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法定の一歩先を行く障害者雇用やDEIのポイント~第1回 成川さんへの質問会 ~

2023年12月に(当時)社長の成川さんへの「何でも質問会」と題して、
アンバサダーより質問を投げかけ、ご回答(語って)いただきました。

今回から全5回に分けて、その一部をお伝えします。
第1回のテーマは、「法定の一歩先を行く障害者雇用やDEIのポイント」です。

▼各回のテーマはこちら
・法定の一歩先を行く障害者雇用やDEIのポイント(本記事)
DEIの施策を始めるときに経営層にアプローチする方法
会社が人を引き付けるには~吸引力の正体~
人事評価について思うこと
社員が生き生きと働くために気を付けていること

 (執筆:JPTアンバサダー トミー)

ー法定のものはどちらの企業もやっていると思いますが、一歩先を行く障害者雇用やDEIの取り入れ方やポイントを教えてください。


DEIに関係する項目の中で、法的な要件があるものって障害者のことと子育て・介護支援ぐらいなんですよね。で、当然ですが、それは国の論理で決められるものであって、企業の論理とは異なるというのが僕の理解です。

例えば、日本という国が発展していくため、シンプルにいうと人口を増やしたり、家族に介護をしてもらったり、障害があっても、年老いていても働ける人に働いてもらったりする必要がある。
でも企業にはそれを推進するメリットは無くて、市場原理にまかせていたらどうしても難しい。だから、強制力を持った法律という形でそれを推し進める訳です。まず、この構造があるということを念頭に置かないといけないと思うんです。

だって、一企業にとっては別に人口が増えたって、短期的にはそんな大きな得にはならない。もちろん労働者の候補が増えるということはありますけど、別に企業は外から外国人を雇ったって、外国でビジネスしたっていいわけですから。

でも、各企業のDEIの施策を見ると、子育て支援しますとか、介護支援しますとか、いっぱいやっていて、それって本心からそう思ってるはず無いのになんでそんな事言うのかな、おかしいなって思ったり、逆に子育てしない人、介護しない人に対する逆支援になってしまうんじゃないのって思うんですよね。

ー逆支援というのは?


子育てをする人がそれ専用の休暇を追加で付与されるということは、そうでない人からお金を奪い取って子育てしている人に配っているようなものですよね。国はそれで良いんですよ。人口を増やしたいから。でも企業はそれをやるべきではない。それはDEIからかけ離れているというか、反対のことをしていると僕は思うんですよね。子育てをしないという多様性をある意味認めていないわけですから。

でも、だからといって企業がDEIを進めなくても良いと思っているかというと、そうではないです。
以前、落合陽一さんがNewsPicksの番組で、SDGsというのは現代の五・七・五だと言っていて、DEIに対する要求もそうやって考えたら良いと思うんです。世界や国が発展していくために必要なルールを国民とか自国の企業に課すのは当然のことで、それに対してブーブー文句を言うのではなくて、それは所与のもので前提条件だと。ある意味、ルールがなければ競技が楽しくないというかゲームが楽しくないのと一緒で、その決められたルールの中でいかに楽しくやるかというように捉えたら良いのではないかと僕は思うんですね。だから、例えば障害者雇用に関して2.3%雇わなければいけないのも、逆に言うと、そこに達するまでお金のことはとやかく言わずに、とにかく雇おうと経営者は思うわけで、それを逆手に取って自分がやりたい事業を「障害者雇用のために」と言って提案すれば案外すんなり通るかもしれない。
障害者雇用で新しい事業をやるのか、障害者雇用とは関係なく本当に単体の新規事業でやるのかというと、前者の方が圧倒的にやりやすいわけですよ。五・七・五に則っているから「何か響きが美しいね」ってなるわけです。

ご質問いただいた、障害者雇用とかDEIとか多様性というところの法的要件と、それ以上の部分というのがあると思うけど、どう考えるのかというと、俳句を楽しむがごとくDEIというものを楽しめば良いんじゃないかなというのが僕の意見で、そうやって出来たのがJPTという会社なんです。

―現在の法定のルールが五・七・五として、一歩先というのは五・七・五のルールを守りながら、色々とカスタマイズして工夫するということでしょうか。


その響きであれば皆納得しやすいというか、その響きでなかったら逆に反対されるというようなことでもすんなり通ってしまう魔法の杖みたいな、無条件に皆良いかもと思ってしまう。

本当に突き詰めて考えると、あれ?これでいいんだっけ?と思うことはあると思いますよ。でも自分が成し遂げたいことや新しいことをやるときって、やってみないと分からないことって沢山あるじゃないですか。とにかく何でも良いからやらしてくれよと思っている人にとっては、DEIとか障害者雇用はすごい使い勝手の良いものになっていると思いますね。僕はそういう風に捉えています。
決してネガティブなものでなくて、国に言われるからやるということでもなくて、社会がこうあったら良いのにという新しいことをやるための潤滑材として使えるなと思っています。

