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はじめてボードゲームを作ったので、自分なりのボドゲ制作の方法を体系化してみた


突然ですが、普段何を見ていることが多いですか??

きっと"何かしらの画面"を見てることが多いんじゃないかと思います。
ゲームもそう。画面に向かってやるのが当たり前です。

でも、ボードゲームは違います。

ボードゲームは人と人が向き合って遊べるゲーム。
そこには体温があって、場の空気があって、勝っても負けても楽しい不思議な体験があります。
僕はそんなボードゲームが好きです。

自分がつくったボードゲームで楽しんでくれたら最高だと思って、つくることにしました。

決して、ボードゲームが強いわけじゃないし、詳しいわけでもないし、
ボードゲームを仕事にしてるわけでもありません。
ただやりたいからやってみた、素人の暇つぶしです。


つくったボードゲーム

実は既に2つ作っています。
(4月10日のゲームマーケット出店します!ブース [チ14] )

最初は友人に「一緒に作らないか」と誘われたことがきっかけ。

10ヶ月くらいでしょうか。オンラインで週1日くらい話しながらゆるゆると作りました。
自分1人ではなく、誰かと作ったからこそ学べたことがたくさんありました。

初めて制作したボードゲーム:Antronia(アントロニア)

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プレイヤーがそれぞれ自分のアリを増やしながら地中を誰よりもはやく占領する戦略ゲーム
2人から6人まで遊べます。

2つ目は1人で作りました。

着想、企画、デザイン、テストプレイ、製造…すべてあわせても24時間もかかっていないと思います。
1個目を作った反省から、自分なりの方法論を仮説として持てたのが大きな要因です。

制作した2つ目のボードゲーム:OSCARD

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俳優として映画のオーディションを受け、アカデミー賞を目指すパーティゲーム
3人から8人まで遊べます。

まだ2つしか作っていないし
何よりも売れてるわけではないので
ただ素人が暇つぶしでやってみたレベルですが

自分の備忘録という意味でも、考えたボードゲーム制作の方法論を書いていきます。

これからここに書くことは、どこからか引用してきたものとか、何かを参考にして自分でアレンジを加えたものではありません。

1から10まで雑魚が経験から考えたことなので、99.9%役に立たないものとしてご覧ください。


初心者がボードゲーム制作の方法を体系化してみた


ここからのもくじ
0. まずやっておいたほうがいいこと
1. どんなボードゲームをつくりたいか妄想する
2. ボードゲームのテーマ・勝利条件・終了条件を考える
3.テーマに関連する要素を洗い出し、ゲーム化し、変化を加える
4. どこに楽しさが生まれるのか振り返ってみる
5. テストプレイをしてみる
6. 終わりを決める


0. まずやっておいたほうがいいこと

まずは、いろんなボードゲームで遊ぶこと

突然ですが、
これまで塩おにぎりしか食べたことのない人が、
新しい料理のレシピを作ろうとしたら、
作れるでしょうか??

まあ難しいでしょう。笑

それと同じで、
トランプと人生ゲームしかやったことない状態で
新しいボードゲームのルールを考えるのはおすすめしません。

無理ではないかもしれませんが、非効率すぎます。

いろんな種類のボードゲームで遊んでいればいるほど
ボードゲーム制作の発想の助けになります。


ついでに、メカニクスを知ること
メカニクスとはボードゲームを形成している仕組みのことです。

例えば、ペペロンチーノを形成しているのは、パスタ麺を熱湯で指定の分数茹でたものにソースを和える「パスタ」というメカニクス。
(料理ではメカニクスとは呼ばないと思いますが。笑)

人生ゲームを形成しているのは、ダイスまたはルーレットを回して出た目の数だけ駒を進める「すごろく」というメカニクスです。

実際メカニクスは知らなくても、「人生ゲームのルーレットを回して駒を動かす仕組みを使えないか」と考えればいいので、ボードゲームは作れます。

ただ知っていると、ボードゲームAとボードゲームBは同じメカニクスだけど、Bにはこういうアレンジがされている、ということがわかるので、ボードゲーム制作をする際の参考になる情報を得やすくなります。

