関わる人が多いと何が大変なのよ、というお話(実話part2)

【毎週火曜更新・時間堂、年商1億プロジェクト32】時間堂プロデューサー大森晴香です。ごきげんよう。昨日8月23日の十色庵はDr.MadBOYと劇団晴天のサマーバケーションという公演の初日でした。夏祭りがやりたい若者たちが、演劇を2本とやきそばとかくだもの飴とか売ってます。キッチンがある十色庵ならではの使い方をしてくれて嬉しいです。劇中でもじゅーじゅーいうシーンがあって、個人的にはそこでいい匂いを出してるアレが一番食べたいです。とか言ってたら、今日から売店に並ぶようになったらしいです。お楽しみに。日曜のお昼には時間堂の黒澤世莉と私がトークにお呼ばれしております。リハーサルと本番を拝見して、やっぱり本番はいいよねぇ、お客さんのリアクションがあると演劇には血肉が通うよねぇとか思いました。

来週は(劇)ヤリナゲの『翳りの森』が始まります。(劇)ヤリナゲは時間堂黒澤世莉イチオシの劇団です。私も昨年制作協力して、そのおもしろさは太鼓判おします。どーん。去年の佐藤佐吉賞最優秀演出賞を獲得した文字通り「新進気鋭」の越寛生くんが、私の知る限りはじめて、自作ではない戯曲で公演を打ちます。挑戦。

ところで。

先日、時間堂は年末での解散を発表しました。驚かせてしまったかた、ごめんなさい。思った以上に全国津々浦々からご反応いただいて、自分たちは確かに演劇で劇団のそとの世界とつながっていたのだ、と実感しました。「もっと早く危機に気づいて、なにかできたらよかった…」と心を痛めてくださるかたまでいらして、なんだか恐縮してしまいます。思うところがありすぎてとても文字起こしできない!と思っていますので、ぜひ直接お会いしましょう。時間堂はまだ年末まで活動するからね!本番も3回やるからね!!まだ解散してないからね!!!と、強くお伝えしたい。もっと言えば、

時間堂解散しても私たち生きてるからね!!!!

…さて。

前回から『ゾーヤ・ペーリツのアパート』のふりかえり的な記事をアップしています。前回は劇場が大きくなると何が大変なのかを深堀りしたのですけど、今回は座組=公演関係者が増えると大変って何がどう大変なの?というお話を書きます。

①座組が大きくなった→連絡が大変!

関わる人数が増えると「この情報、誰に話したっけ?」みたいなことが頻繁に起きます。過去のツアーも大変でしたけどね、「この話、どの地域にしたっけ???」という。

怖いのは、「話したつもりで話していない相手がいる」ケースと、「複数の人に違う話をしてしまう」ケースです。後者については「AさんとBさんの言っていることが違う」ケースも含みます。

正直にお話しすると、忙しさにかまけて、あるいは自分の記憶力を過信して、口頭でのやりとりだけで済ませたことがのちのち問題につながる、ということがままありました。メーリングリストだのLINEグループだのSlackだの、連絡ツール自体はたくさんあって、ログを残す工夫さえすれば、大事故になるようなミスは未然に防げるとは思います。面倒くさがらずにメモを残すこと、それも認識のすり合わせができるように電子データで共有管理すること。外の現場では結構念入りにやっていることが、自分の団体では端折ってしまうことがありました。劇団員や制作助手に何度助けられたことか。みんなほんとにありがとう。

②座組が大きくなった→連携も大変!

連絡がたいへんてことは、連携はますますたいへんということです。複数の部署と同時進行で連絡を取り合いながら本番に向かっていくわけですけど、ひとが増えるほど起きる問題があります。それは、「三遊間のゴロをとりこぼす」みたいなやつです。

例えば「スタッフへの連絡」とか「劇場への相談」という事象について、演出助手がするのか制作がするのか、はたまた舞台監督マターなのか、みたいなことがあります。内容や時期によって臨機応変に判断していくことになるのですけど、なにせ「臨機応変」ということは画一的な答えがないということですから、ときとして宙ぶらりんになることがあるわけです。実際、「この話、制作からする?演助からする?」みたいな相談はしょっちゅうしていた印象がありますし、逆に同じ相談を同時に複数部署からひとりのひとにしてしまったこともありました。

もうこの問題はコミュニケーションを密にとるくらいしか解決策がないような気さえするのですけど、とりわけ「舞台監督」「演出助手」「制作(プロデューサー含む)」の3部門がキモだと思っています。なにやってるかよくわからない、わからないから削減しよう、なんて言われがちな3ポジションですけど(実際、小規模公演だと不在なことも珍しくありません)、座組が大きくなったら負荷がかかるのはこの3ポジ。

