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女性自衛官を増やしたい自衛隊とハラスメント

 私が見たところ、今の自衛隊はSNSを多用するなどして「さわやかな自衛隊」「頼りになる自衛隊」のイメージを作ることに、大変な量のエネルギーを注いでいるようだが、それよりも重要なことがあるはずだ。パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、マタニティーハラスメントの防止ではないか。

 自衛隊のツイッターなどは若者たちが厳しい訓練に耐えて基地に帰還する様子や、ハードな訓練を終えて一息ついているような、さわやかなイメージ。それに、災害派遣や海外での実戦まがいの任務について、自衛官たちの様子を伝える無数の記事やツイートを毎日のように送り出している。
 また、最近、テレビでは「テッパチ!」という、自衛隊員になろうとする若者たちのドラマが放送されている。防衛省と自衛隊の協力で製作されたこのドラマは、ハンサムな若者たちや美人の出演者をそろえて、それを見る男女にアピールしているようだ。視聴率は低いそうだが。

 それらを見ていると、自衛隊がさわやかで頼もしい存在に思えて仕方がない。しかし、前述の五ノ井里奈氏がセクハラされた郡山駐屯地(ちゅうとんち)のツイッターには、その問題についてなんの情報もない。

 あるのは、さわやかな自衛官たちの写真である。ツイッターの一番上にある写真(ヘッダー)には4人の若い自衛官が写っているが、そのうち2人は女性だ。丸いアイコンには、「忍耐」という文字が刻まれた石碑の写真が使われている。それは、同駐屯地にゆかりのあるマラソン五輪選手で陸自隊員だった円谷幸吉(つぶらや・こうきち)氏の言葉だと、ヘッダーに書いてある。世の中には、防衛省と自衛隊が運営しているTwitterアカウントが無数にあるが、そのどれが自衛隊員のメンタルヘルスやハラスメント防止に関する情報を公開しているのだろうか? 


 もし自衛隊が「本当に」若者を育て、国防を行おうとするならば、彼らが安心して働ける職場、セクハラやパワハラがない職場を作るべきである。

ハラスメントにあった若者たちが「忍耐」を強いられるような職場は、まともな職場ではない。それが「さわやかな自衛隊」というイメージを作るよりも優先順位が高く、そして重要な仕事ではないだろうか。

 実は自衛隊は以前から人手不足に悩まされており、防衛省のWebページによると、定員に対する充足率は92%だそうだ。もしセクハラやパワハラのニュースが、自衛隊で働こうとするという若者たちを失望させているとしたら? 自衛隊に行くのは止めようという気持ちにつながっているとしたら? 

 その一方で、女性自衛官の数は増え続けており、全自衛官に占めるその割合は8%だそうだ。令和3年度(2021年)版防衛白書にある「女性職員活躍推進のための改革」という文によると、2030年(令和12年)度までに全自衛官に占める女性自衛官の割合を12%以上にするという。

 防衛省と自衛隊は、彼女たちが安全に働ける職場を作れるだろうか? 

 

 世の中の人間の半分は女性だが、日本社会における女性の地位の低さは、世界的に見ても異様である。内閣府男女共同参画局の広報誌「共同参画」の2021年5月号は、世界経済フォーラムによる「ジェンダー・ギャップ指数2021」を紹介している。それによると、

日本の指数は「先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で、韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果」だそうだ。


アイスランド、フィンランド、ノルウェーが上位3位。
ドイツ、フランス、英国は11位、16位、23位。
米国30位。タイ79位。ベトナム87位、インドネシア101位。
韓国102位。中国107位、日本は120位だった。

 

 機会をあらためて書くつもりだが、以前紹介した、五ノ井里奈さんのセクハラ問題では、防衛省と自衛隊のすべての組織を対象にした「特別防衛監察」が行われるそうだ。それが『本当に』自衛隊が変わるきっかけになるのか、私にはわからない。


 防衛省と自衛隊は、志高き女性たちに安全な職場を提供し、日本女性の地位向上に貢献してもらいたいか。あるいは、ハラスメントがないか、ひどくない職場を作って欲しい。それが男女の区別なく、自衛官たちが安心して働ける職場であろう。



以上

この文章は誰かに要請されて書いたのではなく、自分の意思で書いて投稿したものだ。

トップの写真は、私が撮影したもの。「はたかぜ」は現在、練習艦(TV-3520)になっている。

大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。