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大工町公園改修の舞台裏 その5

さて、ワークショップでの市民の意見を元にした緑豊かでベンチの沢山あるワークショップ案と、管理が楽なように緑も座る場所も全てなくしてしまいたい地域の区長案が真っ向から対立することになった前回の続きです。ウルトラハードモードに突入です笑。

ちなみに、もはやワークショップも終わっていますから、私の動きはこの先全てボランティアですが、もう、そんなことは置いておいてやるしかない。(これもこの先問題になりますが、それはまた改めて・・)

迫るリミット

意思決定者の公園緑地課は、ワークショプでの市民の意見は一応聞いてはくれているものの、地域の代表たる区長の同意がないプランは実行できない。それでも、当時2019年の年度内にはプランを固めて設計を終わらせたいとのことので、時間的なリミットもある。そのときで、すでに2019年の9月くらいだったように記憶しています。当初なんとか10月までに合意したいと言われてました。

そうして、どうにか落とし所をつくるべく、地域の若手と、区の役員を集めた会議の場が、何度も開催されることになりました。

会議に臨むために、否定されそうなところは予め潰しておこうということで、協議会への参画を想定していた団体の代表たちには、改めて個別訪問をして、協力をお願いして回りました。大工町の区内会以外は、どの団体も協力を約束してくれました。想定される収支表などもつくりました。

最初の会議

そして、最初の会議が開催されます。闘いのゴングは聞こえませんでしたが、私は、会議の冒頭、ありったけの熱意を込めて、こんなことを話しました。

「中心市街地にある大工町公園は、少し手間がかかったとしても何もない公園にはしては絶対にいけないと思っています。公園を中心にしてまちを再生することは可能なんです。池袋にある南池袋公園は、もともとは浮浪者とドラッグの売人が溜まるような場所だったけど、今では、池袋を代表する人が集まる場所になっています。南池袋公園の周りには新しいお店もどんどんオープンする好循環が生まれています。大工町公園もそうなれる可能性があるんです。今の人通りの何もないまちのままでいいんですか?まちを活性化するには、まずせっかく改修される大工町公園が人の集まる拠点にならないといけないはずです。そのためには、緑と座る場所が絶対に必要です。協議会の構成員候補の団体からは、皆賛同も取り付けています。収支も作成してあり、固く見ても管理ができることは分かっています。今まで管理を担ってきた区の皆さんだからこそ分かることもあるはずです。ワークショップでの案で足りないところがあれば教えてほしいし、言われたことは改善したいと思っています」

区の役員たちから返ってきた反応は、要約すると以下のようなものでした。

・本当に芝生が市民に望まれているのか?ワークショップに参加したのは市民のごく一部じゃないか。4~5件くらい近所の飲み屋にヒアリングしたら、みんな芝生には反対していた。
・永久に芝生の管理ができると約束できるのか。協賛金をずっと構成団体が払ってくれるとは限らないじゃないか。そのときに、管理できませんとなったらどうするのか?また大工町に管理が戻ってきては困る。行政は責任が取れるのか。
・ゴムチップは、一度貼ったら手入れもいらず管理も楽。そっちがいいに決まっている。

自分たちも公園の管理をすでに放棄しているのに、若手や行政に100%の確約を突きつけてくるとは、なかなかシビれます笑。でも100%できるのかということには、なかなか反論がしにくいことも確か。。

手厳しい反応に、相手を説得できるほどの反論はできずに、宿題として持ち帰り検討することで初回の会議はお開きになりました。

言われたことへ一つ一つ対策をする

そうして、区の役員たちに言われた意見に対応するために、また次回の会議に向けて準備をします。

(1)地域の賛成の署名集め
まず、芝生に対して、近所の飲み屋が5件反対しているなら、10倍の賛成を取り付けようかということで、目標を50件に、近所のお店を一軒ずつ回って署名を集めることにしました。

皆、どういう体制で管理をするという話までセットで説明すると賛成をして貰えました。誰もいないまちをなんとかしてくれ、人が集まる公園にしてほしい、がんばれと応援もたくさんして貰えました。

きっと飲み屋にヒアリングしたという地区の役員は「芝生なんて管理大変だしダメだよね〜」という言い方をしたのではないかと想像しました。それだと、お店の人もお客さんの意見に反対もできないので、「反対だね〜」という話になってしまいます。誰が話をするかで、人の反応は全然違うものになるものです。

こうして2週間ほど、毎日のように仕込みの時間を狙っては街のお店を訪問して、最終的には50件には1件足りないですが、49件の賛成の署名を集めました。

(2)誰が管理の責任を取るのか
次に、管理を100%責任を持ってできるのか、誰が保証するのか、という問題に対しては、管理を担う予定のまちづくり会社との話を詰めました。まちづくり会社の役員は、実は大工町公園に面する地権者の一人でもあるので、「最終的には自分が責任を取ってちゃんと公園の管理をやるから大丈夫」ということまで言って貰えました。自分の土地の目の前が、きれいな公園であることは、土地の価値を維持・向上することだと理解している方だったので、自分の物件の管理費の一部として考えられるとのことでした。

