藤澤 仁

元ドラゴンクエストシリーズディレクター|DQ7|DQ8|DQ9ディレクター|DQ10デ…

藤澤 仁

元ドラゴンクエストシリーズディレクター|DQ7|DQ8|DQ9ディレクター|DQ10ディレクター|DQMJバトルディレクター|DQM3シナリオディレクター|小説『夏の呼吸』|Project:;COLDシリーズ総監督|かがみの特殊少年更生施設|第四境界|物語会社ストーリーノート代表

最近の記事

僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由

みなさん、こんにちは。 さっそくですが、ご報告です。 藤澤の会社──株式会社ストーリーノートが3年半にわたって運営を続けてきた「ロゲットカード」事業は、2024年の2月1日をもって、株式会社ニシムラ精密地形模型に事業譲渡されることになりました。 藤澤はロゲットカードの事業オーナーでしたが、プロデューサーのやまださんが前面に立っていたこともあって、自分の口から何かを語ることはしないようにしてきました。 ですが、今回ばかりは節目です。 事業譲渡に至った経緯やそこにあった想いな

    • 『人の財布』・『ココフォリア版』・『Project:;COLD2.0』 ─蠢動するARG

      去年の10月から、うちの会社は妙に騒がしい。 長年かけて仕込んできた作品のリリースが、この時期にいくつか集中したためだ。 自社オリジナルの体験型絵本『まいごの女の子とトレンディ☆ゴースト』、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(SQUARE ENIX)、Web3.0ゲーム『SYMBIOGENESIS』(SQUARE ENIX)など。 どれか一つだけでも結構な騒ぎなのだが、まったく考えてもみなかった場所から想定外なことが起こった。 それは、2023年10

      • 『面白さ』を巡る冒険

        「グループでシナリオを作るって、どんなことを話し合ってるんですか?」 もしそう思った人がいたとしたら、その感覚は正しいと思います。 だって、不思議に思いますよね。 「物語って作家が一人で作るものでしょ?」 そんなふうに考えている人が、世の中には多いわけですから。 なので、ストーリーノート社内では日々どんな話し合いがされているのか、そんな話を少ししてみたいと思います。 話し合っていることは当然一つではないんですが、無理矢理要約するとすれば……、 「そのシナリオ、本当に

        • 物語制作会社6年目の“現在地”と”これから” ─シナリオスタッフ募集2024

          物語制作会社ストーリーノートは毎年およそ10名の採用を続けていて、スタッフは順調に増え続けています。 ですが、ここしばらく新作の発表ができていません。 最後が『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン』なので、これももう一年近く前になります。 7月末に絵本のオーディオブック『行商猫のクリストフ』を発表しましたが、5周年記念作品として少人数で作ったものなので、これはちょっと例外的なものです。 では、大勢のスタッフを抱えて、ストーリーノートは現在どんな仕事をしてい

        僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由

          物語書きとして、すこし恥ずかしいと思ったこと

          物語づくりを生業として以来、ずっと考えてきたことがあります。 それは、「物語の楽しさって、どうすればもっと気軽に共有できるんだろう」ということです。 たとえば絵描きなら、自作の絵をSNSで披露したり、個展を開いてファンの人に見てもらったり。ミュージシャンなら、Youtubeで新曲を発表したり、コンサートでファンと時間を共有したり。それぞれの道に、それぞれの共有手段が存在します。 「じゃあ、物語だと?」 この答えを、僕はずっと見つけられずにいます。 『物語』というのは、映

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          『悪魔のゲーム』─ファミリーコンピューターの思い出

          40年前の今日に何をしていたのか、僕は明確に覚えている。 僕は平塚の忠実屋まで、予約していたファミリーコンピューターを受け取るために、嬉々として自転車を漕いでいた。 当時ゲーセン少年だった僕は、家でいくらでもテレビゲームが遊べる夢の8ビットマシンの登場に衝撃を受け、その発売を店頭チラシで知ってから、地道にこづかいを貯め続けていたのだ。 貧乏な中学一年生にとって1万4800円(消費税なんてなかった)は目も眩むほどの大金だったが、それが確実に効率の良い投資であることは明らかだっ

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          CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

          2022年8月25日(木)に実施した表題のCEDECセッションについて、Youtubeにて公開可能な運びとなりました。 監督を務めた『Project:;COLD』シリーズが『CEDEC AWARDS 2022』にてゲームデザイン部門の優秀賞をいただいたタイミングでもあり、プロデューサーの平さん(※1)からの強めのプッシュもあり、やるなら今なんだろうと重い腰を上げて、実に9年ぶりの単独講演となりました。 (※1)平さん:株式会社マレの平信一氏。ゲームメディア『電ファミニコゲー

          CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

          グループで物語を創る、ということ ─シナリオスタッフ募集2023

          ストーリーノートの採用の傾向株式会社ストーリーノートは来春で設立5年となり、定期採用も本年度で4回目になります。 過去のエントリー数は以下の通り、年々増加傾向にあります。 2020年度 109名 2021年度 424名 2022年度 506名 ※処理能力の限度に達したため早期受付終了 大勢に志願してもらえるのはありがたいことですが、エントリー数が多くなれば必然採用倍率も厳しくなり、心苦しさも感じます。 採用倍率は年度によって異なりますが、概ね 50~70倍という狭き門です

