『アオラレ』

公開延期を重ね、予告編最後のラッセル・クロウによる「アオッテンジャネーヨ!」もいい加減に見飽きた感があった『アオラレ』。日本でも問題になってる「煽り運転」を取り上げた作品だけにどういう切り口で来るかと思いきや、意外にもラッセル・クロウが演じた殺人鬼がハマっていて、そこそこのスリラー映画だった。

 

 

中盤ぐらいまではやはりスティーヴン・スピルバーグ監督の『激突!』を彷彿させる作品だが、当然ながらリメイクではないので、その線ばかりで映画を見てしまうと若干肩透かし感があるが、ラッセル・クロウが演じる殺人鬼によるシリアル・キラーものと見れば悪くはない。

 

 

後半のカー・チェイスのシーンはアメリカの郊外の住宅地あるあるな地の理を巧みに使った見事な演出。その後車を降りた後のアクションもラッセル・クロウのパワーファイトを中心とし、迫力と恐さがある。韓国のマ・ドンソクのような押しの強さがあり、ラッセル・クロウの新たな魅力を引き出している。

 

 

今回の映画の根源には随所に見せる「ストレス社会」というテーマがあり、コロナ禍の現在において実にクリティカルなテーマである。なので、映画を見る観客はレイチェルに感情移入をしやすいが、かなりの反面教師になったはず。本来、コロナ禍という設定・想定はないので、偶然にも時代とマッチした映画である。

 

 

下手すれば『激突!』の出来損ないになりえた映画だが、偶然にも時代に助けられ、社会派としての側面が見える良質のスリラー映画に仕上がってしまった。イライラしている方に是非とも見ていただきたい。

 

 

評価:★★★★

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