-言ってしまうと、自由度が高い分野であるということでしょうか。


だと思います

どんなに人件費削減を謳っていても、「だってうち2.3%行っていないじゃないですか」と言えば新しく人を雇えるし、人数がいれば成果もそれだけ出ますから。で、JPTに頼めばこんなこと出来るんだねと沢山の人に思ってもらえて、より存在感が高まっていって。「じゃあうちの部門でもそれやってよ」となれば、おのずと日揮グループの中で障害者と一緒に働くという経験を持つ人が増えていく。
その積み重ねの先に真のDEIがあるんじゃないかなと思うんですよね。障害とか関係なく、立場の違いも関係なく、一緒に働いて、一つの価値を作って、それを社会に問うていくというようなことこそがDEIなんじゃないの、と僕は思います。

ー障害者雇用やDEIを取り入れる際のポイントについて、すごい大きいところを教えていただいたのですが、具体的に気を付けた方が良い点があれば教えてください。


僕は本当に一貫していて、働きたいのに働けない人に対して、企業が固定観念とか前提条件を壊すことによって、企業側のこうでなければならないというのを、本当にそうなのかと疑って壊せるところを壊して、それだったら働けるという人をいかに増やすかが勝負だと思っているんですね。
だから本当に障害者雇用に限らずですが、いやそれだったらうちでは働けないよと言われてしまった人たちとか、自分自身でこれだったら働けないなと思ってしまった人に対して、JPTという会社があるんだと、それなら働けるね!といかに思ってもらえるかが勝負だと思っているんですよね。
それが繰り返しになりますけれども、DEIの本質だと僕は思います。

言い換えると、働くことに関する自由度をいかに上げられるかが重要ということですね。そうすれば自然といろんな人が集まってきて、多様な人たちが一緒に働くということが実現されるのではないかと思います。
 
その一番分かりやすいのは、フルリモート・フルフレックスですよね。あとは理由を問わない時短勤務。子育てあるいは介護がなければ時短勤務が出来ないというのはおかしな話で。国が、そういう人に時短勤務をさせられるような制度を民間企業が作りなさいと言っているから嫌々作っていると僕は思うんですけど、いや、皆出来るようにすればいいじゃんと。

「家から週20時間でも正社員にもなれる」と言えば、沢山の人が、「じゃあ俺・私もできる」という風に言ってくれるわけじゃないですか。たったそれだけで。やればいいじゃんという話なんですよ。でもやらないというのは、逆に僕は不思議なんですよね。
「いや、でも既存の社員が『俺たち・私たちもやりたい』と文句を言ってしまうかもしれなくて、そうなった会社が崩壊する」という状況なら、新しい会社を作って、それ専用の処遇を作って、就業規則を作ればいい。

で、日揮は今は後者。本体をフルリモートにはできなかったからJPTという出島を作っている状態。でも20年経った後はグループ全体がもっと働き方を自由に選べるようになっていてほしい。そうなればもっともっと日揮は強くなると思うし、この人材流動化の中、もちろん出ていく人もいて然るべきだと思うんですけど、吸引力の方が勝るという様に僕はなれると思うんですよね。


新しく学ぶことが多かった今回の成川さんのお話を、以下のポイントのとおり理解しました。

◎真のDEIは、障害の有無や立場の違いに関係なく、
「働きたいけど働けない人たちと『一緒に働く』」ということ。

◎国がセーフティーネット(日本国民の社会保障)として企業に要求していることは、日本企業の責任として取り組む必要があるが、対象にならない人への差別にもなるということを忘れてはいけない。

◎国が企業に要請する法定ルールは、自らが考える理想の社会実現に向けて新しいことを行う潤滑材として使える。そのルールを土台にして、自社なりに考えるDEIを作るのを楽しむのが良い。

◎具体的には、下記のステップを踏むことで、DEIを構築していく。
 ①働くことに対する自由度を上げて、働きたいけど働けない人に来てもらう ⇒
 ②来てくれた人と一緒に働いて価値(実績)をつくり、社内外に認めてもらう ⇒
 ③さらに自然と人が集まってきて、多様な人たちが一緒に働くということが実現される
上記により、生き生きと働く人が増えて、企業自身にも多様な価値が生まれ、活性化していく。 

DEIは、正解がなく深い考え方で、構築するには地道な積み重ねが必要と感じました。
成川さんのお話により、大局観のようなものは得られましたが、実際に構築するには、何を目的として、どう行動していったらよいか。

私は現在育休中ですが、復職後に所属企業の現状を把握して、独自のDEIを構築していきたいと考えています。社員の皆さんが生き生きと働けるように、もっと勉強して、社内外の色んな方と対話していくことで、整理しながら見出していくことが理想です。

次回のテーマは「DEIの施策を始めるときに経営層にアプローチする方法」です。
ご期待ください!


#DEI #DE&I  #障害者雇用


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