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はじめに

 本書は、リーダーシップのテクニックなどを述べた、いわゆるノウハウ本ではありません。
管理職やリーダーに必要な〝在り方〟という、リーダーにとっては終わりなき探求テーマを扱っています。
そうした意味で本書は「探求本」と言えるものです。

 思えば私のリーダーシップ探求の旅の始まりは、今から30年以上も前の大学生時代に遡ります。
当時私は部活の主将(キャプテン)を拝命し、学生の部活とはいえ60人ものメンバーを束ねる責任重大な役目を担いました。
リーダーシップなど何もわからない私は、四苦八苦しながら悩み多き1年を過ごすことになりました。
 その後、大学を卒業して会社員を経て27歳で独立。
部下ができると、今度はリーダーシップやマネジメントについて悩み、書籍を頼りに勉強しつつ、我流で何とか対処しながら10年が経過しました。
 40歳のときに人生の転期が訪れ、その後本格的に人材開発・育成について学ぶ機会を得て、実践経験を積んで13年の年月が過ぎました。

 現在は「リーダーシップ」と「全員活躍チーム作り」に関わるテーマを専門に仕事をしています。
また、本書を執筆している段階(2018年12月)では、自社の代表以外に別法人の理事やいくつかの私的な勉強会の世話役もボランティアで務めさせていただいています。
 報酬の有無に関わらず、組織で物事を進める際にリーダーシップの重要性を身に染みて感じ、深く考えさせられ、実践探求する立場に身を置いています。
 実際、多くの企業や組織では、
「どうしたらメンバーたちの主体性や自発性、モチベーションを引き出すことができるのか?」
「どうしたらチームとしてまとまることができるのか?」
とリーダーシップやチームに関する悩みを抱えておられることが多く、答えを見出せないまま何年も時が経過している様を見かけます。

 職場におけるリーダーシップの発揮、さらにはそれが必須となる「チームを機能させる」というテーマは、対象が人やその心・関係性となるため、大変見えにくく複雑で、また奥が深く、全人的な関わり・人間力が求められます。

 単に知識や理論だけでは現場に変革を生み出すことはできません。
人の感情にも目を向け、リーダー自らが実践し、探求し続けることでチームも成長していきます。
知識やテクニックだけでなく、それらを支えるマインド(心)や考え方、つまりリーダーの〝在り方〟が問われるのです。

 企業支援に携わる中で、私は主として「外部リーダー」的な存在・役割として、実践者の立場でクライアント企業のチームの支援に入ります。
また、時に管理職のリーダーシップ開発の研修などでは講師として受講者の前に立ちます。
「リーダーは実際のケースでは、どう対処すれば良いのか?」
「その際の振る舞いは、どのような考え、どのようなマインドからくるのか?」
といった深いところまで踏み込んだ話が必要となってきます。
ですから、お客様からは「先生」と呼ばれることが多い中で、私は自分をむしろリーダーやメンバー、受講者のみなさんとともに考え「探求する」パートナーであると考えています。
そして、その探求には〝誠実さ〟や〝謙虚さ〟 そして〝協働〟〝長い年月〟が必要であり、「リーダーシップの探究にゴールはない」と再確認し続ける今日この頃です。

 本書は、私がこれまで得てきた海外の人材育成・組織開発の知見に加え、先人リーダーや師からの学び、そして、実践を通して得た知見や体験・持論を踏まえて、リーダーの〝在り方〟を高め、それを磨いていくことの重要性や大切なポイントなどをまとめたものになります。
 本書はビジネス書ではありますが、とくに最後の章を中心にところどころ歴史上の偉人・リーダーの話を扱っています。
これは、歴史に名を残した数々の日本のリーダーの中でも、とくに「公・無私」の精神で人を活かし、強い組織を作った人物たちからの学びが、仕事でも大変役に立つことが多かったからです。
 人の多様性を尊重し、互いに一致協力し、社会貢献することがますます問われるこれからの時代において、これらの実例は大変勇気をもらえ、また探求するにふさわしいものと感じたからです。
 この先人・偉人からの学びを自分のものとする探求の場「志雲会」を創設し、導いてくださった、学生時代から続く私の30年来の恩師・有馬正能先生には、80歳を超えられても今なおその背中でリーダーの〝在り方〟を示し、ご教授いただいており、感謝の念に堪えません。

 今後ますます仕事と人生の切り分けを超えて統合されていくであろう「豊かな人生」のために、多くの人が古今東西を問わず人類の叡知から学ばれんことを強く願います。
そして、真のリーダーを目指す方々に重ねてお伝えしたいのは、「リーダーの〝在り方〟の探求と研鑽には時間がかかる」ということです。
ですから、もし本書を読んで何かしらの学びや気づきがありましたら、できるだけ早く実践していただきたいと思っています。
できれば今日すぐにでも「何から取り組むことができるか」を考え、実践・探究・継続していただくことが本望です。
 本書が、多くの企業や組織の最前線で悩み、試行錯誤している管理職や幹部・リーダー層の方々にとって、これからの未来を照らす一条の光となることを願っています。

 2018年12月吉日 小笠原健

〈本書をお読みいただく際のご注意〉
文中の「管理職」「リーダー」「上司」、また「部下」「メンバー」はそれぞれほぼ同義語として用いています。

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