0. まずやっておいたほうがいいこと
- いろんなボードゲームで遊ぶこと
- メカニクスを知ること


1. どんなボードゲームをつくりたいか妄想する

そもそもなんでボードゲームをつくりたいと思ったのかを自分に聞いてみる必要があります。

どんな人に楽しんでほしいか
どんな楽しさをつくりたいか

の質問を答えてみると、自ずとボードゲームの輪郭が見えてきます。

僕は最初、「友人に誘われたから」という理由でしたが、1つ目のボードゲームを作ってみて、「手軽に、もっとたくさんの人で楽しく盛り上がれるゲームを作りたい」と思いました。

つまりこういうことです。

どんな人に楽しんでほしいか -> ボードゲームを普段やらない人

どんな楽しさをつくりたいか -> 笑えてる楽しさ

次に、こんな感じのポジショニングマップをつくると
ゲームの妄想がイメージに変換されやすいです。

僕が2つ目に作ったOSCARDはは、笑える楽しさなので、コミュニケーションが多くなるはずです。普段ボードゲームをやらない人も楽しめるので、パーティゲームでしょう。

マップではここあたりに位置しています。

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(自作したWebアプリでこのマップ作りました。よかったら使ってね)

1. どんなボードゲームをつくりたいか妄想する
- どんな人に楽しんでほしいか / どんな楽しさをつくりたいかに回答する


2. ボードゲームのテーマ・勝利条件・終了条件を考える

いよいよボードゲームのルールをつくる部分に入ってきます。

ボードゲームはどれも等しく「テーマ」があり、「勝利すること」が目標におかれています。
そして当たり前ですがどれも等しく「終了する条件」があります。

それぞれを考えていきます。

## テーマ

先程考えた、
どんな人に楽しんでほしいか
どんな楽しさをつくりたいか
に対して、合いそうで、作ってみたいテーマを考えます。

OSCARDの場合は、多くの人がよく知る、映画・俳優・アカデミー賞をテーマにしました。

1つ目につくったAntroniaは、
蟻(しかもハキリアリという農業する特殊な蟻)というテーマが先に決まっていたがために、
どんな人に楽しんでほしいか、どんな楽しさをつくりたいかの部分が、制限されてしまいました。

このように「やりたいテーマ」と、「こんな人に楽しんでほしい、こんな楽しさをつくりたいという希望」はトレードオフになる可能性があります。

そこでテーマは、上位概念にあたる「どんな人に楽しんでほしいか、どんな楽しさをつくりたいか」に合わせて決めると、作り始めてからもブレが少なくなると思います。

## 勝利条件

勝利する条件を決めるために考えるべきことは2つです。

勝利する、という状態はどういう状態か
その状態は、どういう条件なら表現できそうか

例えばOSCARDでは、以下のような感じです。

勝利する、という状態はどういう状態か
 -> アカデミー賞を受賞するために、どのプレイヤーよりも1番人気が高い状態

その状態は、どういう条件なら表現できそうか
 -> 人気度を点数とすると、最も点数の高い人は1番人気が高いと表現できる

つまり、終了時点で点数が最も高いことが勝利条件となります。

勝利条件には、
1番最初にゴールした人が勝ち、点数が1番高い人が勝ち、1番最初に手札がなくなった人が勝ち、最初に特定の駒をとった人の勝ち、などなど、いろんなパターンがあります。
様々なボードゲームをやればやるほど、いろんな勝利条件があることを知れると思います。

## 終了条件

ボードゲームは、
誰かが勝つと終了する場合と、
終了してから誰が勝ったか確認する場合があります。

1番最初にゴールした人が勝ち、最初に特定の駒をとった人の勝ちというのは、誰かが勝つと終了する場合です。

一方で点数が1番高い人が勝ち、というのは終了してから誰が勝ったか確認する場合です。

点数を使うとしても、1番最初に50点に達した人が勝ち、となると誰かが勝つと終了する場合になります。このように終了条件は変更が効きやすいので、ゲームバランスを見ながら決めていくことをおすすめします。

2. ボードゲームのテーマ・勝利条件・終了条件を考える
- どんな人に楽しんでほしいか / どんな楽しさをつくりたいか に対して、合いそうで、作ってみたいテーマを考える
- 勝利する、という状態はどういう状態か その状態は、どういう条件なら表現できそうかを考える
- 終了条件は変更が効きやすいので、ゲームバランスを見ながら決めていく


