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『私の家政夫ナギサさん』第7話 真面目で頑張り屋のあなたへ

火曜10時にTBSで好評放送中のドラマ、『私の家政夫ナギサさん』。火曜10時は、『逃げ恥』『こいつづ』など、話題になるドラマが放送されている枠です。

今夜は第8話が放送されますが、前回の第7話が、注目すべきポイントがあったので、8話を前に、振り返りながら、私なりのメッセージも込めてお送りいたします。


『私の家政夫ナギサさん』とは

主人公の「私」は、家事が苦手で、結婚願望はあるものの、仕事第一に生きるキャリアウーマンの相原メイ(28)。製薬会社の営業(MR)で、仕事が忙しく、家事が苦手な上に時間もない。そんな姉を見かねて、妹が送り込んだスーパー家政夫が、鴫野ナギサ(50)というおじさんだった。

完璧な家事をこなし、仕事の相談にも乗ってもらえる、頼り甲斐のあるおじさんのナギサさん。家事をナギサさんに任せることで、仕事にも集中することができ、止まっていた恋も動き出すのだった・・・

というストーリーです。

正直、最初は観るつもりはなかったのですが、見始めたらついつい見てしまう、『半沢直樹』とは違う、程よい面白さ(笑)

50歳のおじさんでも、28歳の女性と仲良くできる、おじさんにとっては夢のあるドラマかもしれません(笑)


7話のあらすじ

家政夫のナギサさんは、「お母さんになりたい」という理由で家政夫を始めました。スーパー家政婦なのですが、元バリバリの営業マンで、メイが入りたかった会社に勤めていた過去がありました。そんな経験もあり、効果的にメイにアドバイスをしたりしていたのですが、そんな時、メイはナギサさんの過去に傷があることを知る。

今から5年前、製薬会社の営業をしていた時に一緒に働いていた後輩女性を、病院で見かけました。それをきっかけに、完璧な家事をこなしていたナギサさんは、ミスを連発。仕事に集中できないようだった。その異変に気付いたメイは、ナギサさんの家に突撃し、下手なご飯を作り、頑なに拒んでいた過去の話を聞き出すことに成功する。

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ナギサさんの家族はお母さん一人。そのお母さんが、がんになってしまい、入院することに。そんな母の治療に役立てる為にも、製薬会社の営業に転職することにした。多忙の為、徐々にお見舞いには行けなくなる。そんな頃、ナギサさんと同じように、中途採用で入社した箸尾玲香が、ナギサさんを慕うようになる。彼女は「早くできる人間になりたい」と、やる気に溢れていた。お昼も一緒に食べ、共にいる時間は、ナギサさんから学び、逐一メモをとっていた。彼女はメモ魔だった。

メモ魔

何事にも全力で突き進むところは、メイに似ていた。

時を経るごとに仕事に忙殺される玲香。その表情は段々と余裕が無くなっていった。そんな玲香を心配して、ナギサさんは声を掛け、栄養バランスも考えて、お弁当を作ると申し出て、仕事もフォローすると伝える。玲香は、先輩がいなくなり、「仕事が倍になったけど、まだ頑張れる」と自らを励ましていた。しかし、ナギサさんは、「今思えば、彼女は助けを求めていた。私はそのシグナルに気付きませんでした」と後悔していた。

ナギサさんも仕事が忙しく、母親のお見舞いにも行けない日が続いていた。そんなある日、母親の病状が急変したとの連絡が入り、急いで病院へ向かうと、母親は既に亡くなっていた。

母死

母親の為に、製薬会社に転職したはずなのに。忙しくてお見舞いも行けず、死に目にも会えず。なんという皮肉だろう。

そして、母親の葬儀の準備をしている時、玲香と電話で話をする。仕事で葬儀には行けないと。そして、「ナギサさん、私・・・」と言いかけた時、葬儀屋からキャッチが入り、会話は終わる。

それは、玲香の最後のサインだった。電話が切れた後も、「皆に迷惑をかけないように、私頑張らないと・・・」と呟いていた。

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責任感が強い人の、自分を追い詰める典型。苦しんでいた玲香を、余裕がなかったナギサさんは、助けられなかったことを悔やんでいた。そして、玲香は倒れてしまう。

