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精神・発達障害者は就職できない? その採用リスクを人事の目線で因数分解する。

「あーあ、優秀な人がもっとたくさんうちに来てくれないかなあ」
多くの採用担当者はあの手この手で奮闘します。

「自己研鑽を怠らず、常に心身健康で、明るく前向きな性格で、意見や提案は積極的にしてくれるけれど出しゃばりすぎず、それでいて仕事は手を抜かず、チームマネジメントもセルフマネジメントもできて、成果が安定している人がいいな」

ちょっと欲張り過ぎかもしれませんが、それが本音かもしれません。

労働者は少しでも条件のいいところで働きたい。
企業は少しでも優秀な人を雇いたい。

今の有効求人倍率は1.3倍程度とはいえ、「どこにも就職できない人」もいれば「なかなか採用ができない企業」も多数存在します。

でも、障害の種類で採用可否を決められているとしたら?
ありえない?

いいえ、実際に多くの企業が障害の種類を重視しています。
特に、精神・発達障害は「リスクが高い」とみなされ、敬遠される傾向があるようです。

日揮パラレルテクノロジーズ株式会社(JPT)の社員は、ほとんど全員が精神・発達障害者。
彼らの採用にあたって考えた「リスク」について、成川さんにインタビューしてきました。(全4回、毎週水曜日更新)

(執筆:ミッションパートナー ちひろ)

▼【精神・発達障害者雇用のリスク】全シリーズへのリンクはこちら▼

精神・発達障害者は就職できない? その採用リスクを人事の目線で因数分解する。(本記事)
企業が障害者社員に期待するのは、成果ではなく法定雇用率なのか?
内定承諾率100%の特例子会社が実践する精神・発達障害者雇用のリスク・マネジメントを公開します
『普通のことができない』の裏にある能力を開花させよ

「リスク」の中身を因数分解する

ー好評の社長インタビューシリーズ、今回もズバズバ聞いていきたいと思います。
「精神・発達障害はリスクが高い」というのが常識になってしまっているようですが、リスクの低い障害もあるということですか?

(成川)
身体障害者です。
今はデスク上で完結する仕事が増えているので、身体障害者は健常者に遜色なく働ける場合もあり、リスクは低いとみなす企業が多いです。

中でも、目や耳の障害ではなく手足の障害である場合は、PCを使った業務やリモートワークなら、ほとんど配慮がいらないかもしれません。

優秀な身体障害者は、完全に売り手市場になっている現状もあるほどです。

ーなるほど。具体的に、精神・発達障害はどういったリスクが高いんでしょう?

(成川)
誤解を恐れずにおおまかに言うと、「定着率が低い」というところに落ち着くようですが、正直なところ、漠然と避けられている感も否めません。

ー入社しても欠勤を繰り返したり、すぐに辞めてしまったり、ということですね。そうなってしまうと、会社にとってはどんなマイナスがあるのでしょうか。

(成川)
まず、採用のためにかけた時間や人材紹介料などの目に見えるコストが無駄になります。

そして、新たな人を受け入れるための社内調整コスト、採用直後に実施する研修コストも看過できない企業が多いでしょう。

定着率よりも高リスクかもしれない○○関係

ーなるほど。では、辞めずに働き続けることができれば、リスクは解消されるのでしょうか。

(成川)
そうとも言い切れない部分があります。

たとえば精神障害を持つ方は、ちょっとしたことに大きなストレスを感じる人もおり、職場でうまく人間関係を築けないことも多いです。
また、発達障害の特性ゆえに円滑にコミュニケーションが取れない場合もあります。

このように、採用後に同僚や上司との人間関係におけるコストが膨らみ、仕事に支障がでてしまうこともしばしばあるため、避けられている現状があるのではないでしょうか。

多くの職場は、部署内外やプロジェクトチームで絶対的に人間関係があることを前提として仕事を作っているので、双方に負荷がかかってしまいます。

体調を崩してしまう社員の対応や、ごく一部の障害者、またはその同僚からのクレームに近い要求への対応で、人事担当者に過度に負担がかかってしまうことも珍しくありません。

そのことで残業が増えたり、メンタルを崩してしまうといった、いわゆる「ミイラ取りがミイラになる」現象もしばしば見られます。

ーそのあいだも、人件費はしっかりかかっていますしね。定着率が低いことよりも、そちらのほうがリスクかもしれません。一筋縄ではいかない、現場の事情も見えてきました。

(成川)
身体障害の場合は、できないことや必要な配慮が採用時にはっきりしていますが、精神・発達障害の場合はそれが見えづらい。
さらに健康状態が変わりやすいことも、避けられがちな一因かもしれません。

けれど、4年前に厚生労働省が精神障害者を障害者雇用義務の対象に加えた(※)ことや、期限付きで精神障害者の短時間勤務の算定方法を有利にする特例措置が設けられるなど、国としても精神障害者の雇用を促進していこうという動きがあります。

※厚生労働省サイト「障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました」

ー精神・発達障害と診断される人の数も増えてきているといいますし、企業側もいつまでも避けているわけにもいかないんですね。

(成川)
そうですね。
リスクばかりに目が行きがちですが、そのリスクを細かく見ていけば、対策が打てるものもあります。

障害があっても、能力がないわけではありません。

彼らが本領を発揮してイキイキ働けるよう、環境を整えていくことが大切です。

→次回「企業が障害者社員に期待するのは、成果ではなく法定雇用率なのか?」へ続く

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