藤澤 仁

元ドラゴンクエストシリーズディレクター|DQ7|DQ8|DQ9ディレクター|DQ10デ…

藤澤 仁

元ドラゴンクエストシリーズディレクター|DQ7|DQ8|DQ9ディレクター|DQ10ディレクター|DQMJバトルディレクター|DQM3シナリオディレクター|小説『夏の呼吸』|Project:;COLDシリーズ総監督|かがみの特殊少年更生施設|第四境界|物語会社ストーリーノート代表

記事一覧

『かがみの特殊少年更生施設』が開いた扉─ARGの黎明

この半年の間に、ARG(代替現実ゲーム)プロジェクトを立て続けに公開した。 2023年10月『人の財布』 2024年1~3月『Project:;COLD 2.0 case.674 ALTÆR CARNIVAL』 202…

藤澤 仁
22時間前
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僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由

みなさん、こんにちは。 さっそくですが、ご報告です。 藤澤の会社──株式会社ストーリーノートが3年半にわたって運営を続けてきた「ロゲットカード」事業は、2024年の2…

藤澤 仁
3か月前
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『人の財布』・『ココフォリア版』・『Project:;COLD2.0』 ─蠢動するARG

去年の10月から、うちの会社は妙に騒がしい。 長年かけて仕込んできた作品のリリースが、この時期にいくつか集中したためだ。 自社オリジナルの体験型絵本『まいごの女の…

藤澤 仁
3か月前
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『面白さ』を巡る冒険

「グループでシナリオを作るって、どんなことを話し合ってるんですか?」 もしそう思った人がいたとしたら、その感覚は正しいと思います。 だって、不思議に思いますよね…

藤澤 仁
6か月前
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物語制作会社6年目の“現在地”と”これから” ─シナリオスタッフ募集2024

物語制作会社ストーリーノートは毎年およそ10名の採用を続けていて、スタッフは順調に増え続けています。 ですが、ここしばらく新作の発表ができていません。 最後が『ド…

藤澤 仁
9か月前
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物語書きとして、すこし恥ずかしいと思ったこと

物語づくりを生業として以来、ずっと考えてきたことがあります。 それは、「物語の楽しさって、どうすればもっと気軽に共有できるんだろう」ということです。 たとえば絵…

藤澤 仁
9か月前
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『悪魔のゲーム』─ファミリーコンピューターの思い出

40年前の今日に何をしていたのか、僕は明確に覚えている。 僕は平塚の忠実屋まで、予約していたファミリーコンピューターを受け取るために、嬉々として自転車を漕いでいた…

藤澤 仁
9か月前
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CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

2022年8月25日(木)に実施した表題のCEDECセッションについて、Youtubeにて公開可能な運びとなりました。 監督を務めた『Project:;COLD』シリーズが『CEDEC AWARDS 2022…

藤澤 仁
1年前
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グループで物語を創る、ということ ─シナリオスタッフ募集2023

ストーリーノートの採用の傾向株式会社ストーリーノートは来春で設立5年となり、定期採用も本年度で4回目になります。 過去のエントリー数は以下の通り、年々増加傾向にあ…

藤澤 仁
1年前
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Project:;COLDとはなんだったのか ─「現実」と「仮想」の中間に生まれた物語

8年前、ドラクエの仕事を辞めた後、しばらくは好きなことをしていた。 僕はある映像作品のシナリオを執筆していて、長野県の中野市によく足を運んでいた。 作っていたのは…

藤澤 仁
2年前
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追悼 すぎやまこういち先生との思い出

2021年12月11日。 この日は朝からよく晴れていて、冬空は彼方まできれいに澄み渡っていた。 僕はずいぶん久しぶりに、ドラクエ時代のスタッフと顔を合わせた。 数年ぶりに…

藤澤 仁
2年前
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Project:;COLD case.613 その後

あれから一年2020年11月1日に佐久間ヒカリの自己紹介動画がYoutubeにアップされ、Project;COLDが始動してから一年が経ちました。 https://youtu.be/-kHRWpU3seU 融解班の…

藤澤 仁
2年前
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いつか物語を描いてみたい君へ ─シナリオスタッフ募集2022

日本のエンタメのストーリー水準を向上させる 株式会社ストーリーノートの企業理念は、≪日本のエンタメ作品のストーリー水準を向上させる≫です。 この言葉は、もしかす…

藤澤 仁
2年前
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<漂流プロジェクト>Project:;COLD case.613を終えて

端緒2020年の暮れに、50歳になった。 早いもので、ゲーム業界で仕事をするようになって25年近くになる。 ゲームデザイナーやらシナリオライターやらを長く続けていると、…

藤澤 仁
3年前
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小説『夏の呼吸』電子書籍版配信開始のおしらせ

