退職D進希望の文系会社員が、研究継続のために図書館を利用した方法の備忘録

*令和5年(2023年)4月4日 Cinii Booksおよび公立図書館の蔵書横断検索について追記
*令和5年(2023年)4月14日 茨城県立図書館の郵送サービスと、地元住民への開放例として立教大学新座図書館の事例を追加
*令和5年(2023年)6月29日 早稲田大学の同窓会組織(校友会)における自動入会、学費に会費が含まれている事例について加筆

前提

20代後半―30代前半 独身男性 実家住み 東京近郊在住
歴史学や政治学、文献を大量に読む必要がある研究を想定
修士とは違う大学院への進学

属性の異なる方は当てはまらない場合があるかも知れない(子供がいるなど) 
私の場合、図書館を使用するのは
・研究所や論文の閲覧、複写
・マイクロフィルムの閲覧、複写
・国会図書館憲政資料室での原史料閲覧
・院試の出典となっていた外国語書籍の原文入手
が主な目的であった。

 なお、図書館の利用には
物理的に入館して閲覧、複写する
図書館が契約するオンラインデータベースを利用する
図書館の書籍などを借りる
などがあるが、それらを纏めて「利用する」と表現する。

略歴


2019年3月 修士修了
2019年4月 就職
2021年2月 一度院試を受けるも失敗
2022年2月 コロナの濃厚接触者になり筆記試験受験断念
2023年2月 院試 合格(半年ほどゼミに参加していた)
2023年3月 退職

概要


私が主に利用した下記4つを述べる
(1)大学の図書館
(2)国立国会図書館
(3)公立図書館を使う
(4)放送大学に在籍する

(1)大学図書館にて閲覧・複写する


自分の出身大学もしくは近隣にある大学の図書館に入館できることがある。

・大学の同窓会組織に入っていると、「卒業生」(早稲田大学では「校友」と呼ぶ)も大学図書館への入館が出来るところが多い。(物理的な入館は出来るが、貸出や大学が契約するオンラインデータベースの利用は出来ない)
コロナで制限される前はほぼ週1のペースで通っていた。2020年9月より卒業生の入館が許可されるよういなってからも、ほぼ週1回のペースで通っていた。
【令和5年(2023年)6月29日追記】早稲田大学の場合、学部4年生の2学期目の学費に、10年分の同窓会(校友会)会費が含まれているため、在籍する学部生はほぼ自動的に同窓会組織に入会することになる。なお、早稲田大学の場合は、入学手続きの書類中、学費支払いに関する誓約書の中に、校友会会費支払についての記述があるとのことである。(余談ながら、筆者が自動入会の制度を知ったのは、学部生の頃に読んだ『週刊東洋経済』の「早稲田対慶應義塾」特集の記事であったと記憶している。周りの友人に話しても、強制入会のことを知っている人は少なかった。)
早稲田大学以外の大学でも同様の措置をとっているところは多いため、読者の出身校の事例については各自で確認されたし。

・早稲田大学中央図書館の場合、入館資格があれば「ウォークインユーザー」として大学が契約したデータベース等を専用の端末で閲覧、複写が可能である。他大学でも同様のサービスはあるかも知れないが、詳細はレファレンス担当者などに確認すること。

・出身校が遠い場合でも、近隣に公立大学や、郊外に位置する私立大学があれば、近隣住民、県民を対象に入館が可能である場合がある。

リンクは埼玉大学図書館。県立大学であるため、県民も利用可能である。

また、埼玉県新座市の立教大学新座図書館は、立教大学の学生教職員だけでなく、埼玉県新座市住民ないし在職者も入館可能である。ただし、令和5年4月時点で、学外関係者に対して公開していない。コロナの関係で学外者の入館を制限している場合もあるため注意すること。

なお、Cinii Booksで大学図書館の蔵書を検索することができるが、早稲田大学など一部の大学はCinii Booksの検査結果に表示されないため、最寄の大学図書館の蔵書が表示されない場合もあるため注意。


(2)  国立国会図書館を利用する


東京の千代田区永田町にある本館と、京都の相楽郡精華町にある関西館がある。
 とくに、私の場合は本館にある憲政資料室でマイクロフィルムや憲政資料室が所蔵する史料の現物を閲覧する機会が多かった。

