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夏休みの宿題 - 論文編

例年卒業論文の締め切りは7月末であったところ、今年はコロナの影響で9月末に延期となった。家庭の事情等も重なり数か月放置していて難しいと思っていたところ、ラッキーなことに延期になったので今期中に間に合うかもという状態になった。もし全て順調にいけば今年の6月に遡って卒業したことになる。

卒業論文ドラフト110ページ、パワポ60ページを教授に提出した。夏休みの宿題を最後の日に間に合わせた感じでとても清々しい。

実はまだ道のりは長く、オーラルディフェンス、教授の指摘からの修正、製本して図書館に登録するための作業等、それぞれ締切があり、9月末までにそれも間に合うかの勝負なのだが、とりあえずいくつかある山のうちの最大の山は超えたかもというところ。

なので、一瞬一息ついて、誰かの見本にはならなくとも参考にはなるかもということで、簡単に記録に残しておく。

台湾大学GMBAの卒業論文

言語:英語
論文形式:①学術論文、②事業計画(ビジネスプラン)、③ケーススタディ、のどれかを選ぶ。あるアドバイザーはMBAだからこそ事業計画をお勧めしてる。ケーススタディは進めていくうちに該当企業からの機密情報を含む詳細が入手困難で頓挫してしまうことがあるためお勧めしていなかった。

担当教授(アドバイザー)を決める時期:卒業予定学期の前学期(4学期目で卒業するなら3学期目)。遅くとも卒業学期の第1~2週くらいまで。担当教授になっても手当はほぼつかずボランティアに近いためあまりにも早い時期にアドバイザーとして依頼をすると嫌がられる傾向にある。

担当教授の決め方:まず自分がやりたいトピックを作ってから、トピックに適切な教授と面談をする。①オフィスの卒論担当者にお勧め教授を聞く。②卒論ワークショップでアドバイスもらえる。③最初に話した教授が自分より適任者がいると感じた場合は他の人を紹介してもらえる。④授業等で知り合った教授に相談する。など考えられる。

担当教授との面談:引受可否の面談で可能となった場合、アドバイザーアグリーメントをもらう。通常月に1~2回ペースで進捗報告したりアドバイスなど貰う面談をする。忙しい教授ほど連絡も繋がらないし放置されるのでなるべく余裕がある教授がよい。

卒業申請:学校にシステムから登録、オフィス卒論担当者への書類提出等、結構あるので確認。

卒論期日:通常その学期毎の末日までにオーラルディフェンス(口答試問、プレゼン)を終えること。論文はオーラルディフェンスの少なくとも2週間前にドラフトを提出。毎学期卒業のタイミングがある。

論文分量:論文本体は70~80ページに収めてくる学生が多いが、少ない場合30+ページくらい、多い場合160ページくらい書く学生もいる。論文本体とは別にオーラルディフェンス用のパワーポイントを用意する。パワポ本体はせいぜい15ページ程度、残りはAppendixとして添える。注意点は量より質であると釘をさされる。ドラフト論文+パワポは論文審査委員会の人数分を印刷して教授のオフィスのポストに投稿する。

オリジナリティチェック:ソフトで論文の内容に盗用がないか等、チェックする。適切な引用であれば問題なし。スコアが低いほどそのままの引用が少なく、合格となる。15%以下なら問題ない。

論文審査委員会:オーラルディフェンスの審査を行う3~5人程度の教授陣。アドバイザー以外も自分で探してくるパターンもあるようだが、アドバイザーが適任者を連れてくるパターンもある。

オーラルディフェンス:プレゼン時間は20分。質疑応答は最短10分(場合によってはかなり長くなることもあるよう)。通常は第二管理学院の会議室で行うが、オンライン実地もある。終了後、学生は一旦会議室を出て審査委員会がその場で成績をつける。合格の場合、修正箇所を指摘される。予想以上に多い事務作業が待っているらしい。オーラルディフェンスから修了証受け取りまで1ヶ月以上かかることもある。

軽食の用意:オンサイトの場合は慣習として学生が教授に軽食を用意する。(実際はいらないと思っている教授も多いらしい)当たり前だがオンラインの場合は軽食を用意する必要がない。サンドイッチとドリンクとかが無難かも。予算や内容、当日のロジスティクス、プランBも事前に検討しておく。

ここからは同級生に聞いた覚書。
論文の修正:審査委員会からのフィードバックを受けて論文に修正を加える。フォーマットや英文、内容が論文にふさわしいかチェックが入る。修正後改めてオリジナリティチェック。フォーマットはかなり厳しく細かい。Wordの論文でしか使わないであろう機能を習得するために時間を費やす。

