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1/5 ニュースなスペイン語 Hija predilecta:名誉市民

近代スペイン文学の巨匠アルムデナ・グランデス(Almudena Grandes)が昨年11月27日にがんで亡くなった。享年61歳。大手新聞「エル・パイス」誌の論説委員であったグランデスは亡くなる約1ヶ月前の10月10日のコラムで自らががんに侵されていることを告白していた。

『ルルの時代(Edades de Lulú)』は日本語にも翻訳された、やや、衝撃的な小説なので、名前を聞いたことがある人もいるかもしれない。「グランデスがいなければ、スペイン文学のここ40年間の歴史は理解できない(sin la cual no se entiende la literatura española de los últimos 40 años)」とまで評された文筆家だが、スペインを含むスペイン語圏での知名度と比べると、日本ではほぼ無名に等しい。

この度、グランデスをめぐり、ちょっとしたゴタゴタが続いている。

事の発端は、「グランデスはマドリードの名誉市民(hija predilecta)にはふさわしくないと思う(no merece)」というセリフ。マドリード市長(alcalde)のホセ・ルイス・マルティネス・アルメイダ(José Luis Martínez Almeida)が、とあるインタビューで語ったものである。

当然、方々から「非難・悪口の滝(catarata de insultos)」を食らったマルティネス・アルメイダと、そして、グランデスまでもが、ツイッターのトレンド入り(tendencia en Twitter)を果たしてしまったほどだ。グランデスも、草葉の陰で、さぞびっくりしていることだろう。

日本でも有名な歌手のプラシド・ドミンゴ(Plácido Domingo)やフリオ・イグレシアス(Julio Iglesias)はいずれも、マドリード生まれで、それぞれ、2013年と2015年に、マドリード名誉市民の称号(distinción, reconocimiento)を授与されている。今回のように、死後(póstuma)に授与されることも、前例がないわけではないようだ。

結局、マルティネス・アルメイダはグランデスが名誉市民になることを了承したようだが、この納得の背景も、どうも、すっきりしない。グランデスを名誉市民に推したい政敵から予算の了承を引き出すために、グランデスの名誉市民を承諾したという内容の記事も見る。かなり後味が悪い。

もっとも、通りにグランデスの名前が付くこと(tendrá calle)に対しては、市長は賛成票を投じているみたいだから、まぁ、こちらはすっきり。

写真はアルムデナ・グランデス。ちなみに、妻に先立たれた夫をスペイン語では「viudo」というが、彼女のviudoは詩人(poeta)のルイス・ガルシア・モンテロ(Luis García Montero)。日本にも支部がある「セルバンテス協会(Instituto Cervantes)」の頂点である会長さん(director)だ。