3.テーマに関連する要素を洗い出し、ゲーム化し、変化を加える

テーマと勝利条件、終了条件が決まったとはいえ、
どうやってボードゲームがスタートして、どういう順番で何が行われて、どうやって勝利条件に達するのかという細かいルールを0から考えるのは大変です。

そこで、せっかく決めたテーマを使います。
ここからは例があったほうがわかりやすいともうので、OSCARDを例に書いていきます。

## テーマに関連する要素を洗い出す

OSCARDのテーマは、映画・俳優・アカデミー賞でした。
そこで、それに関連する要素を洗い出します。

キャスティング
オーディション
映画ランク(A級映画、B級映画など)
映画ジャンル
演技
脚本

などなど、調べながら、まずは挙げられるだけ挙げてみます。

B級映画というものがあるのは知っていましたが、A級、C級、D級、Z級という映画の存在や、それぞれの特徴、様々な映画のジャンルについて知らない情報を集めていきます。

## ゲーム化する

挙げたものを、ゲーム化するために、カテゴライズしていきます。

カテゴリは大きく2つです。

1.  勝利条件に繋がりそうなもの
2. 1に関わる副次的なもの

OSCARDの場合このようにカテゴライズしてみました。

1. 勝利条件に繋がりそうなもの
キャスティング
オーディション
演技
2. 1に関わる副次的なもの
映画ランク(A級映画、B級映画など)
映画ジャンル
脚本

次に、1を実際に勝利条件に繋げる=ゲーム化していきます。

カテゴライズがうまくされていれば、ここは割とスムーズにいくと思います。
(もちろん制作ゲームが複雑なものほど大変です。Antroniaは大変でした。笑)

例えばOSCARDならこんな感じです。

キャスティング
 -> 指名キャスティングをされたら、なりたい役柄に絶対になれる

オーディション
 -> 指名キャスティングをされなければオーディションをうける

演技
 -> オーディションでは演技評価が1番高かった人がその役柄になれる

ゲームの要素
 -> なれた役柄(主演、助演など)によって人気度を表す点数をもらえる

勝利条件に繋げる
 -> ゲームが終了時点で点数が1番高い人がアカデミー賞をとって勝利となる

## 2で、1に変化を加える

カテゴライズがうまくされていれば、2は、テーマにも1にも関連があるものになっているはずです。
これらは、ゲーム化された1に対して、変化を加えるために重要です。

例えば

同じ主演でもA級映画とZ級映画では、全く価値が違うので、

主演だとしてもA級なら高い点がもらえ、

Z級だと点数が低い(またはマイナス)点になる

というようにゲームの進行に変化を加えていきます。

同じ主演のオーディションでも、

映画のジャンルがアクションなのか、

ホラーなのかで求められるものは違うため、

ゲーム中で行う演技もそのジャンルに合っているかどうかで評価する

こうすることで、例えヒューマンな演技が得意な人がいても、コメディでオーディションするときは役を得にくいということが起きるようになります。

## 運要素を追加する

ボードゲームの運要素は、どのプレイヤーも関与できない部分で、ほとんどの場合必要です。

人生ゲームのルーレットは運要素ですし、トランプの大富豪も最初の手札は運で決まります。
将棋・チェス・オセロといったゲームは運要素がない分、実力のみで勝負することになります。

おそらく一般的には、
運要素が多ければ多いほどパーティゲームになりやすく、意思決定が多ければ多いほどゲーマーズゲーム(考えるゲーム)になりやすいはずです。

OSCARDの場合は、同じ役でも得点の異なるA級〜Z級のどのランクの映画の配役を決めるのか、というのを山札から1枚カードを引いて決めることで、運要素としています。

3.テーマに関連する要素を洗い出し、ゲーム化し、変化を加える
- 関連要素は、調べながら、まずは挙げられるだけ挙げてみる
- ゲーム化する際は、要素のカテゴライズが重要
- 変化を加えると、ゲームの結果に影響する変数を増やせる
- 運>意思 -> パーティゲーム / 意思<運 -> 考えるゲーム になりやすい