大学図書館に提出:上記が終わったらまずはオンラインで台湾大学図書館に提出する。署名用の文書がくるので処理。図書館マニュアル数十ページを読むことになる。

審査委員会からのサイン:チェック後、オフィス論文担当者が委員会のサインをもらってくるので次の最終段階に進める。

1.Thesisと審査委員会のサインページをUSBに入れて図書館に持参し3部製本化 1時間くらい
2. 製本2部と署名した紙を図書館に提出
3.製本1部をGMBAオフィスに提出。額縁入りの写真をもらう
4.署名した紙をIOAオフィスに提出
5.修了証書を事務局で受け取り、学生証を無効化

論文、僕の場合

悪い見本なので反面教師としての参考になるかもしれませんが、僕の場合を簡単に記載します。

形式

学術論文でもケーススタディでもなく、ビジネスプランにしました。
トピックを決めるとき①社会の問題点を解決すること、②身近な誰かの役に立つ内容であること、③今ないもしくは新しい提案をすることを意識しました。

多くの学生は現職と関係あることをトピックにしますが、僕は現職とは一切関係ないトピックにしました。これは現職と関連のあるトピックのほうが効率の観点では賢いと思います。クオリティも高く完成までの期間も短くすみます。

効率重視でサクッと終わらせてもよいし、せっかくなので未経験分野を開拓できる機会と割り切ってこだわってみるのもアリかと思います。

担当教授(アドバイザー)の選定

管理学院のフルタイムの教授のサインが必要ですが、管理学院以外の教授、客員教授をアドバイザーにすることもできます。当初、僕の場合は台湾大学アートセンターのDirectorでGMBAでも文化クリエイティブ産業を教えている教授をメインアドバイザーとして、Co-advisorとしてGMBAのDirectorに書類のサインをお願いしました。

ところが、今学期が始まって数回の面談を重ねたものの、4月にアートセンターの教授の諸事情によりアドバイザーを継続できなくなったと連絡がありました。アートセンター教授はGMBAから今期3名の学生を受け持っていましたが、皆別の教授に変更を余儀なくされました。

僕の場合は、GMBAのDirectorに当初の書類にサインだけでなく、メインのアドバイザーとしてお願いすることになりましたが、当然GMBAのDirectorは多忙を極めているので面談を重ねてアドバイスをもらうことは難しく、「ドラフトが完成したらもってきて」という感じになりました。いろいろと仕方ないですが、これもどこに向かえばいいかわからない迷宮に入り込んでしまった感はありました。

こういったことからも短期決戦で締め切りより前に巻きで進めたほうがいいです。

内容

内容を簡潔にいうと、主に財務ソリューションを主軸に台湾人向けに日本の不動産を売るビジネスです。台湾の不動産は高いのでリーズナブル且つ投資効率よく、品質も一定水準確保された日本の不動産をプロモートすることです。

社会問題

台湾の不動産は日本より高いです。直近の年間住宅取引金額で比べると日本がUS$330億、台湾がUS$800億と小さな台湾が日本の2-3倍。

世界の統計をみても不動産オーナーにとって台湾不動産は世界で最悪な選択肢のひとつであることがわかります。

2020年の台北市の住宅販売実績の平均価格はUS$87万(ザックリ1億円)でした。中古の流通が多いので新築に限定すると普通に3億円とかします。

台湾の年収中央値がUS$18,000程度なので年収の約50倍の価格です。普通の台湾人では台湾に家を買えません。ちなみに日本やアメリカでは住宅を買う目安は年収の5倍までと言われています。

「家を買わないと結婚できない」という古いメンツ文化が一部まだ残っており、これが一つの原因となり婚姻率の低下、出生率の低下と負のスパイラルを形成しています。

一方、日本をみると住宅価格は東京でさえもお手頃ではあるものの、少子高齢化で物件の買い手、借り手が少なくなっています。住宅を売りたくともなかなか買い手がつかない状況。

社会問題を解決

  • 家を買いたくても高すぎて買えない台湾人に日本のリーズナブルな住宅を提供。

  • 家を所有しているという社会的ステータスを台湾人に提供し、間接的に結婚のハードルを下げ、台湾の少子化対策にも貢献する。

  • 言語の壁、文化の壁、地理的な距離、レギュレーション、財務的な問題を解決。

  • 台湾の買い手、日本の売り手を結び付けWin-Win-Win、3方よしをつくる。

  • 台湾からの留学生、移民を促進した街づくり戦略を仕掛けることで、東京だけでなく日本の地方都市の過疎化問題を解決。

財務

競合との差別化を図る肝となる部分なので簡単に。与信と財務モデリングと新金融サービスの融合、金融機関とのコネクションを活用するので誰にでもできるものではなく、参入障壁は低くない、ということにする。

