見出し画像

2023年4月にぼくを復興させた本2選

4月はルネサンス関連本だけでも10冊ぐらい読んでいた。

政治、経済、思想にはじまる全方位的な百家争鳴の熱気と、その下でほとばしる学芸の創造性とに当てられて、自分自身、暗黒の時代(3月)を一挙に抜け出て様々なモチベーションが復活してきたのであった。

①『ルネサンス (ヨーロッパ史入門)』ピーター・バーク(岩波書店)

20世紀以降のルネサンス研究をバランスよく通覧し、性急さと偏りを排したルネサンス史観を入門書に落とし込んだ優れモノ。歴史(学)そのものへの怜悧で抑制された、しかし愛情あふれる眼差しが全編に染み渡る。

ルネサンス入門の最終防衛戦。

②『イタリア・ルネサンス絵画』ジャン・リュデル(文庫クセジュ)

絵画史を基軸としながら、複雑怪奇に絡まったかの時代の文化運動の諸相を経済史、思想史等とうまく交流しながら整然と規整していく。概説書をたくさん読んだ後でさえ全くもって初見の人名連発で目がクラクラするほどに、ノリで読むには専門性は高いが、それ以上に歴史の特異点たるルネサンス芸術、その精神性のダイナミズムに酔いしれる。

ジョットによる<再生>は古典復興ではなく蛮族からのローマ<奪還>だ(ギベルティ『コンメンターリ』)という話でまずボカンと殴られ、自然遠近法から一点透視図法への移行やプラン分割を支える深い深い思想性の描出に脳汁がピャーと出る。

なぜ絵画がこの時代に初めて、単なる塗装から学問や詩のような存在へと変貌したのか。現代まで続く芸術としての絵画の道行きは、本書を紐解くことで明らかになろう。


今月は以上。

先月の◯選


頂いたサポートは、今後紹介する本の購入代金と、記事作成のやる気のガソリンとして使わせていただきます。