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大工町公園改修の舞台裏 その6

前回のつづきです。今回は、緑豊かで座る場所が沢山あるワークショップ案と、管理が面倒なものはすべて無くしてしまいたい区長案の全面対決となり、その落とし所をつける最後の会議の話です。反対派を事前に説得をして、会議の場ではスムーズな合意形成をしたいという目論見もうまくいかなかった前回。どうやったら地域の役員たちに納得してもらえるのでしょうか。

いざ最終決戦

その場にいるのは、大工町の区内会の役員全員。行政からは、意思決定者の公園緑地課から数人、公民連携の調整役の地域振興課から数人。民間からは、私と私も所属するNPOの理事、まちづくり会社の役員。

まず、私から改めて、今回の公園改修で何を目指していくべきなのか、公園単体で見るのではなく、寂れたまちをどうすべきなのか、そのための公園のあり方などを話しました。また、前回の会議で宿題となっていたことについて、その対応策などを、数日前にも反対派の区長と役員には個別に話していた内容ですが、改めて全体に向けて話をしました。(繰り返しになるので前回参照)

公園前の地権者でもある、まちづくり会社の役員からは、こんな話をします。
・適度に手間がかかる公園の方が、関わる人が増えて、愛着を持ってもらえて、結果、いい公園になると思っている。
・区が苦労して公園を管理してきたことも理解しているし、今は半信半疑かもしれないが、区の経験者から厳しい意見ももらいながら、運営をしていきたい。結果は、数年後にしか見せられないが、まずはやらせてほしい。
・最後は自分が責任を取るから、私たちに任せてほしい。

地域振興課からもこんな話を重ねます。
・協議会に入るという各団体からの正式な契約書があるわけではないが、各地域の代表である団体が覚悟を持って取り組もうとしている。もちろんその中には行政もいるので、大工町の区内会に管理が戻るようなことには絶対にならない。
・今時点では、100%の保証は何もできないが、やりながらダメなところは改善していけばいいと思っている。

それでも区長からはこんな反論が返ってきます。

「いくらでも口では言える。まちづくり会社だって、いつまであるか分からない。最後は行政が責任を持つと言わない限りは、俺は納得しない。」


もう打つ手なしかに見えた、その時。

もう打つ手なしか。これ以上出せるカードはないんだけどな。場も静まり返っていました。何か言わなきゃと思っていたそのとき、公園緑地課の担当者が口を開きます。

「どうしても公園協議会でも管理ができなくなったときは、公園緑地課で責任を持ちます。行政財産ですから当然です。」

絶対に言わないだろうと思っていた一言が、なんと公園緑地課から出たのです。民間からの発案で始まった話なので、最初は「参考程度に聞いてやる」としぶしぶ同席しているくらいの温度感です。もしかしたら、行政内でも合意の取れていた発言ではなかったかも知れません。それでも、ここぞというタイミングで、ハッタリでも言ってくれました。

この発言には、その場の皆が驚きました。

そして、若手たちも重ねます。
「行政にそうさせないように、民間がまずは責任を持って動くべきです。」

その場にいる、どの立場の責任者も「自分が責任をとる」と言っているのです。後にも先にも、こんなに感動した会議はありません。

最後には、大工町の副区長が重ねます。
「区長、そろそろいいんじゃないですか。若手に任せても。」

ここまで来て、区長に最後のボールが渡されました。

「・・・しゃあんめ。(仕方ねえなの意)」

決して若手を応援するとも、ワークショップ案に賛成とも言わなかったですが、区長の同意が得られた瞬間でした。

これでようやく、計画が前に進むことになりました。ワークショップが終わってから3ヶ月ほど経っていましたが、一応、予定していた年度内での地域での合意形成ができました。

行政と民間に芽生えた信頼感と仲間意識

会議終了後、地域の役員たちが帰るのを見送った後、その場は、達成感で満ち溢れていました。

公園緑地課の担当者にも、「よく最後の責任を取ると言ってくれましたね」と話しかけると、

「我々も都市建設部ですから」と一言。
(うお〜、かっけ〜!)

行政マンにも想いのある人もいて、本当は前向きにまちづくりに取り組みたいんだと、その時思いました。でも、色々な制約があって、なかなか想い通りにはならない。組織内も制度も、制約だらけなんだと。そんな風にも聞こえました。

私は、この行政の人たちとなら、今後うまくやっていけそうだなと信頼感を持ちましたし、お互いに、共に闘った仲間意識みたいなものが芽生えていたようにも思います。これから本格的な設計段階になって、いい公民連携チームで楽しくなりそうだと思っていました。

(が、そんなに上手くは進みません笑)

次回からは、具体的な設計編です。続きます。


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