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【映画雑記】「Looking for Johnny ジョニー・サンダースの軌跡」孤独な眼をしたロックンローラー。

 最近は劇映画を観るのがなんだかめんどくさくて、ドキュメンタリー映画ばかり観ている。たまにこういう周期が来る。今日はU-NEXTの作品一覧にの中に見つけてとりあえずマイリストに入れて放置していた1本を観た。

「Looking for Johnny ジョニー・サンダースの軌跡」。

 ニューヨーク・ドールズのギタリストとしてデビューし、ハートブレイカーズ(トム・ペティとは関係ない)を経てソロへ。セックス・ピストルズをはじめとする初期パンクのバンドは洩れなく影響を受けたはずなのに、いまだに正当な評価を獲得していない人物だ。自分の身近にもジョニー・サンダースが好きという人があまりいない。ハノイ・ロックスが好きな人にはジョニー好きが多いという自分調べのデータもあるが、かく言う自分自身はギターウルフの影響でジョニーにハマった。ジョニーのスタイルは、ギターがとにかくカッコよくて、しかも耳コピがしやすい。しかし、それは決してジョニーのカッコよさが簡単に真似できるという意味ではないのだ。大学の音楽サークル時代は恐れ多くも"Born To Lose"と"Chinese Rocks"をまるで自分の持ち歌であるかのように何度も何度もやりました。卒業後、バンドやってたときがジョニーが好きって人が最も多く周りにいた時期だった。日本のガレージ・パンク・シーンにおけるジョニーは、もはや信仰と言っていいレベルで、ジョニーのコピーのような人がルックス的にもメンタル的にも大勢いた。彼のカッコよさはそう簡単に真似できないというのに。TVイエローのレスポールJr.を手にどんな曲だろうと「あの」グリッサンドをかまし、常に酔っぱらってライブをやり、女に蔑ろにされるのが生き甲斐になってしまっているような人がほんとに何人もいた。実際にシーンに飛び込んで目撃したその様は想像以上で正直引いてしまったのはここだけの話だ。自分のバンドがサイケ色を強めるにつれてだんだん疎遠になっていったが、気のいい人たちもいっぱいだったのであの頃を思い出すとなんとなく甘酸っぱい気分になる。

閑話休題。

 もとい、この映画はジョニー・サンダースの生い立ちから死までを元メンバーや取り巻きの証言と記録映像で綴ったロック・ドキュメンタリー映画である。ジョニー・サンダースの人生を俯瞰し、彼がどんな人物であったのかを読み解くべく、ずいぶん努力したのがうかがえる。だが、実際のジョニーに近かった人物に取材しているものの、この手の映画の弊害で「よくしゃべる奴ほど信用できない感じ」がムンムン。あいつはああだった、あいつはああ言ってたの連続で終始、人物の関係性の説明に終わってるような気がして途中から頭に入ってこなくなった。そしてどこか、奥歯にものが挟まったかのような話し方。ジャンキーで自己破壊的な人間が身近にいて気分がよかったはずがないのだ。きっと理解しがたくて、当時は縁を切りたくて仕方がなかったに違いない。そういう経験を思い出しながら話すので、どこか歯切れが悪い。実際に感じた嫌悪感を口にしたのは写真家のボブ・グルーエンと初期のマネージャーだけだった。なぜかジョニーにヘロインを教えたのはイギー・ポップだと恨み節を漏らす女性が出てきたが、あの証言は必要だったか?考えてみれば最もジョニーの理解者であった同志ジェリー・ノーランは既に亡く、ジョニーの最も繊細な所(離婚、子どもといった話題)に関わる二人の女性の証言がないので、「セックス、ドラッグ、ロックンロール」のベールの向こう側、ジョニーの内面の姿は最後までいまひとつ見えてこず、「匂わせ」でしかなかった。惜しいの一言。

 それにしても、全編通してジョニーの「眼」が印象に残った。シラフの時でもヘベレケの時でも、彼の目は寂しさと孤独が滲み出ている。

38歳での孤独な死。

俺も気が付けばジョニーより年上になっていた。


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