システム全体マップ資料を作成する際に心掛けるべきこと
IT業界に関係する方であれば、システムの全体像を表した1枚もの資料をよく見たことがあるのではないでしょうか?
パッケージやシステム開発の提案を行うIT業界の営業であれば、必ず提案書に付けていると思います。また、SEエンジニアも、要件定義書や基本設計書に、このシステム全体図を付けている会社は非常に多いです。さらには、広報・マーケティングの部門であっても、プレスリリース、製品発表、IR資料の事業内容説明でも添付として入れられていることがあります。
つまるところ、このシステム全体像のスライド。
頻出です!
しかしながら、個人的には長年悩み続けていることがあります。
それは・・・
一体どの程度まで正確に、詳細に、この1枚を作成すればよいのかということです。
本日はそんなIT資料作成の永遠の悩みについて考えて行きます。
前提:すべての要素を記載すればよいというものではない
ITシステムというのは抽象的であり複雑なものです。
物理的なプラスチックや電子基盤の塊であるハードウェアと、プログラムによりOS上で動作するソフトウェアの2つに大まかには分類されます。しかしながら、物に取れるハードすら難しいのに、ソフトなんて、IT業界以外の方には、どちらも同じくらいイメージしにくいのではないでしょうか。
加えて、システムの世界ではユーザーには直接見えない部分も沢山存在します。
インターネットを使ったネットワークや通信、データベースソフト、セキュリティ、アクセス権限やユーザーアカウント管理・・・
このような利用するユーザーの直接目に触れる機会がないものも、ITシステムには不可欠な要素です。
そして、これらをまとめて、ITベンダー側はわかりやすくお客様に説明する必要があります。
さあ、これらすべて資料に記載するでしょうか?
馬鹿正直に記載していたらキリがないですし、すべて記載していたら、それはもはや過度に複雑でわかりにくい資料になってしまうでしょう。
絶対のルールはないが、大方針のようなものはある
それでは、一体どのようにシステム全体マップを作成すればよいのでしょうか?
私自身も、正解を持っているわけではないのですが、ある程度は「こうすれば大体いい感じになる」「この情報は大抵の場合、記載しなくてもよい」というような経験則ベースの感覚はあります。
コツ1:ネットワーク関係の情報は記載しない
まず一つ目のコツが、システム全体マップとネットワーク設計図は別にした方がよいということでしょう。
ネットワーク設計図とは、以下のようなものですが、プレゼン資料というよりかは技術資料と思います。
ネットワーク設計図の目的は、ルーターや各機器のIPアドレス情報などの設定情報を記録して残しておくための資料になることが多いため、「わかりやすさ」「説明のしやすさ」は、もちろん大切なのですが、何より間違っていないことや記載に不足がないこと≒正確性がより重視されます。
上記は、私が作成したネットワーク設計図の例ですが、これでも相当シンプル・簡易的なレベルであり、SEエンジニアが大企業のネットワーク設計図を本気作成する場合は、とてもスライド1枚で収まるものではないです。もっと細かな情報を記載する必要があります。
ネットワーク設計図は、技術資料と心得て、システム全体マップとは区別しましょう。
コツ2:業務の流れに沿って作成する
ERP、基幹システム、業務システムにおいては、業務の流れに沿って作成してみましょう。
販売管理業務、在庫管理業務、生産管理業務、人事労務、給与計算など、こういった種類のシステムにおいては、ある程度の業務の流れが存在します。
例えば、会計システム/基幹システムを手掛けるOBC社のWebサイトを見てみましょう。
パワポではなくWebサイト上の図解ではありますが、このような記載は、パワポの資料作成でも頻繁に行います。
見積~受注~売上確定~売上計上と業務の流れに沿って素直に記載されており、非常にわかりやすくお手本のようなデザインですし、過度に複雑でもありません。
また、私が作成した以下の例も同じような考え方で作成しています。システムの機能はあまり意識させず、あくまで業務の流れを意識しています。
このような資料を作成できるようになると、お客様との会話が自然にできるようになります。
「うちの会社は特殊でね。出荷と同時に仕入先への発注を行うんだ」
「売上計上と支払処理は経理部でやっているよ、でも請求書の発行は営業事務がやるんだ」
(時に、資料が間違っていると指摘されることもありながら)お客様との色々な会話につながります。
そうやって経験を積みながら、仕事や資料作成がだんだんとうまくなっていくと思っています。
コツ3:機能をただただ羅列する
ERPや基幹システムのようなシステムではなく、いわゆるITツール:チャットボット、BIツール、メールシステム、アンケートツール・・・このようなシステムは専門的な業務に特化したツールですので、ERPのように複雑で長い業務の流れは存在しません。そのようなケースでも、システム全体マップを作成する時があります。
この場合はどう記載すればよいでしょうか?
例えば、グループウェアを例に考えてみましょう。
グループウェアは一つ一つは複雑な処理を行うわけではありません。しかし、日常の仕事で役に立つ多数の機能を有しています。
メール、日報、スケジューラー、掲示板、ToDoリスト、施設予約・・・
そういった場合は、矢印を使ってわざわざ業務の流れを繋げるよりも、シンプルに機能を羅列した方がスッキリします。
この作成例であれば、お客様にとっても機能が足りているか確認、安心できるというメリットがありますし、それに資料作成も正直簡単です。
機能を列挙して⇒アイコン付けて⇒枠で囲んで整理
これだけなので超カンタンです。
コツ4:得意先と仕入先を記載する
システム全体マップとは言え、システムの機能だけを図示していると限界があります。その場合に追加要素を記載します。
追加要素を記載するのにも優先順位があり、やはり一番の頻出のは「仕入先」と「得意先」の要素でしょう。
取引の流れに合わせて、それぞれ全体マップの左側と右側に記載するのが普通です。(※ほぼそのパターンのデザインしか見かけません)
次に多いのが、データがすべて集約されて集まってくる「データベース」、そしてデータをアウトプットする「ダッシュボードやレポート」です。
これらの要素は、システムを使う上でのデータの終着点になるため、図示されることが多いです。もちろん、パソコン、ルーター、人物のようなアイコンも使うことも多いですが、これらのアイコンよりも使う頻度は多いと思います。
コツ5:視座を上げる、視野を広げる
最後のコツですが、やはり、システム全体マップの名に恥じないよう視座を上げて作成しましょう。
例えば、あなたが会計パッケージの営業担当をしていたとしましょう。いつもは会計システムの機能を説明して、かんたんに財務諸表が出力できることをアピールしながら営業をしています。
でも、少しだけ視座を広げて、会計システムと連携する販売管理システムや経営情報を可視化するダッシュボードのことまで言及してみましょう。
それが出来たら、さらにさらに視座を上げます。
こんな感じでしょうか。会社のもっているシステムの全体をできる限り捉えましょう。
企業のシステムは驚くほど大規模で複雑です。
今回、私が作成した最後のシステム全体マップ例は多くの方が使いやすような粒度で作成していますが、債券管理システム、貿易管理システム、マクロやAccess、RPAが複雑につながっている等々・・・現実は、もっともっと複雑怪奇な状態になっていることが多いです。
まとめ
システム全体マップの資料作成は、はっきり言って難しいです。
デザイン、システム、業務、自社のこと、取引先のこと・・・沢山の知識がい必要ですし、それらの知識をうまく統合する必要があります。
でも、こういった資料作成ができるようになれば、間違いなく仕事で武器になりますし、エンタープライズセールス、(上流工程を担当する)エンジニア、コンサルタント・・・様々なキャリアが切り開かれると思います。
がんばっていきましょう!
以上です。
ありがとうございました。
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