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ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い

前回 ⇒ 仮想通貨で狂い咲き。

何事も新しいもの好きの性格が幸いして、仮想通貨バブルが始まる直前に少しばかりのビットコインを手に入れることができた。といっても、数万円程度のものだからたかが知れている。どちらかというと、そのことを記事にしたブログが生み出したアフィリエイト収益のほうが大きくなった。こちらの方は結局、全部合わせると中古の軽自動車が買えるくらいの収益にはなった。安定しない職を転々としている身分としては大いに助かるものであったが、仮想通貨バブルが派手にはじけたおかげで最後はアクセス数も伸び悩み、ブログで生計を立てるなどということにはならなかった。

それにしてもアフィリエイトで金を稼ぐというのは、何とも言えない刺激的な体験であった。自分のサイトがいつどれくらいの収益を生んでいるのか、アフィリエイトの管理画面を見るとリアルタイムで分かるようになっている。とあるアフィリエイトサービス会社では、収益が発生するとミツバチのキャラクターが描かれた赤いバナーが表示されるようになっていた。アフィリエイト界隈ではこのバナーが出ることを「ハチが飛んだ」と表現していて、収益発生の象徴のように語られていた。アフィリエイトにのめり込んでいた時期は、数分おきにサイトを開いてはハチが飛んでいないか確認したものだ。そんなに頻繁に収益が発生するわけもないのだが、それでも何度かに一度、赤いバナーが管理画面いっぱいに広がっているのを見ると、たとえそれが数百円の報酬だったとしても全身の毛穴がブワッと開くような感覚になった。ギャンブルというのは私には無縁の世界だが、おそらくこれに限りなく似たような興奮なのではないかとさえ思う。いまでも、この赤いバナーのことを思い出すだけで背筋がゾクゾクするのだ。自分の力で金を稼ぎ出すというのは私にとって、とにかく刺激的な体験であった。

ところでアフィリエイターとは別に「ブロガー」という種類の人間がいることをご存知だろうか。どちらも文章で金を稼ぐところは同じだが、その内容は異なる。とはいえ、その差異を明確に語ることは意外と難しい。ブロガーもアフィリエイターも、ともに広告リンクやバナーを自サイト内に貼ることが主な収益源となっているところは変わらないからだ。その決定的な違いを挙げるとすれば、文章を書いている「個人」が前面にでているのがブロガー、ということになる。これに対して、アフィリエイターは必ずしも執筆者の個性を必要としない。もちろんアフィリエイトサイトの中には執筆者の個性・キャラクターを打ち出しているものもあるが、それらは架空の人格である可能性が高い。大事なのは想定されている読者・顧客に説得力があるかどうかなのだ。だから通常、アフィリエイトサイト執筆者のTwitterやYouTubeアカウントなどはない。これに対してブロガーは、その人自身の生き方、考え方の共感を通して集客する。当然、TwitterなどのSNSアカウントの運営も積極的におこなう。

このようにブログの収益化について自分なりに色々と考えを巡らせているうちに、アフィリエイト方式の稼ぎ方を「営業モデル」と呼び、ブロガー方式の方を「作家モデル」として呼ぶのが良さそうだと気づいた。

営業モデルにおいて重要なのは取り扱う商品であり、それがいかに顧客のニーズに見合ったものであるかを說明する説得力である。そこにおいて、営業マン個人の個性はそれほど重視されない。一方の作家モデルにおいては、そのブログを書いている執筆者個人の個性がもっとも重要視される。その人にしかない魅力や個性にファンがつき、その人たちがサイトに何度も訪れるうちにサイト自体のパワーがつき、検索でも上位が取れるようになる。

さてブログで集客しようとしたとき、実は初心者の多くは作家モデルをイメージしてしまう。「私」を軸にして自分の気に入ったものや、自分の考えを書くのだ。だがよく考えてみてほしい。あなたにしかない個性とは?あなたの書いたものと、インターネットの大海に浮かぶ無数の文章との違いは?

これに対して営業モデルは販売したい商材を軸に文章を作る。ページタイトルには商品名や購買層にささるワード(たとえば「おすすめ」や「1万円以内」など)を入れておく。そのような記事がGoogle検索で上位に表示された場合、普通にイメージするよりもはるかに高い確率でアフィリエイトリンクから商品が売れる。それは何故か?

そもそも検索というのは、なんらかの悩みをかかえた人がおこなう行為である。ブラウザに検索ワードを打ち込んでいる人というのは、その悩みをなんとかして解決したいとうい強い欲求を持っている場合がほとんどだ。Google検索のアルゴリズムというのは、その悩みを解決する可能性が高いサイトを高順位に表示させるようになっている。つまりあなたのサイトが高順位に表示されている時点で、検索者の悩みを解決できるページになっている可能性が極めて高いのだ。実際、あなたのサイトを訪れた人はあなたの書いた文章を読んでかなり満足するはずだ。そのあなたが、文章の最後にそっとアフィリエイトリンクを貼る。わたしはこの商品を使うことで、さらに満足度の高い経験をすることができました、と。購買意欲の高まった読者は喜んでアフィリエイトリンクをクリックすることだろう。これが営業モデルによるサイト収益化の実態だ。

もちろんサイトに訪れた人が全員アフィリエイトリンクをクリックするとは限らない。いや、むしろ実際にリンク先のページまでたどりつくのはほんの僅かだろう。その中で実際に商品を購入する人となるとさらに少ない。それでも、例えば訪問者の0.1%くらいは購買行動までたどり着くだろう。つまり1000人いればその中のひとりは商品を買うという計算になる。実際のところ、毎月1000人を集めるページを作るというのはそれほど大変な作業ではない。このことに気づくことができさえすれば、収益額の大小はあれど、ほぼすべての人が文章による収益化を実現できる。

アフィリエイトというものが登場するまでは、私たち一般人がブログやSNSに載せる文章というのはすべて「作家モデル」を前提として書かれていた。アフィリエイトというものは、そんなインターネットの世界に突如として現れた、誰もが「営業モデル」で文章を書ける時代を告げるものであったのだ。

(続き)それでも、文章を書く、ということ

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