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『ベンチャー企業がぶつかる「10億円の壁」』Vol.7:メンバーシップ型雇用のメリット

売上10億円の壁にぶつかるベンチャー企業にとってのジョブ型雇用は、このシリーズの1回~前回(6回)までで説明をしてきた。今回は、ジョブ型雇用と比較されやすいメンバーシップ型雇用をテーマとする。双方を取り上げることで、10億の壁を乗り越えようとする際にどちらが有益であるかを考えたい。

まず、メンバーシップ型雇用のアウトラインを説明する。これは、日本の大企業からベンチャー企業まで幅広く見られる雇用スタイルである。通常は新卒、中途を問わず、正社員として労働契約を結ぶ際に担当する職務や勤務地、労働時間などを厳格には決めない。その1つが、総合職としての採用と言える。

例えば、次のようなキャリアで課長になる。

大卒の新卒として入社し、本社の営業部に5年、その後、本社の営業企画に2年、地方の工場の資材管理部に5年、本社の総務に3年、地方支社の営業企画に4年、20年目に本社の営業企画課の課長になる。

これは、長期にわたる雇用関係があるがゆえに成立するスタイルと言える。それを支える経営基盤や経済環境も必要になる。基本的には業績が毎年現状維持できているか、年を追うごとに増える「右肩上がり」であることが前提になる。

一方で例えば不況が長引くと、部署の部員を減らしたり、管理職のポストを削減したりする。リストラ(人員削減)をせざるを得ない時もあるかもしれない。こうなると雇用関係にきしみが生じ、メンバーシップ型雇用スタイルにも影響が出ることが考えられる。

1950年代後半から70年代前半にかけての高度経済成長期に、メンバーシップ型雇用を採り入れる企業は大企業、中堅企業を中心に広く浸透した。現在もその傾向は大きくは変わらないが、ここ10年程はジョブ型雇用を導入する企業がしだいに増えている。日本経済のあり方が変わりつつあるためだ。

1990年代前半にバブル経済が崩壊し、90年代後半に金融不況となって以降、経済成長が鈍化している。各産業の市場は拡大が難しく、規模が小さくなるケースすらある。少子化が深刻化し、企業の商品、製品、サービスを購入する人の数が減り続けている。働く人の数は減り、事業の拡大ができないケースも目立つ。今後、これらの傾向は一段と鮮明になるはずだ。

なお、大半の中小企業やベンチャー企業もメンバーシップ型雇用ではある。だが、市場で競い合い、シェアを獲得できる強力な事業がないがゆえに経営基盤がぜい弱で、長期安定雇用を築くことができていない。したがって、メンバーシップ型雇用が形式上のものとなり、実際は社員の出入りが激しく、欠員補充的な意味合いの中途採用試験を繰り返しているケースが多い。

Vol.7の続きはこちらから


■もくじ

  • メンバーシップ型雇用とは?

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その1)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その2)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その3)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その4)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その5)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その6)

  • メンバーシップ型雇用のメリット(その7)

  • メンバーシップ型雇用のメリットのまとめ