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ゆきのした

うまれてはじめて その花をみたのは
おおきな木が 生い茂る 森のおく
断崖絶壁!
岩のあいだに 勇ましく 根を張って
ちいさな ちいさな 線香花火が
チラチラ きらきら
やさしく しずかに またたいていました

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ちいさな花火は 岩のうえに かげをおとし
ひらひら きらきら
こめつぶほどの 蝶の模様が
清流の音と たわむれています

その細部に至るまで 完璧で 優美な花は
触れると こわれそうなくらい ちいさくて
まるで 広大な宇宙の ひとつの星のように
見ようと思わなければ 出逢えません

ちいさくて おおきな
その世界に ふれたくて
梅雨を むかえるころ
わたしは そわそわと 
岩場や 草かげを のぞきこみます
そして毎年はじめて その花を見つけるとき
胸は ときめき その精密さに あらためて驚嘆し
首をふりながら ため息をつくのです

あぁ自然のうつくしさには かなわない、と。

その事実が 嬉しくて 好ましくて
わたしは 深く安堵し よろこびに酔いしれます

そしてその花を じっと見つめながら 
やがて はっと 思い至るのです
ひとのからだもまた 
このうつくしくて 不思議な 自然そのものであることに。

そして再び 深い感動が 湧き上がり
わたしたちの内にひそむ 不思議と うつくしさ
その可能性について 想いを馳せます
このちいさな 可憐な花と 
自らのなかを ながれるものに
つよい結びつきと つながりがあることを 感知しながら。

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