子どもの頃に見えていた世界と今私がいる世界とは、実はさほど変わっていないのかもしれない。
検索ごときでは解けない謎もまだまだたくさんあるし、年月が経って年齢を重ねても好きなものは意外と変わっていない。

ちなみに私は、この映画の続編2・3はまったく観ていない。評判もあまり良くなかったと何かで聞いたことがあるが、特にレビュー検索もしていない。
続きは要らない。記憶に残る物語はそのままであってほしいから。


もう叶わないけれど、姉弟でのんびりと懐かしい映画を観たり…
そんな時間を過ごせたら、と ふと思う週末の午後だった。



※このnoteは過去にShortNoteにて公開した記事に加筆修正したものです。

画像引用元
https://www.buzzfeed.com/amphtml/jamiejones/never-ending-story

https://matome.naver.jp/m/odai/2136054835552386301/2136066623074375203

https://www.amazon.co.jp/ネバーエンディング・ストーリー-DVD-ノア・ハザウェイ/dp/B00F4MWHPK


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