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大工町公園改修の舞台裏 その3

役所内でもまだまだ浸透していない公民連携という手法に対して、あまり乗り気でない公園緑地課に対して、地域振興課という他部署が企画した公民連携のパイロット事業をつくろうという公募事業に採択してもらい、公園改修計画に横槍をねじ込むようなワークショップを開催できることになった前回からの続きです。

大工町公園の未来を考えるワークショップ

ワークショップ本番は全3回。多くの地域住民の声を拾おうと何度も事前説明会も重ねました。時間的に参加できない方の意見も拾おうと、夜の座談会もやりました。また公園を中心にしたまちづくりと言えば南池袋公園の青木純さんしかいないと思い、色々とお忙しい中なのに協力もしていただきました。少しでも市民に関心を持ってもらおうとワークショップでの経過報告を兼ねたかわら版をつくって近所に配布したりもしました。

ワークショップのチラシ
1回目のワークショップ
公園からのまちづくりと言えば、青木純さん。南池袋公園の話をして頂きました。
第2回ワークショップは現地にて。
テントの下で熱く議論
第3回ワークショップ。毎度、これからの公園について熱弁ふるいました笑。

ワークショップでは、全編を通して、まちを変えていく公園の事例や、公民連携の仕組みなら緑豊かな公園にも出来ること、公民連携は誰かにお任せするのではなく自分たちが責任の一旦を担う覚悟で主体的に動けばこそ出来ること、などを散りばめて伝えていきました。そして、どんな公園が本当はほしいのか、どんな公園ならまちのためになるのか、アイデアを重ねていきます。

ワークショップの経過を近所に周知するために私がつくった「大工町公園の未来をつくる通信」もデータUPするのでご興味ある方はご覧ください。

ワークショップ自体は、多くの参加者とともに極めて前向きに進んでいきましたが、裏では、いくつか問題起こっていました。

地域との間に流れはじめる不協和音

ここからはワークショップと同時並行で裏で動いていた話です。ワークショップには、多くの市民や商業者、地域や行政の意見をまとめて、本当にまちの未来のためになる大工町公園の設計方針をつくると同時に、その前向きな設計案を、市民の総意でつくったという合意形成をしたいという意図ももちろんありました。そうすれば、何もない公園にするという方針は、必ずひっくり返せると思っていました。

しかし、当時の大工町の区長は、ワークショップで地区の意見も言ってほしい、管理の苦労なども話してほしいといくら誘っても、そもそも若手が何か言うことが気に入らないのか、反対の意思表示なのか、私だけでなく地域振興課の担当者も足繁く通って話をしても、「ああ行く行く」と生返事をするだけで、結局、当日になると現れないということが続きました。ワークショップでは、何もない公園にしたいという話が支持されないのを初めから分かっていたのだと思います。

そうこうしていると、公園緑地課に区長が単身乗り込んでいって、「管理が楽なゴムチップ舗装に全てしろ」「若い奴らがイチャイチャするから座る場所はいらん」など色々言って帰っていったというような話が聞こえてきたりします。高齢で見た目も怖目のなかなかパンチが効いた区長なので、凄まれると役所の方も対応に苦慮しているようでした。

これはあかん設計案が出てくる事件

また、しばらくすると公園緑地課がつくった設計案を持って、ワークショップに一度も出ていない例の区長に、3回目の最終ワークショップの前に説明の機会をつくるという話を地域振興課から聞き、その直前で図面を見せてもらうことができました。

その設計案は、管理が楽なように何もないのがいいという区長の要望と、緑やベンチがほしいというワークショップの2回目までで出ていた要望を折衷したような案でした。一部がゴムチップ舗装か芝生か選べるようになっています。でも芝生部分がゴムチップ舗装になれば、大きな木はかろうじて残っているものの、すべての場所が固いもので覆われた、いわゆる管理が簡単な公園になるようなつくりです。

公園緑地課が用意した幻の設計案

私は、正直、「ワークショップの最終回で提出される図面がこれか〜」という落胆した思いでした。なぜならワークショップでは、全てゴムチップ舗装にしてしまうという意見は何一つ出ていなかったからです。参加者の意見を元に考えるとこうなります、という案としては、違うと思いました。これは、どちらかというと区長への配慮と管理を簡単にしたいという意図に満ち満ちた案なのです。ワークショップの議論などほぼ関係なく、公園緑地課の都合を持ってきたようなものです。しかも、担当者には申し訳ないですが、要素をパラパラと並べただけで、全然魅力的な設計も出来ていない。設計をかじってきた自分には、人の居心地など何も考えられていないように見えました。

この図面を持って区長に説明に言ったら、この方向で行くかのように受け取られ、もう別の案にすることは不可能だと感じた私は、必死でこの図面は持っていかないよう説得しました。
そして、後日、区長のところへは、図面は持って行かずに、現状やスケジュールの説明に留めたという話を聞くことができました。

仕方がないので自分たちでワークショップ案をつくる

あの設計案を見て、公園緑地課に任せていては、ワークショップの想いを反映した皆が納得できる設計案がつくられそうにないことが分かったので、3回目のワークショップに持っていく設計案は、やる気のある若手で作ることにしました。

本来は、市民の意見をきちんと受け止めて設計に反映出来る建築家やランドスケープデザイナーと言われる外部のプロを設計プロセスに組入れておけば、こんなことにはならないんですよね。デザインは、そんなに簡単なものではないのに、なぜか数年で異動のあるプロとは言い難い職員がエイやでつくってしまっている。大きな設計にはプロを入れたりもするだろうけど、小さい公園などはどうやら自分たちでデザインまでやっている。こうやって微妙な公共デザインが出来ていく現実を見た気がしました。まちの居心地や価値は、小さい公共空間の積み重ねで出来ていくのに。行政は、いい公共空間のデザインをつくる仕組みが全然出来ていないんだなーと気付いたのも、この頃からです。

この辺り問題については、改めて書きたいと思いますが、とにかく今ないものを嘆いても、予算もないのでプロにも頼めないし、もはや自分たちでやるしか道はないとなったわけです。

次回に続きます。


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