「ナギサさんは、いつも『大丈夫ですか?』って聞いてくれて、『大丈夫です』って答えてたけど、もう無理です。私、笑って答えられない・・・」

もう無理

その後すぐ、玲香は会社を辞めた。メイを過剰に心配していたのは、玲香のことがあったからだった。

ナギサさんは、玲香がつけていたメモを、「戒め」として預かっていた。母の容態が悪化していたのにも気付かず、玲香の異変にも気付かず、何が「人の為に生きたい」だと。本を見るたびに思い出していた。病院で、玲香を見かけた時、まだ通院していると知って、やっぱり自分を許してはいけないのだと、思っていたのだった。

戒め

その話を聞き、メイは動き出す。

病院で玲香が来るのを見張り、部下の協力のおかげで、玲香を見つける。
そして、メイは玲香を連れてナギサさんの家に。二人の間を取り持つのだった。

ナギサさんは、玲香に対し、自分のせいで追い詰めてしまった。全て自分の責任だと謝るのだった。

ナギサ謝罪

「謝るは私の方です、私がナギサさんに寄りかかって、勝手に自滅したんです」
「いえ、私が気付いてさえいればあんなことには未然に防げました」

話が堂々巡りする中、メイが場を仕切る。今度は玲香の番。

(玲)「仕事に忙殺され、私には仕事を辞める選択肢しかなかった」
(ナ)「退職して一切連絡が取れなくなったので、私はてっきり・・・」
(メ)「ナギサさん、なんで今日箸尾さんがここに来てくださったと思いますか?」
(ナ)「それは・・・」
(メ)「箸尾さんは今、幸せですか?」
(玲)「・・・はい」
(ナ)「え・・・?」
(玲)「私は今、すごく幸せです」

信じられないような表情のナギサさん。

戸惑うナギサ

(玲)「今度こそ私、本当に大丈夫です。幸せです!」

幸せ玲香

これを伝える為に、玲香は来てくれた。メイは、ナギサさんが持っていた玲香のメモを、玲香に返す。

(メ)「だって、もう自分への戒めはいらないでしょ?」

ナギサさんは、メモの中身を読んだことはなかったが、玲香がメモが書かれた最後のページを見せると、そこに書かれていたのは、ナギサさんへの感謝の思いが綴られていた。

メモ

玲香は退職後、子供ができてお母さんになった。子供のためにも、自分を大事にしようと思えるようになったのだった。病院にいたのは、通院ではなく、医療事務の仕事をする為で、全てはナギサさんの思い違い。玲香は、家族ができて、仕事もできるようになって、幸せだった。

(玲)「ずっとナギサさんにお礼が言いたいと思っていたので、会えてよかった」

5年間、ずっと自分を責め、苦しめていたナギサさんは、涙を流す。

よかった

ナギサさんの戒めのような呪縛は、氷解したのだった。

帰り、メイを送るナギサさん。

「メイさん、あなたに会えてよかったです」
「私もです」

そう言うと、ナギサさんに抱きつくメイ。

ハグ

それを見ていた田所さん。

果たして、メイの恋も何処に!?


真面目すぎる人の苦しみ

箸尾玲香の場合

箸尾玲香は、責任感が強く頑張り屋です。しかし、「周りに迷惑をかけられない」「自分だけ足を引っ張るわけにはいかない」と、必要以上に無理をして頑張らなければならず、それが故に、心が折れてしまい、会社を辞めました。

彼女の気になる発言で、「早くできる人間になりたい」というセリフがありましたが、これから働く、という状態では、きっとほとんどの人がそう思うでしょう。「早く仕事を覚えて、お役に立てられるよう頑張ります!」と、就職したり、バイトを始める時には挨拶するのではないでしょうか?

