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ウズベキスタンの伝統文化といえばミニアチュール(細密画)。実際に教わって気づいた魅力

私は海外協力隊で1年2ヶ月ウズベキスタンにいたが、PCインストラクターの活動の合間をぬって、職人さんの元に通い伝統文化を教わっていた。ミニアチュールという、細い筆で絵を描くものだ。

今回はミニアチュールとは何なのか、実際に職人さんが描くアトリエで見たことをまとめてみた。知っている人もなかなかいないと思うし。(そもそもウズベキスタンってどこやねん!という方は、わかりやすくまとめられているこの記事をご覧ください)

すごく専門的で、魅力を伝えられるか心配だけど、写真も多めなので、もしよければお付き合いください。

(教わるきっかけや、職人さんとの出会いについては昨日のnoteをご覧ください)

ミニアチュールの概要

ミニアチュール(細密画)は歴史が古く、500年前からあったと言われている。下に出てくるが、実はウズベキスタンの伝統文化で最も重要な分野。

漢字では細密画と表現され、イスラム圏の書物の挿絵などに使われている、非常に細かく描かれた絵のことを指している多分だけど、日本の鳥獣人物戯画みたいな感じだと思う。この本に詳しく書かれていた。


細密画のマスターとなるには随分と厳しい審査をパスしなければなりません。殆どのマスターはその実家が昔から細密画を描く家で、子供の頃からその家に伝わる細密画の手法を学び、受け継いでいるとのことです。極々細い筆で髪の毛や髭の一本一本を描いています。題材は幅広く、歴史、文学、生活のすべてが対象で、お酒を酌み交わす宴の場面、音楽を奏でる人々、駱駝と一緒の旅模様などは最もポピュラーな題材です。(中略)それぞれの絵には独特の美しい幾何学模様が何処かに描かれ、描き込まれた幾何学模様でどの地方の作家が描いたものか分かります。細密画は伝統芸術の最も重要な分野ですので、古い細密画の研究や貴重な細密画の保存も細々とですが行われています。(後略)

私がお世話になった職人さんたちは、みんなおしゃべりしながら楽しそうに仕事してたけど、本当は厳しい試験をクリアしていたんだなあ。

幾何学模様の違いでどの地域かわかるのは、スザニという刺繍の伝統文化とも同じ。ウズベキスタン内を旅行して、いろんな地域のお土産を見比べるのが楽しい。

価値の高いミニアチュールは、ウズベキスタンの博物館や美術館にも多く展示されていた。以下の写真は、タシケントにあるAlisher Navoiy museyという美術館にあった作品。(撮影OKでした)

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ぎっしりと色で埋め尽くされている。まるで印刷のように見えるが、全て手描き。写真だと細かさが伝わりにくいのだけど線がとにかく細くて、これを全て筆で描いたとはなかなか思えない。

師匠の作品

私の師匠である職人さん(Jさんとする)は、壁掛けや小物入れ、スマホケースなどに絵を描いている。

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よく見ると、小さいお花がたくさん集まってパターンができている。このお花はウズベキスタンでよく育てられている綿花をモチーフとしたもの。Jさんといえばこの模様だった。

最近オンラインのメッセージで聞いたら、コロナにより、旅行客が減っているため、家具の装飾を描くこともあるそうだ。これもすごく綺麗。

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職人さんが代々受け継ぐもの

Jさんのお父さんもミニアチュール職人だが、そのお父さんから引き継いだ、ずっしりと重たい本を見せてもらったことがある。その本には、幾何学模様や草花の模様が、どのように描かれるのかを事細かに書いてあった。

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全てウズベク語で書かれていたので、私の語学スキルでは読み解くことがなかなかできなかったけど、時間があればじっくり読みたい。職人さんからこの本を貸してもらったとき、私のことを信頼してくれたんだと感じた。本が傷つかないよう丁寧に扱っていたし、文字もイラストも大量で情報量がすごかったからだ。

アトリエで見たもの

アトリエになっていたスペースは、昔はムスリムの神学校として使われていたところ。レンガ作りの壁に部屋がいくつもあり、ぐるっと中庭を囲んでいた。部屋の中に入ると真っ白な壁、天井がうんと高く、夏は涼しく冬は暖かい仕組みになっていた。

職人さんたちはいつも、長年使い古された机に向かって作業をしていた。机の上には筆や、絵の具、パレットが置かれていて、たくさんものが乗っていたけど狭いスペースを上手に活用していた。

実際描いているところを見ると、ものすごく細かい絵を、何も見ずにサラサラと描いていく。下書きもメインのところ以外は特にしない。早くしないと利益も出ないという理由もあるのだけど。まるでそれは手品のようで、ずっと見ていられると思った。

ある時、金色の絵の具を貸してもらったら、それがぺんてるのポスターカラーだったから本当に驚いた。日本に行ったことのある仲間がいて、定期的に買ってきているらしい。サラサの金色、銀色のペンも使っていた。日本から家族がきたとき、買って持ってきてもらったっけ。まさかの日本との意外な繋がり。

最後に

下の写真は、私が教わって半年以上経って、自分一人で全部描いた初めての作品。まだまだ下手くそだけど遠くから見たらなんとかなる、かな、、

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コロナで帰国してから、師匠が側にいない、見本になるものがないといった理由で残念ながら続けられていない。ほんとは2年間だからもっといれたんだけどな。

ミニアチュールはウズベキスタンの奥深い伝統文化のひとつだ。しかしお土産はお皿や刺繍の方が有名で、ミニアチュールは買いやすいお土産がなかなかない。もっと可愛いデザインで、若い子ウケするものができるんじゃないか、と思いつつ、今まで守られてきた伝統が崩れてしまうのも、という気持ちもある。
これからのミニアチュールの姿も追い続けたい。






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