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精密電子天秤のまえにすすみ呼吸をととのえてからくすりをおもむろにはかりとると実験がうまくいく


はじめに

 しごとのできのよしあし。これはそのときの気分や気のもちように左右される。すくなくともわたしの場合はそう。研究パートのしごとで実験がうまくいかないときは気分一新しようとまずは実験室の掃除から。整理して掃き清める。まるで神社の境内の掃除をするかのようなおももちで。

誤解なきように記すがここはれっきとした科学の研究室。失笑をまねくかもしれないがそこには人知をこえてやはり運をまねく要素が満ちているとかんじることがある。

きょうはそんな話。

しごと場にむかう

 夜明けまえのキャンパス内はまだほとんどあかりのともるところはない。しずまりかえっている。くるまをおりてむかう建物のフロアの一角だけがまわりにあかるさを放っている。

おとなりの研究室の先生は6時まえというのにガラス器具のすれあう音がする。なにかこれから合成されるのかもしれない。物音から判断するとすでに試薬を器具に仕込んで反応の準備をはじめていらっしゃるようす。いったい何時にいらしたのだろう。

いつものこととはいえストイックなおしごとにいつも敬服の念をいだく。わたしがさきになるのは年に数回あるかないか。

エレベーターを最上階まであがりしごと場へ。金曜日の早朝、まず実験室を解錠すると換気をしつつ掃除から。しごと場を掃き清めるかんじ。これで気分がずいぶんちがう。くるまの運転でこりかたまったからだを掃除でほぐす準備運動のかわりもかねている。

作業のまえに

 こうした日常のなにげない作業やありふれた行動でふと気分をかえられる。意外とこのタイミングでアイデアがうかぶもの。日々くりかえしてからだはそのうごきに慣れている。

しぜんにうごけばいいし、考えずともさきへすすむ。うごきとはおかまいなくあたまはめぐる。きょうすべきことを反芻しつつも、ここをかえてみようかとか、やっぱりこちらからとり組もうかとか。すでにきょうの結果におうじてどうするかについて、さきのほうへと思考がすすみがち。

コーヒーを淹れたり、秋の風情をキャンパス内の木々の葉の色の変化のようすからうかがいに向かうのもそう。はたからみるとぶらぶら休んでいるかのように見えるにちがいない。これもしごとの一環。心身に余裕がないといいアイデアは浮かんでこないのはたしか。

ふとしたことから

 たいていとっぴでユニークな発想はこうした日常のちょっとしたうごきや雑談のなかで生まれやすいと思う。わたしは寝入りばなとかトイレにむかうときが多い。そこから研究に着手して学会発表や論文発表にこぎつけ、テーマを開拓し課題の打開へつながる。

パートしごととはいえ、基本的に自由にうごいてくださいといわれている。この10月にはある程度あらたな研究の方向性を提示していただく。それにむけた話し合いやゼミがはじまる。

おわりに

 学生さんたちにこうした発想へつながる快適な場のつくりかたやとりくみ方などについてよく話す。

大学院生になるとほぼアイデアをおたがいに出しあうようになり、議論をつうじて研究の内容を深めていく。いずれひとりだちしていけるようにこうした場はかならず必要。これはむかしからあまりかわらない。



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