問題点は、親が統計局員、兄弟が会計士なのに僕自身は数字にめっぽう弱く、論文が頓挫しそうになったことだ(笑)

インタビュー

業界関係者等インタビューは多めにこなした。
①台湾中堅不動産会社のフランチャイズオーナー
②GMBAの台湾大手銀行員
③GMBAの学生で近いトピックとして新金融サービスについて論文を書いた金融出身者
④海外不動産を専門にしている日本企業
⑤日本法人と台湾法人を持つ不動産会社の創業者兼会長
⑥ベンチャーキャピタリスト
⑦GMBAの日本の不動産を所有・運用している台湾系アメリカ人

内容は省略するが、めっちゃ参考になって、実行可能だと判断。

ポテンシャル消費者調査

匿名アンケート形式で、MBAコミュニティーから58件と台湾人親コミュニティーから39件、合計97件の回答を入手。MBAコミュニティーは投資家比率が高く、ほぼ投資家目線でのデータ入手に成功。親コミュニティーは台北住まいの結婚して子供がいることもあり台湾中央値よりも若干裕福感はあるが一般台湾人顧客層のニーズを理解することができた。
言語は英語、中国語、日本語の3言語用意した。

論文の分量

上記でも示したように、卒業論文ドラフト110ページ(18,000語)、パワポ60ページとなった。卒論本文は70ページくらいで他は索引とAppendixにした。量的には多いほうではあるが、間違いなく重要なのは量より質である。プレゼン時間が20分と限られているのでパワポのメインは15ページ前後が最大で、教授からの質疑応答に瞬時に答えられるように残りはAppendixにいれる。僕の論文は質的にはたいしたことないし、自己満足を追求したに過ぎない。

どちらからやらないといけない決まりはないが、僕はインタビューを優先に進めたので、インタビュー相手に事業を説明できるようにパワポから作っていった。当初全て英語で作成していたが、日本人にもインタビューしたので日本語バージョンも作った。

オリジナリティチェックは1%だった。他からまったく引用していない。1%にあたったのは最初の定型フォーマットの部分だけであった。引用は15%までなら合格。たまたまこのシステムにログインがシステム障害で1日できず困ったりした。

お気づきの方もいるかと思うが、僕の文章はあっちに飛んだりこっちに飛んだり冗長だ。そして小泉式にトートロジー的な話法も多い。だけど特に英文では言い換えの繰り返しは重要な手法かと思う。「これはxxxであって、別の言い方をすると〇〇〇である」はよく使う。第二言語で伝えたいことを明確にするのに有効な手法だ。分量で進まなく困っている場合は言い換えを多用することをお勧めする。

今年に入って本業で間違いなく1,000ページ以上はパワポ作成した(以前はほとんど作らず今年は特別) 。競合他社に日本人がいなくなったため、営業してないのに入ってくる案件が増えた。会社にはリソースが多いので、英語とか中国語だったものを日本語に翻訳して顧客用にカスタマイズするだけなのでたいした作業ではない。

それに比べ自分でゼロから作った卒論の方がしんどかった。家庭の事情で論文に手を付けない数か月のインターバルが空いてしまい、この8月は死ぬ気で夜な夜な頑張った。マジきつかった。。。コンスタントにやったほうがいいです。

背景

実は学部新卒は不動産業界だった。
近い将来、東京と千葉の不動産をいくつか相続することになる。
台湾以外であれば、まずは生まれ育った東京と祖父母の千葉にも貢献したい。他の地方都市だったり他の国は最初の事業が成功すれば拡張は容易である。単純に海外不動産投資だとタイを魅力的に感じるが、まずは自分の強みを生かせる母国を対象に選んだ。

客観的にみて僕は長生きするタイプではないので、僕が亡くなった場合でも家族が生活できる基盤を作りたい。嫁が6年間は専業主婦と子育てに専念するが、その後のキャリアは不透明。買い手が台湾人の商売であれば日本語流暢な嫁を社長にしやすい。嫁育てるぞ!と意気込んていたところ、「なにそれ、私そんなのやりたくないよ」と言われる。。。

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