          グループで物語を創る、ということ ─シナリオスタッフ募集2023

          Project:;COLDとはなんだったのか ─「現実」と「仮想」の中間に生まれた物語

          8年前、ドラクエの仕事を辞めた後、しばらくは好きなことをしていた。 僕はある映像作品のシナリオを執筆していて、長野県の中野市によく足を運んでいた。 作っていたのは、信州中野の伝承である『黒姫伝説』を換骨奪胎した物語だ。 竜と心を通わせる力を持つ黒姫は、その能力を欲した武田晴信の陣営に攫われてしまう。 そして、黒姫を慕う竜の化身である少年が、姫を助けるために佐久の志賀城で大立ち回りする、由緒正しき冒険活劇だ。 自分ではなかなかの出来だと気に入っており、そのシナリオは今もハー

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          追悼 すぎやまこういち先生との思い出

          2021年12月11日。 この日は朝からよく晴れていて、冬空は彼方まできれいに澄み渡っていた。 僕はずいぶん久しぶりに、ドラクエ時代のスタッフと顔を合わせた。 数年ぶりに会った面々を前に、なんだか妙に浮足立ったような気分になって、いつもよりもよくしゃべった気がする。 懐かしさというのはこんなに人を高揚させるのかと、日頃あまり持たない感覚を僕は実感していた。 すぎやま先生のお別れの会を終えたばかりの、築地本願寺前の広場でのことだ。 すぎやま先生と初めてお会いしたのは僕がま

          追悼 すぎやまこういち先生との思い出

          Project:;COLD case.613 その後

          あれから一年2020年11月1日に佐久間ヒカリの自己紹介動画がYoutubeにアップされ、Project;COLDが始動してから一年が経ちました。 https://youtu.be/-kHRWpU3seU 融解班の皆さん、ご無沙汰しております。 総監督の藤澤です。 一周年ということで、その後の展開に注目してくれている皆さんにせめてお礼の言葉だけでもと、この記事を書かせてもらっています。 お祝いのお言葉、誠にありがとうございます。 関係者一同、心より嬉しく思っております

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          いつか物語を描いてみたい君へ ─シナリオスタッフ募集2022

          日本のエンタメのストーリー水準を向上させる 株式会社ストーリーノートの企業理念は、≪日本のエンタメ作品のストーリー水準を向上させる≫です。 この言葉は、もしかすると「いいシナリオを創ろう」というシンプルな号令のように見えるかもしれません。 しかし、真意はちょっと違います。 この言葉には、 私たちは、日本のエンタメ作品のストーリーが世界水準と比して低いことに問題意識を持ち、その解決に正面から立ち向かう。 という意志が込められています。 この理念は、2018年の会社創

          いつか物語を描いてみたい君へ ─シナリオスタッフ募集2022

          <漂流プロジェクト>Project:;COLD case.613を終えて

          端緒2020年の暮れに、50歳になった。 早いもので、ゲーム業界で仕事をするようになって25年近くになる。 ゲームデザイナーやらシナリオライターやらを長く続けていると、実現できずに眠ったままの企画書というのが手元にいくつかあるものだ。 今回の『Project:;COLD』も、そんな眠っていた企画書の一つだった。 そもそもは、昔から付き合いのあったプロデューサーの言葉がきっかけだった。 「収益化は度外視して、みんなが夢中になれるようなコンテンツを作りたい」 一人のゲームデ

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          小説『夏の呼吸』電子書籍版配信開始のおしらせ

          小説『夏の呼吸』の上梓から一年が過ぎ、新たに電子書籍版を配信してもらえることになりました。 『夏の呼吸』 Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B08C7YF6X5/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_ZLwbFbTNCCM4Y それを記念して、通常書籍版の「あとがき」を、期間限定にて公開します。 (「やっていいですか?」と軽い気持ちで聞いたら、そんな簡単なことじゃなかったようで、関係各位にはご迷惑をおかけしました。陳謝) 電

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          やまださんの話

          まだ藤澤がスクエニで予言者育成学園の運営をしていた頃、突然内閣府から会社に電話がかかってきた。 最初はその電話に出られず、自分は何かとんでもない地雷でも踏んだのだろうか、国家権力によって存在ごと消されてしまうのだろうかなどと勝手に盛り上がっていたのだが、次の機会で話ができて事情がわかった。 曰く、予言者育成学園の担当者にお礼を伝えたいとのことだった。 当時出題されていた予言テスト(問題)に、「地方創生ビジネスプランコンテストの大賞を予知する」というのがあって、1万数千人が参

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          藤澤仁の近況報告 いつもお世話になっている皆様へ

          あいさつ自分はめんどくさがり屋な性分なもので、SNSも月に1回くらい、なんの脈絡もなく野球か競馬の話を呟く程度なんですが、自著の出版に伴って、この2週間ほどはたくさんポストしました。 それがどういう心境だったのかというと、なにぶん小説の世界では藤澤のことなど誰も知らないわけで、これはさすがに『自ら知ってもらう努力をせんことにはどうにもならん』という想いの顕れでした。 ご不快に思われた方には、すいません。 もうしばらく続けるかと思うので、なにとぞご寛恕のほど。 とか言いなが

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