小説『夏の呼吸』の上梓から一年が過ぎ、新たに電子書籍版を配信してもらえることになりました。 『夏の呼吸』 Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B08C7YF6X5/ref=cm_

藤澤 仁
3年前
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やまださんの話

まだ藤澤がスクエニで予言者育成学園の運営をしていた頃、突然内閣府から会社に電話がかかってきた。 最初はその電話に出られず、自分は何かとんでもない地雷でも踏んだの…

藤澤 仁
3年前
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『かがみの特殊少年更生施設』が開いた扉─ARGの黎明

『かがみの特殊少年更生施設』が開いた扉─ARGの黎明

この半年の間に、ARG(代替現実ゲーム)プロジェクトを立て続けに公開した。

2023年10月『人の財布』

2024年1~3月『Project:;COLD 2.0 case.674 ALTÆR CARNIVAL』

2024年4月『かがみの特殊少年更生施設』

作品と呼ぶほどでもないが、ストーリーノート入社希望者に配布した資料の中にも、小さな物語を潜ませた一冊のノートを入れた。そんなわけで、気づ

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僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由

僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由

みなさん、こんにちは。
さっそくですが、ご報告です。

藤澤の会社──株式会社ストーリーノートが3年半にわたって運営を続けてきた「ロゲットカード」事業は、2024年の2月1日をもって、株式会社ニシムラ精密地形模型に事業譲渡されることになりました。

藤澤はロゲットカードの事業オーナーでしたが、プロデューサーのやまださんが前面に立っていたこともあって、自分の口から何かを語ることはしないようにしてきま

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『人の財布』・『ココフォリア版』・『Project:;COLD2.0』 ─蠢動するARG

『人の財布』・『ココフォリア版』・『Project:;COLD2.0』 ─蠢動するARG

去年の10月から、うちの会社は妙に騒がしい。
長年かけて仕込んできた作品のリリースが、この時期にいくつか集中したためだ。

自社オリジナルの体験型絵本『まいごの女の子とトレンディ☆ゴースト』、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(SQUARE ENIX)、Web3.0ゲーム『SYMBIOGENESIS』(SQUARE ENIX)など。
どれか一つだけでも結構な騒ぎなのだが、ま

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『面白さ』を巡る冒険

『面白さ』を巡る冒険

「グループでシナリオを作るって、どんなことを話し合ってるんですか?」

もしそう思った人がいたとしたら、その感覚は正しいと思います。
だって、不思議に思いますよね。

「物語って作家が一人で作るものでしょ?」

そんなふうに考えている人が、世の中には多いわけですから。

なので、ストーリーノート社内では日々どんな話し合いがされているのか、そんな話を少ししてみたいと思います。
話し合っていることは当

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物語制作会社6年目の“現在地”と”これから” ─シナリオスタッフ募集2024

物語制作会社6年目の“現在地”と”これから” ─シナリオスタッフ募集2024

物語制作会社ストーリーノートは毎年およそ10名の採用を続けていて、スタッフは順調に増え続けています。

ですが、ここしばらく新作の発表ができていません。
最後が『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン』なので、これももう一年近く前になります。

7月末に絵本のオーディオブック『行商猫のクリストフ』を発表しましたが、5周年記念作品として少人数で作ったものなので、これはちょっと例外的なもの

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物語書きとして、すこし恥ずかしいと思ったこと

物語書きとして、すこし恥ずかしいと思ったこと

物語づくりを生業として以来、ずっと考えてきたことがあります。
それは、「物語の楽しさって、どうすればもっと気軽に共有できるんだろう」ということです。

たとえば絵描きなら、自作の絵をSNSで披露したり、個展を開いてファンの人に見てもらったり。ミュージシャンなら、Youtubeで新曲を発表したり、コンサートでファンと時間を共有したり。それぞれの道に、それぞれの共有手段が存在します。

「じゃあ、物語

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『悪魔のゲーム』─ファミリーコンピューターの思い出

『悪魔のゲーム』─ファミリーコンピューターの思い出

40年前の今日に何をしていたのか、僕は明確に覚えている。
僕は平塚の忠実屋まで、予約していたファミリーコンピューターを受け取るために、嬉々として自転車を漕いでいた。

当時ゲーセン少年だった僕は、家でいくらでもテレビゲームが遊べる夢の8ビットマシンの登場に衝撃を受け、その発売を店頭チラシで知ってから、地道にこづかいを貯め続けていたのだ。
貧乏な中学一年生にとって1万4800円(消費税なんてなかった

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CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

2022年8月25日(木)に実施した表題のCEDECセッションについて、Youtubeにて公開可能な運びとなりました。

監督を務めた『Project:;COLD』シリーズが『CEDEC AWARDS 2022』にてゲームデザイン部門の優秀賞をいただいたタイミングでもあり、プロデューサーの平さん(※1)からの強めのプッシュもあり、やるなら今なんだろうと重い腰を上げて、実に9年ぶりの単独講演となりま