もちろん、「早くできる人間」になれるに越したことはありません。そうすれば、収入も増えるだろうし、仕事も楽しめるでしょう。しかし、「できる人間」になる為に仕事をしているのではなく、仕事や人生の醍醐味は、その仕事をしている中や、成長していく過程にこそあると、私は思います。それこそが、「道楽」という考え方です。

目標や結果に捉われると、今を見失いがちです。そして、その為に「頑張る」ことで、罠に陥ることがあります。


「頑張る」という言葉の罠

そして玲香は、自分に言い聞かせるように「頑張らなきゃ」と何度も口にしました。確かに、時には頑張ることも必要だと思います。本来、「頑張る」とは、「忍耐して、努力しとおす。気張る」という意味だそうです。つまり、困難を前に、我慢したり無理をして踏ん張るということです。

だから、「頑張り続ける」ということは、風船に空気を入れ続けるようなもので、いずれは破裂してしまいます。頑張っている人に、「頑張れ」というのが酷なように、自分自身に対しても、「頑張れ」と言い続けることは、苦しいものです。

頑張る姿は、素晴らしいと思いますが、度を超えると、文字通り命を削ることになります。

「頑張る」ことは、必要ではあっても、当たり前ではありません。

厳しい社会において、多くのものを求められます。だからこそ、頑張ることも大事かもしれませんが、頑張り続けなければならないのだとしたら、いずれ身も心も滅ぼしてしまうかもしれません。

頑張ることが、本当に自分のしたいことなのか。幸せに繋がるものなのか。一度、立ち止まって振り返ってみるのもいいのかもしれませんね。


鴫野ナギサの場合

一方、ナギサさんはナギサさんで苦しんでいました。母親の為に、製薬会社に転職したはずなのに、結果的にはお見舞いにも行けなくなり、死に目にも会えなかった。しかも、自分を慕ってくれていた後輩が出していたSOSのサインにも気付けなかったことで、助けることができず、倒れてしまい、会社を辞めることとになってしまった。

ナギサさんは、母親に対しても、玲香に対しても責任を感じ、「自分を許してはいけない」と、玲香のメモを戒めにしていました。ナギサさんもまた、責任感の強い人だったと言えるでしょう。

客観的に見ていたら、ナギサさんの考えすぎで、そこまで背負うことはないと思いますよね。

でも、自分に気付いていないだけで、必要以上に責任を感じ、自分を責めている人は、意外と多いのではないでしょうか。少なくとも、思い当たる経験はあるのではないでしょうか?

無責任過ぎるのも良くないですが、責任感が強すぎても、必要以上に負担を背負い、自分を責めることになってしまいます。それが呪縛となって、自分を過去に縛り付けて、今を生きることができなくなってしまいます

ナギサさんはこの5年間、自分を責め、玲香を助けられなかったことを悔いて生きてきました。その後、家政婦となり、今を生きているように見えましたが、病院で玲香を見かけたことで、別人のようになってしまいました。それは、過去に捉われて生きていたからです。

メイが玲香を連れてきたおかげで、ナギサさんの呪縛は、思い違いによって生まれ、自分が勝手に作り出していたことがわかりました。助けられなかった自分が悪いと、「戒め」にしていましたが、それは、本当の意味で向き合わず、避けていたとも言えます。


向き合うことの必要性

自分を責めたり悪く言って、十字架を背負わせることで、良しとすることがあります。私も、特に過去にはそういう傾向がありました。でも、それは向き合わずに逃げていることと同じです。なぜなら、向き合うことの方が怖いからです。

スーパー家政夫のナギサさんも、ダメダメになってしまうくらい、心が乱れました。自分が悪いと決めつけて、向き合うことから逃げていたのです。

向き合うということは、それくらい怖いものだということです。

でも、メイおかげとはいえ、いざ向き合ったら、全くの思い違いで、恨まれているどころか、むしろ感謝されていたわけです。意外と、向き合うまでは恐怖でも、向き合ってみたら、なんてことはないことなのかもしれません。

そして、恐怖を乗り越えて向き合ったナギサさんが流した涙には、私も感動しました。

もし、ナギサさんが向き合わずに逃げ続けていたら、一生自分を責め続けて、メモ帳を見ては、自分を戒める呪いにかかっていたことでしょう。そんなナギサさんを、メイは救ったんですね。


改めて、ナギサさんと玲香は、タイプは違うものの、似た者同士なんだなと感じます。特に、真面目な人や責任感が強い人は、この二人のような罠に陥ることがあると思います。

私自身、今は「道楽家」と語ってはいますが、根は真面目で、責任感も強いんですよ(笑)
昔、箸尾玲香のように、苦しんだことがありました。それについては、また別のコラムで述べたいと思います。


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