 国会図書館は、納本制度により、基本的に日本国内で発行されたすべての書籍、雑誌を蔵書として収めているため、学術雑誌や紀要、学術書なども閲覧と複写が可能である。なお、一部の書籍は、「国会図書館内限定」で図書館内のパソコンで閲覧可能であったが、2022年5月より「個人向けデジタル化資料送信サービス」が始まったため自宅でも閲覧可能になった。
 また、国会図書館内の端末では、「大宅壮一文庫雑誌記事検索」やジャパンナレッジなど、国会図書館が契約する各種オンラインデータベースも使用することが出来る。端末については、東京の上野にある「こども図書館」でも利用可能である。大学図書館に物理的に入館できても、各種オンラインデータベースを使用できないことは多いため、学籍が無い場合は国会図書館に行くのも手である。


(3)公立図書館を利用する

 基本的に閲覧であれば(1)(2)で十分だが、どうしても手元に置いて通勤途中や自宅で読みたい書籍も多数あったため、公立図書館にて研究書を借りることにした。
 大学に学籍がある時はあまり使わなかったかも知れないが、地元や勤め先の自治体にある公立図書館を利用する資格がある場合は積極的に利用したい。
 原則として、その自治体で在住、在学、在職しているか、近隣自治体に在住していることが貸し出しの資格を得るための条件になっている。
 なお、東京の公立図書館の中には、千代田区、文京区、豊島区、中央区などのようにその自治体に在住、在学、在職していなくても貸し出しカードを作成できる所もある。とくに、東京23区内の図書館は、一般書だけでなく研究書の蔵書も充実しているため重宝した。
 東京都内の図書館の場合、下記のサイトにて貸し出しカード作成可能な図書館を調べることができる。

 また、各県立図書館では、県内の公立図書館(県立大学含む)の蔵書を横断検索することもできる。詳細は各県立図書館の公式ホームページで参照のこと(リンクは東京都立図書館)

もしくは、「カーリル」という民間企業が運営するサービスにて検索する。

なお、茨城県立図書館は、県立図書館蔵書を各市町村立図書館にて受け取る遠隔地貸し出しサービス(茨城県立図書館は「ぶっくひん」と呼ぶ)や、有料で自宅など指定の住所まで図書を郵送する有料宅配サービスも行っている。*有料宅配サービスは令和5年4月8日より開始したばかりとのこと。


(4)放送大学に入学する


 (2)と似ているが、放送大学の場合、厳密には、正規の学生として在籍することになるため項目を分けた。
 放送大学は、学位を取得する「全科履修生」(最長10年在籍)、学位を取得できない「選科履修生」(1年間在籍、延長可)と「科目履修生」(半年間在籍、延長可)などの区分があるが、図書館の利用資格については学生の種類にかかわらず共通である。
 放送大学は、基本的に各県に一つある「学習センター」(東京や青森、北海道などは複数ある)に所属する形になるが、本を借りる場合は、有料で自宅への配送、自宅から(千葉の本部図書館への)郵送も可能であるため、学習センターへ通いにくい場所であっても(お金さえ払えば)自宅に取り寄せることが出来る。
 とくに、ILLで公共図書館には無い書籍(とくに外国語書籍)を取り寄せて借りられるのは大きく、出身校の図書館に蔵書が無い英語やフランス語の書籍を確認する必要がある時は重宝した。
貸し出しとILLについては下記を参照


 また、ジャパンナレッジや聞蔵などのオンラインデータベースも利用可能であるが、詳細は下記リンクを参照のこと。なお、有料オンラインジャーナルについてはこちらの一覧には出てこないため注意。

 

おわりに

 私が実際に行った(1)および(2)大学図書館や国会図書館での論文雑誌の閲覧、マイクロフィルムや史料の現物の閲覧、(3)公立図書館での貸し出し、(4)放送大学図書館でのILLや外国語書籍の入手 を簡単にまとめてみた。
備忘録としてメモ書きを纏めただけであるが院進希望者や、大学を離れた後も研究を続けたいと思っている方のお役に立てれば幸いである。