4. どこに楽しさが生まれるのか振り返ってみる

ここまでできたら、
ボードゲームは遊べる状態になっているはずです。

正直ボードゲームはやってみないとおもしろいかどうかわからないので、
はやくテストプレイをしたほうがいいのですが、
その前に1つだけやっておくべきことがあります。

カスタマージャーニーマップならぬ、
プレイヤージャーニーマップを作成することです。
(プレイヤージャーニーマップは勝手に作った造語です。既にある言葉だったらすみません)

このボードゲームのルールを読むところから、
実際にプレイしはじめ、
ゲームが進み、
終わるまでに
プレイヤーがどんな感情と思考の変化を経ていくのかを仮説してみます。

ここで仮説したプレイヤージャーニーは、テストプレイと照らし合わせてゲームをチューニングするのに役立ちます。

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4. どこに楽しさが生まれるのか振り返ってみる
- プレイヤージャーニーマップを作り、プレイヤーの感情や思考を仮説してみる


5. テストプレイをしてみる

いよいよテストプレイをしてみます。

オフラインなら厚紙、ダンボールで工作、
オンラインならGoogleスライド、whimsical、miroなどのコラボレーションツールを使って、ボードゲームのプロトタイプを作成し、テストプレイを行います。

テストプレイ後に

楽しかったか、楽しくなかったか
いつ楽しかったか、いつ楽しくなかったか
どんな楽しさだったか、どんな楽しくなさだったか

を振り返り、プレイヤージャニーマップと照らし合わせていきます。

ゲーム中に、待ち時間が長く間延びする、負けが早くから見えている、などの望ましくない感情や思考になっているところはチューニングを検討します。

テストプレイをした際に、テストに協力してくれた人が改良案を出してくれることもあると思います。
改良案は聞いてもいいですが、自分のフィルターは必ず通して、必ずしも採用しないようにしましょう。
理由は後ほど書きます。

また、もらった案をその場では否定は絶対にしないことが大事です。
ボードゲームを作った事がある人なら健全に議論ができると思いますが、そうでない場合はブレインストーミングだと思って聞きいれてください。

5. テストプレイをしてみる
- プレイヤージャーニーマップと照らし合わせて振り返る
- 改善案をもらったら否定しないが、必ずしも採用しない


6. 終わりを決める

ボードゲーム制作には、終わりがありません。

テストプレイをやるたびにアイデアはでてくるし、意見をもらうこともあります。
必ずしも採用しないのは、「ボードゲームが完成しなくなるから」これが1番大きな理由です。

最後はプレイヤージャニーマップとテストプレイを照らし合わせて、自分で終わりを決める必要があります。

どこでこのボードゲームを完成とするか
これは初めてつくったAntroniaのときに、
とても考えさせられました。
現時点での僕のボードゲームを完成とする基準はこうです。

世の中にありそうなボードゲームになっているかどうか

これは様々なボードゲームをある程度やってきたからこそ持った基準だと思います。

例えば世の中にある有名なボードゲームも

同じメンバーでやって誰かが圧勝するときもあれば、自分だけボロ負けするときもある

ゲーム終盤、早ければ中盤で、自分は勝てないと察することがある

というような、ぱっと見「つまらない」と言われそうな結果になることがあります。

それは、ボードゲームをプレイした結果が、ゲームバランスによるものだけではなく、プレイイングによるものも、大きく影響しているしているからです。

これはプレイヤーのミスや、力量の差による結果なのか、ゲームバランスが悪いことによる結果なのかをよく観察して、後者であれば要改善、前者なのであれば、それは「世の中にありそうなボードゲーム」と呼ぶことにしています。

これはあくまで初心者として、いったんそのレベルでも完成とするということなので、レベルがあがればもっと違う完成基準が出てくると思います。

6. 終わりを決める
- 世の中にありそうなボードゲームになれば完成にする

おわりに

ここまでご覧いただきありがとうございます。気づけば7000字近くになっていました。

僕はこれからもボードゲーム制作を通して
ボードゲームを一緒にやった人とより仲良くなれる未来
を作っていきたいと思っています。
(本職はエンジニアです。笑)

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一緒にボードゲームをして仲良くなれたら嬉しいです。

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