振り返って思うのは、この負荷がかかる3ポジの人間が、「有能である」だけでなく「上機嫌である」ことは結構大事なポイントだったな、ということです。舞台監督がゴキゲンだと安心して委ねられますし、問題が起きそう・起こったときでも迅速に相談できます。無限にある業務に押しつぶされそうなはずの演出助手が稽古を観て笑っていたら、無駄な遠慮はせずに率直な話ができます。それは、制作でも同じこと。

無理してソトヅラの笑顔をキープしてストレスを溜めよう、ということではありません。ただ、制作がテンパっていたりフキゲンだったり疲れ切った顔をしていたら、たぶん、周りはとても気を遣ってくれます。場合によっては、相談や頼みたいことを呑み込むこともあるでしょう。頼まれたことのすべてを引き受ける必要はないし、たいへんなときに我慢しなくちゃということでもありません。パンクや疲弊を回避して、話しかけやすいひとでいられるかどうか。この点、私はまだまだ未熟だと思い知りました。いちばん甘えられる劇団員たちにぴりぴりムードで接してしまうことしばしば。

③座組が大きくなった→問われるチームマネジメント力

『ゾーヤ・ペーリツのアパート』では、「公演制作を経験したい」という素敵な若者たちをたぶらかして…じゃなくて巻き込んで、制作助手になってもらいました。公演規模の拡大に戦いて、当日ロビースタッフも私の持てる人脈を駆使、黒澤世莉をして「盆と正月がいっぺんに来た」と言わしめる時間堂をよく知る強力メンバーがずらり。一見、なんの問題もないように見えます。実際、とても恵まれた環境でした。

で、ここで問われるのがチーフのマネジメント力です。そう、です。

優秀でやる気あるひとびとが集まってくれたとして、そのひとびとに思いっきり力を発揮してもらえるかどうかはリーダーシップにかかっているわけです。

時間堂は、2014年に2名の制作メンバーを迎えて「制作部」になりました。その後、2名とも退団して「部」からまたソロ活動に戻りました。理由はそれぞれでしたけど、「ひとと一緒に、チームで成果を上げる」というのは「個人でどうにかやり遂げる」とは全然違うフェーズなのだと痛感しました。前職が人事系経営コンサルタントという、まさに「ひとを通じて成果をあげるぞよ」というお題目を唱えて営業活動をしていたわけですが、実際自分がマネージャーになるとほんとその通りなんだけどぜんぜんうまくできなかった。

今回のゾヤペでも、活躍の場をうまくつくれなかった若者がいました。うまく仕事を渡せなくて力を余らせちゃったり、逆に余裕がなくて丁寧な説明なしに大きな仕事を任せちゃったりというアンバランスマネジメントもありました。

経験済みの仕事をするときは、仕事の全体像が見えているので采配しやすいけれど、未知の世界を切り拓くときでも全体像を見据えて意思決定ができるかどうか。もしそれができないのであれば、せっかくひとが集まっても1足す1が1.3くらいにしかならなくて、それは「チーム」ではないなぁと思います。

それと、自劇団だからこそ、自分がやらねばと気負いすぎて視野が狭くなる、ということが私にはよく起こります。これから先、時間堂ほどのめりこむ劇団に出会えるかはちょっとわからないけれど、目の前の仕事にいきなり手を付けるのではなく、自分含めて最適なアサインは誰なのかを考える癖をつけることが私には必要だと思いました。

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ここからはお知らせコーナーだよ。時間堂の解散は年末で、それまでに企画が目白押し!です。なんかもう会えないみたいなコメントも見かけましたが、会えます。演劇やってます。

9/10土~12月 時間堂レパートリーシアター【2016.9】『驟雨』
岸田國士の名作ですが、私はこれ、レトロなコントだと思っています。岸田ってお高くとまってるイメージを持ってるひとがいたら(実際、私はそうでした)ころんと覆りますよ。

10/14金・15土 時間堂レパートリーシアター【2016.10】『言祝ぎ』
たぶん、レパートリーで一番繰り返し上演してきた作品がこれ。再演ならではの熟成に、メンバーチェンジで新鮮さもプラス。詳細はまた追ってリンク貼ります。

12/21水~30金 解散公演『ローザ』
時間堂ラストはロングランで黒澤世莉の台本を。2012年、劇団員だけで全国を回って鍛え上げてもらった思い出の作品です。続報はまたアップしますが、どうか、いまからカレンダーにチェックをお願いします。

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そして制作者のみなさま。悩める中堅制作大森晴香が大先輩荻野達也さん(fringe)とご一緒にオフライン企画やります。時間堂解散しちゃうけど私はどうやって生きていくんだ、という生々しいお話し会です。カレーもあるよ。

9/7水19:30~22:00 制作カフェ@十色庵
申込はこちらから【8/30火24:00〆切】

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この連載ももうじき1周年。1年54週なのにまだ32回しか書いてないあたりがものぐさですね。解散も決まったので、新しい連載マガジンに切り替えようかなぁ、とぼんやり考えています。ゾヤペの話が終わるまではとりいそぎ、このまま。

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