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グループで物語を創る、ということ ─シナリオスタッフ募集2023

グループで物語を創る、ということ ─シナリオスタッフ募集2023

ストーリーノートの採用の傾向株式会社ストーリーノートは来春で設立5年となり、定期採用も本年度で4回目になります。
過去のエントリー数は以下の通り、年々増加傾向にあります。

2020年度 109名
2021年度 424名
2022年度 506名 ※処理能力の限度に達したため早期受付終了

大勢に志願してもらえるのはありがたいことですが、エントリー数が多くなれば必然採用倍率も厳しくなり、心苦しさも感

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Project:;COLDとはなんだったのか ─「現実」と「仮想」の中間に生まれた物語

Project:;COLDとはなんだったのか ─「現実」と「仮想」の中間に生まれた物語

8年前、ドラクエの仕事を辞めた後、しばらくは好きなことをしていた。

僕はある映像作品のシナリオを執筆していて、長野県の中野市によく足を運んでいた。
作っていたのは、信州中野の伝承である『黒姫伝説』を換骨奪胎した物語だ。
竜と心を通わせる力を持つ黒姫は、その能力を欲した武田晴信の陣営に攫われてしまう。
そして、黒姫を慕う竜の化身である少年が、姫を助けるために佐久の志賀城で大立ち回りする、由緒正しき

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追悼 すぎやまこういち先生との思い出

追悼 すぎやまこういち先生との思い出

2021年12月11日。
この日は朝からよく晴れていて、冬空は彼方まできれいに澄み渡っていた。

僕はずいぶん久しぶりに、ドラクエ時代のスタッフと顔を合わせた。
数年ぶりに会った面々を前に、なんだか妙に浮足立ったような気分になって、いつもよりもよくしゃべった気がする。
懐かしさというのはこんなに人を高揚させるのかと、日頃あまり持たない感覚を僕は実感していた。

すぎやま先生のお別れの会を終えたばか

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Project:;COLD case.613 その後

Project:;COLD case.613 その後

あれから一年2020年11月1日に佐久間ヒカリの自己紹介動画がYoutubeにアップされ、Project;COLDが始動してから一年が経ちました。

https://youtu.be/-kHRWpU3seU

融解班の皆さん、ご無沙汰しております。
総監督の藤澤です。

一周年ということで、その後の展開に注目してくれている皆さんにせめてお礼の言葉だけでもと、この記事を書かせてもらっています。

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いつか物語を描いてみたい君へ ─シナリオスタッフ募集2022

いつか物語を描いてみたい君へ ─シナリオスタッフ募集2022

日本のエンタメのストーリー水準を向上させる
株式会社ストーリーノートの企業理念は、≪日本のエンタメ作品のストーリー水準を向上させる≫です。

この言葉は、もしかすると「いいシナリオを創ろう」というシンプルな号令のように見えるかもしれません。

しかし、真意はちょっと違います。

この言葉には、

私たちは、日本のエンタメ作品のストーリーが世界水準と比して低いことに問題意識を持ち、その解決に正面から

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<漂流プロジェクト>Project:;COLD case.613を終えて

<漂流プロジェクト>Project:;COLD case.613を終えて

端緒2020年の暮れに、50歳になった。
早いもので、ゲーム業界で仕事をするようになって25年近くになる。

ゲームデザイナーやらシナリオライターやらを長く続けていると、実現できずに眠ったままの企画書というのが手元にいくつかあるものだ。
今回の『Project:;COLD』も、そんな眠っていた企画書の一つだった。

そもそもは、昔から付き合いのあったプロデューサーの言葉がきっかけだった。
「収益化

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小説『夏の呼吸』電子書籍版配信開始のおしらせ

小説『夏の呼吸』電子書籍版配信開始のおしらせ

小説『夏の呼吸』の上梓から一年が過ぎ、新たに電子書籍版を配信してもらえることになりました。

『夏の呼吸』 Kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B08C7YF6X5/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_ZLwbFbTNCCM4Y

それを記念して、通常書籍版の「あとがき」を、期間限定にて公開します。
(「やっていいですか?」と軽い気持ちで聞いたら、そん

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やまださんの話

やまださんの話

まだ藤澤がスクエニで予言者育成学園の運営をしていた頃、突然内閣府から会社に電話がかかってきた。
最初はその電話に出られず、自分は何かとんでもない地雷でも踏んだのだろうか、国家権力によって存在ごと消されてしまうのだろうかなどと勝手に盛り上がっていたのだが、次の機会で話ができて事情がわかった。

曰く、予言者育成学園の担当者にお礼を伝えたいとのことだった。
当時出題されていた予言テスト(問題)に、「地

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