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大工町公園改修の舞台裏 その2

公園を具体的に変えていく話の前に、どのようにして公園を変えていく流れにしていったのか、そのプロセスから話を始めたいと思います。しばしお付き合い下さい。

まちづくりの始動期

だいくまちパークフェス

西村さんたちのワークショップ以降、1〜2年は、写真のようなイベントも何度もやりました。元々はものづくりが盛んなまちだったことを現代風にまちに生かそうということで「つくるまちだいくまち」とコンセプトをつくり、地域で活躍するクラフト作家さんに協力してもらい、参加型で来場者もものづくり体験ができるような内容です。

しかし、数回は良かったんですが、イベントばかりやっても、なかなかまちに変化をつくれず、いつしかイベントを始めた仲間たちも、飽きたり疲れてしまったりと1人また1人と離れていっていました。しかも、補助金を活用してのイベントでしたので、いざ補助金がなくなると、とたんに同規模での継続が難しくなり、いつしかイベントを仕切ってくれていた当時の代表者もやる気をなくして主体的には動かなくなってしまいました。補助金なしで出来る規模で少しずつ育てることは、やはり基本だったなと反省しました。無理して最初から大きいことをやっても運営チームの経験も中身も追い付いていないから、長く続いていくものにはならない。まあ、これはよくある失敗談ですね笑。

しかし公園から始まるまちの再生という可能性にワクワクしてしまっていた私は、西村浩さんの手掛ける佐賀や、リノベーションまちづくりの聖地北九州市小倉も見に行ったり、南池袋公園も訪れ、益々可能性を感じてしまっていたので、仲間の温度感が少し下がった位で簡単には諦める気もないわけです笑。

自らリノベーション物件を仕掛けて次のステージへ

そんな状況で、次の一手に何を打とうかという時、ちょうど子育てママをターゲットにしたカフェをやりたいと言い始めていた妻がいたので、大工町でやってもらうことにして、一緒に公園と道路で挟んだ向かいにある空き物件を借りてichiという事業を始めることにしました。物件オーナーも本来貸す気のなかった壊す予定の物件なのですが、3年の期間限定として熱意で借りることが出来たので、ここからまちに新しい変化を作ってやろうと思いました。リスクを負うので本気の人とやらないといけないと思い、妻と2人の会社にしました。

このあたりの経緯やichiにご興味ある方は、詳しくは以下の記事をご参照ください。(なぜあの場所にichiは生まれたのか?

公園の向こうにある物件を借りました
こんな感じにリノベーションしてichi誕生

公園の当事者として地道な社会実験を重ねる

ichiをやっていると、目の前の公園が賑わうことが店の売り上げにも直結してくるので、ますます公園をどうにか活用したいと思うようになりました。

そんな時、いわき市役所の地域振興課が、ちょうどタイミング良く公民連携をいわき市でも進めたいから何か企画を作ってほしいと持ち掛けてきてくれたので、私の公園での取り組みに協力してもらい、公園緑地課にかけあってもらい、公園の一部をテラス席のようにする半年に渡る社会実験をしました。

もともと座る場所の全然ない公園ですから、誰もが使っていいイスとテーブルを、公園の目の前のお店が民間の責任で設置して管理するというのは、行政にしてもwinwinなわけです。お店的にはテイクアウトでもしてくれたらラッキーだし笑、まずは誰もいない公園から人がいる公園の状況になってほしかったんです。結果としては、結構使う人もいたりで、店の売上も多少上がるしで、上々だったと思います。

公園の一部をテラス化する社会実験

公園のイベントと同時に目の前の道路を通行止めにしてichiと公園を繋げるような社会実験もやりました。私には道路も含めて公園と周辺が一体になる歩行者優先のまちへの未来のイメージがあるんです。それが実現できれば街に人も集まるし、公園周辺のお店の売上も上がるし、エリア価値が爆発的に上がるはず。それを1日だけの実験でも、まちの人に体感してほしかった。想定通り、通行止めにした安全な「街路化」した道路には子供たちが溢れ、親もセットで長居するので、カフェも過去最高の売上になったりする好循環が生まれるわけです。ああ、こんな状況が日常になればいいなと今でも思っています。でも、残念ながら、道路を変えるところまでは至っていません。

道路を歩行者天国にした落書きイベント
1日だけ公園と道路と民地が一体に
別パターンの通行止め社会実験


大工町公園を本当に変えるチャンス到来

こんな感じで地道に実績をつくり可能性を示すことをやっていたところ転機が訪れます。公民連携の入口として、小さく公共空間の活用を手伝ってくれていた地域振興課から、いわき市での公民連携のパイロット事業の提案の公募がありました。100万円の予算使っていいから何か提案してほしいと。うーん100万円か。何かハコモノをつくれるような予算ではないし、どうしようかなと悩みました。

でも、せっかくなので、大工町公園を変える流れをつくりたい。

私は、公園をどうにか活用したいと思い、その仕組みから学ぶために、公民連携プロフェッショナルスクール(現:都市経営プロフェッショナルスクール)という社会人スクールにまで通っていたので、これからの公園は、公民連携の仕組みで稼ぎながら運営すれば、何もない公園なんて、まちのために何もならない公園にしなくても豊かな公園にすることが可能なことは何となく分かっていたので、100万円で、後ろ向きなまちの意見をひっくり返すワークショップをやろうと思いました。

そして、その公募には、「いわき市が予定している大工町公園の改修計画を、ワークショップを通して多くの市民の意見を反映させつつ、公民連携の仕組みを導入するのを目指してはどうか?」としてプレゼンしたところ採択してもらい、地域振興課と一緒にワークショップを行えることになりました。

ただ、地域振興課は、いわき市にまだ影も形もない公民連携を進める役割ではあるものの、公園改修の意思決定者の公園緑地課は、全然乗り気ではないという状態でした。いわき市では、公民連携は誰もよく分かっておらず、まだまだ庁内での協力も得にくい時期だったのです。公園緑地課からはワークショップはやってもいいけど、意見は参考程度に聞くだけと言われていました。

しかし、私としては、遂に巡ってきたチャンス。公園から始まるまちづくりのポテンシャルを感じて大工町公園の目の前で事業を始めたものの、実際には寂れたままの公園の目の前で事業をする難しさを感じていましたので、公園には良くなって貰わないと困る。

また、30年に一度あるかないかの公園改修を、どうにか未来のまちが良くなる方向に繋げていくべきだと思いました。しかも、誰かが声を上げなければ、大工町公園は、何もない管理しやすいだけの公園にされようとしていました。あの時の私にはやらないという選択肢はありませんでした。

今回はここまでです。次回は、大工町公園の未来を考えるワークショップ編をお届けします。

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