どんなに
屈強で
俊敏で
聡明で
人間達から愛されていても

水族館の魚は
水槽を破って
海に還ることはできない

でも
同じ水槽にいて
誰にも気づかれない
小さなプランクトンには

泳ぐ力は無いけれど
外に出て
海を目指すチャンスがある

水族館で生まれたというだけで
水族館の魚に食われるな

流れを探せ
排水口に吸い込まれろ
暗く狭い下水管を抜けて
浄水場で濾し取られないように
川に出るんだ
そこでも敵は多いけど
流れに乗って海を目指せ

海に着いたら
きっと分かるはずだ

海の大きさから比べれば
一個体の大きさなど
何の意味も成さないことを

大切なのは
自分に与えられた命の役割を
輝かせることだということを

プランクトンとして
生まれたならば
プランクトンにできることの中で
最高の仕事をするんだ

海の魚に食べられろ
泳ぐ力が無いならば
そこにある偉大な海流に乗り
広大な海を形作る
命の環に加われ