公園緑地課は、民間からの発案で始まった案件であるし、現状だと責任を取るとは言わないだろうと地域振興課とも話していました。

(3)ゴムチップ舗装が絶対いいということへの反論
最後は、ゴムチップ舗装が一度貼ったら未来永劫管理不要かのような話について。これは、公園緑地課とも話をして、初期費用はゴムチップの方がかなり高いこと、劣化すれば10数年で張り替えも必要になること、その費用は1000-2000万になるので、更新費用が出せず、木の根に侵食されてボロボロになったままのものも沢山あることをヒアリングしました。

正式な会議外での論戦

そうして、第二回目の会議で全員を集める前に、反対をしている区長と役員に個別に話をする場も設けました。できるなら、事前に合意を取り付けて、すんなり全体会議での合意形成に繋げたかったからです。この場には、調整役の地域振興課と私とで臨みました。

そうして、1回目以降に集めた、ワークショップ側からの反論も、きちんと話しました。要約すると以下のようなものです。

(地域振興課と私)
・事前説明会を4回も開催し、ワークショップも3回やり、その度にかわら版もつくって近所に配布もしている。その間、ずっと意見の募集も行ってきている。ここまでやっているので、行政としては、ワークショップには市民の意見が反映されているものと考えている。
・近隣のお店の署名も49件分集めた。どんなコメントをしていたかもまとめてある。皆、街に人がいないのを何とかしてほしいという想いだった。
・今後は公園協議会での管理になるので、もし管理ができなくなっても大工町の区内会に管理が戻ってくることはない。
・少なくとも、まちづくり会社は、自腹を切っても管理する位の覚悟でいる。まちの代表としての団体や行政も中にいて、まちのためになる公園にはメリットを感じて協賛金も出すと言っているので、簡単には公園協議会はなくならない。
・ゴムチップも劣化するし、10~20年後の更新時には、2000万近くかかる。
・中心市街地を活性化する名目での整備予算になっているので、何もなくしてしまうということには予算を使いにくい。

それを受けて区長と役員から返って来た答えは以下のようなものでした。

(区の役員から)
・確約が取れてないものは信用しない。協議会に入ってくれる団体の代表たちも協賛金を出すと言っているのも、役員会を経ているわけではないから確約ではない。まちづくり会社の話も契約書があるわけではない。それでは自分たちは納得しない。
・別に芝生に反対しているわけではない。管理を100%できるのかという問題。
・もしゴムチップが初期投資も更新でも費用がかかるなら、今の土のままでいい。
・子供は、どんな公園だって遊ぶんじゃないか。

我々も100%の確約は何もできない中、それでもどうにか分かってもらいたいと必死で話を続けます。

(地域振興課と私)
・公共施設を減らそうという中で、市民が自分たちで公園を管理運営しようという機運が出ること自体が、未来の希望。この動きを行政としては応援したい。
・今のまま協議会を発足したら、結局、大工町の区内会が反対しても賛成多数で芝生の案が可決されてしまうだろう。これまで管理してきた皆さんを抜きして進めたくはないので、まだ協議会はつくらずに、こうして相談をしている。
・若手が活躍できない町は、どんどん人が離れて廃れていく。人がいないことを嘆くなら、若手が活躍しやすいようにすべきじゃないか。
・10年前の中活での整備でも、管理が楽なようにゴムチップで固めたり、平板ブロックを敷き詰めた公園があるが、年に一回の街コン以外では、誰も使っていない。大工町公園は、そんな公園にはしたくない。
・まちの人の声は、人のいないまちをどうにかしてほしいということ。
・自分たちも子育て中だが、子供を遊ばせるのに、ゴムチップの公園にはいかない。

そんな攻防が30分近く続けられ、結局は、この場では結論は出ず、最後はこんなコメントで終わりました。

(区長)
・時間的なリミットはあるんだから、俺らは最後まで反対だけど、もう好きにすればいいんじゃないか。みんなの前で、また話して決めたらいいんじゃないか。役員会では、反対って決まっちゃって今はどうにもできないし、もう今日はお開きにしよう。

(地域振興課)
・それでは困る。行政としては地区の意見を重く考えていて、地区からの合意もないと進められない。

最後は多少、我々の熱意に区長も根負けして来たような感じにもなりましたが、説得までは至らず。惜しい。でも、少し前進している気はするけど、もうひと押し足りない。
さて、どうやったら、区長からの合意も取り付けて、芝生の公園は実現するのでしょうか。次回の最終決戦に続きます。

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