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日本のアニメは変 その2 愛国者学園物語 第202話

 親日家のファニー・ジョフロワによる日本文化批判は続く。

 ポルノチックなアニメなどの影響か、日本のネット社会にはポルノがあふれており、それには政府の規制も及ばない。

 日本製のポルノビデオ(アダルトビデオ)は、性器にモザイクをかけてそれを隠しているのに、ネット上には何の規制もない、日本人を写したポルノが無数に存在している。そして、それは日本の隠れた輸出品として、世界中に広まっているのだ。
(中略)
 

ネットにあふれるそれらの多くでは、成人女性のポルノ女優が、未成年の日本人女性を演じているのだ。これが異常でなくて、なんであろうか。


(中略)

 有名なアニメや漫画のファンが、その登場人物をポルノ化した自作の絵画を、ネット上で公開することも珍しくなく、アニメなどの

二次創作した作品

を投稿することが可能なサイトでは、ルールを設けて規制しているサイトもある。だが、それも、氾濫(はんらん)するポルノを止める有効な手段ではない。

(中略)
  

 ファニーは続けて、日本社会における痴漢の多さと、セクシャルハラスメントの問題を読者に紹介し、それらの問題の原因は、少女を性的欲望の対象にするアニメ、漫画、それにアダルトビデオが流通していることであると主張した。


 彼女の批判は、戦争アニメに移った。

 ファニーは日本のアニメは戦争だらけだ、と口火を切った。戦争アニメを数多く制作し公開し、それを若者が毎日のように視聴する日本社会。だが、そのような作品を日常的に見ている日本人の子供は、それらのせいでその精神が歪んでいないだろうか、と続けた。


 彼女のターゲットは日本を代表する

アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズの第一作、通称「ファースト」だった

。それは世の中にガンダムを知らしめたという点で有名なのだが、ファニーの批判は厳しかった。

 ガンダム・ファーストには、三人の幼い子供たちも登場する。男の子のカツとレツ、それに女の子のキッカである。カツとレツは、漢字では「(戦に)勝つ」あるいは、「烈」と書く。後者は、火の勢いが激しいイコール(風に強い、消えない)火、あるいは戦士の激しい気性などを意味する。つまり、どちらも、戦に関係する字であることは間違いない。だが、案外、夕食のカツレツからアイデアを得たのかもしれない。日本ではトンカツや牛カツは、戦に勝つという意味合いを持つ食べ物として知られ、選挙を控えた政治家たちはその前祝いに、カツカレーを食べることがある。

 キッカは漢字では菊花とも書ける。菊の花は日本社会では皇室の象徴でもあるが、一般人の葬式や仏前に飾る花としても使われる。第二次世界大戦で使われた日本の戦闘機・零戦には「橘花(きっか)」というモデルもあり、それは当時では珍しかったジェットエンジンを装備していた。そして、それは特攻用の兵器であった。

 ガンダムファーストには、そういう日本の戦争事情が隠されている。子供の名前イコール戦争なのだと、ファニーは結論した。


 彼女の怒りはさらに続く。ガンダムファーストの登場人物には、ある特徴がある。それは正義の味方である地球連邦軍の軍艦ホワイトベースの乗組員には、日本人風の名前を持つ人物が多いということだ、と彼女は指摘した。主人公のアムロ・レイや、ハヤト・コバヤシはまさに日本人の名前だ。カイ・シデンは並べ替えるとシデンカイ・紫電改になるが、これも零戦の一種である。リュウ・ホセイのリュウは日本で珍しくない男性の名前である。

これら主要な登場人物や正義の味方は日本人であるという設定は、その逆として、悪役が外国人であることにつながる。


 敵であるジオン軍には欧米人風の名前が多い。ガルマ・ザビ、デギン・ザビ、ランバ・ラルなど。それどころか、シャア・アズナブルの名前は実在した仏人歌手シャルル・アズナブールそのままではないか。これは物語の世界観としては、単純に過ぎないか。

 

これは、日本人の名前を持つ登場人物が善・正義の味方で、欧米人の名前の人間は悪だという、日本人至上主義の現れではないか? 

もしこの推理が正しければ、最も有名な日本アニメの一つであるガンダムにすら、日本人至上主義がその姿を見せているということになる。ファニーはそう書いた。


 次のアニメ批判は、地球を侵略する宇宙人はなぜ欧米人風なのか、だった。彼女はこれまた高名なアニメである「宇宙戦艦ヤマト」シリーズを例に取り上げた。

そして、これらの作品も日本人が善人で、欧米人のような外見と名前を持つ宇宙人たちが悪役になっている。これも日本の文化や日本人そのものを過度に賛美する日本人至上主義のなせる技であろう、などと書いてあった。



 ファニーの指摘は終わらない。彼女は、日本アニメには、なぜ

寄り目の、内斜視まがいの人物

が多く登場するのかを考察した。


 日本社会は日本人至上主義を放置する一方で、差別的言動に厳しい態度をとりつつある。マスコミなどが特定の差別用語を使わないようにする、あるいは特定の病気や出身地差別、性的少数者に対する差別をしないなどだ。そういう話題はそれを詳しく書くことすら、憚(はばか)られる。それなのに、特定の目つきをする描写だけが野放しになり、今も作られていることに、私は疑問を持つ、とファニーはその気持ちを明らかにした。


 彼女はいくつかの例を出した。

大人気アニメ「シティーハンター」

のキャラクターたち。特に主人公の冴羽獠(さえば・りょう)、槇村香(まきむら・かおり)、それに野上冴子(のがみ・さえこ)たちは、驚くと、皆、目が点になるか、内斜視のような、寄り目の目つきになること。


 80年代からの人気作品である

「機動警察パトレイバー」

では、その代表的キャラクター、泉野明(いずみ・のあ)。彼女も驚くと、目つきが寄り目になる。パトレイバーの関係は、若くて可愛い女の子が驚くとき、わざと内斜視まがいの目つきにするのを好んでいるのだろうか?


そして、50年以上の歴史を持つ「ルパン三世」を批判した。

ルパンでも、内斜視まがい表現が多いのは、もしかしたら、泥棒や刑事は普通の人に比べて目つきが悪い? ということを表現するために、そうしているのかもしれないと考えを述べた。

「しかしながら、これらは日本を代表するアニメだ。なぜこれらのアニメでは、このような表現が多いのだろうか。厳密に言えば、これらは偽斜視といい、斜視ではない。寄り目ともいえる。だが、こういう描写は、斜視の人に対する侮辱ではないか、私はそう思うことがある」


ファニーはそうまとめた。


続く
これは小説です。

11月18日。この202話における「内斜視」の表現について、読者に誤解を与える可能性があると感じたので、一部を変えました。


次回予告 かつては多くの日本人に好かれた親日家のファニー。でも、彼女の著作は日本への怒りをぶちまけたものでした。そして、それに怒る日本人至上主義者たち。両者の対決の時が迫ります。
次回第203話
「ファニーと怒れる日本人たち」
お楽しみに!


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