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ノーサイド・ゲーム⑦「感動を生み出す美学とは」

簡単なあらすじ

ライバルのサイクロンズは、アストロズの主力である浜畑の引き抜きに動いていた。その情報を聞いた君嶋は、浜畑に引き留めるよう頭を下げる。浜畑の夢は、「アストロズで優勝すること」だった。浜畑はアストロズ残留を決めていた。一安心した君嶋だったが、サイクロンズの狙いはもう一つあった。アストロズ唯一の日本代表選手の里村が、サイクロンズを移籍することになった。

シーズン直前のエースの引き抜きは、あまりに卑怯なものではあるが、一つだけ対抗できる手段が、移籍承諾書を出さないということ。承諾書を出さなければ、里村は1年間試合に出ることはできない。ただでさえ強いサイクロンズが更に強くなり、優勝を必然とされたアストロズにとって主力が一枚抜けることは、優勝が更に厳しいものになってしまう。君嶋は承諾書を出すか悩んでいたが、アストロズの選手たちの方が、承諾書を認めていなかった。なぜなら、大事な家族が自分たちを捨てて、ライバルを選んだからだ。

そんな里村に、工場の同僚も冷たく接する。ラグビーを捨てた里村に、遠慮なく大量の仕事を任せて帰ってしまう。一人残業する里村の元に、浜畑が仕事を手伝いにやってくる。「どうして?」と驚く里村に、「家族が困ってるんや。手伝うに決まってるやろ。早く終わらせて練習せぇ。」と、男気を見せる花畑。
仕事を終えた里村は、残って練習をしていた選手の相手をする。サイクロンズ行きを決めてから、一緒に練習しなかったが、里村は最後に何かを残そうと練習に付き合ったのだ。その姿を見たアストロズメンバーは、思いを一つにする。

別れを告げず、立ち去ろうとする里村。そこに、アストロズメンバーが現れる。
アストロズのメンバーは、一度集まり、浜畑を中心に、里村について話し合った。
「今まで一緒に戦ってきた仲間が、今度は世界で戦おうとしている。俺ら家族の誇りやないか?本当は、皆同じ気持ちではないのか?」
キャプテンのテツも、
「里村が1年間も試合に出られないのは、ラグビー界にとってもマイナスだと思う。それに俺たちは、里村がいるサイクロンズに勝って優勝したい。」
その言葉に、選手全員心を一つにする。君嶋は、
「君たちは人が良すぎる。勝つための戦略として間違っている。だが、私も賛成だ。それが、アストロズの戦い方だな!」

その思いを、里村への決意表明と挑戦状としてぶつける。
「どこへ行こうと好きにしろ。だがな、だらしないプレーをしてアストロズの名を汚したら絶対許さない!」
そして君嶋は、遺跡承諾書を里村に渡し、送り出した。

里村無き後、戦力ダウンを嘆く君嶋だったが、里村が出て行った本当の理由は、佐々の存在だった。佐々の成長と七尾の加入により、自分がいなくてもアストロズは大丈夫と思ったからこそ、出て行く決断をしたのだった。


M&Aは卑怯なことか?

君嶋は、サイクロンズが開幕直前に里村を引き抜いたことを「卑怯」だと言いました。確かに、タイミング的には、悪意もあるしそう思っても仕方ありません。君嶋の視点で見たら、当然そう感じてしまうでしょう。しかし、経営の世界ではM&Aは日常茶飯事だし、読売ジャイアンツのように、資金力があるチームが主力を引き抜くことは、それも一つの戦術です。より良い環境で、条件でプレーするのは、選手として当然の権利であり、日本を背負うのであれば必然です。弱いチームで戦って勝つというのは美学です。しかし、美学があって勝てるなら苦労はありません。でも、弱いチームが強いチームを倒す方が、ドラマがあって面白いのもまた事実です。

自分の美学と覚悟

それに、ドラマでも言われていましたが、どんなに良い条件でヘッドハンティングされても、今いるチームの方に価値を感じていれば、移籍することはないと思います。仮に、お金の為にやっているのであれば、お金で釣れるんでしょうし、優勝したいなら優勝できるチームがオファーをしたら釣れるんでしょうし。里村にとっては、「優勝」と「練習環境」が一番の目的でした。アストロズは、家族のような絆の深いチームではありますが、里村にとっては、家族の絆より優勝や練習環境の方が大事だったのです。というより、家族の絆だけでは得られないものがサイクロンズにあったから、オファーを受け入れました。最終的には、それを否定することも、自分たちの美学を押し付けることも、家族だからこそしませんでした。

里村は、移籍して初めてアストロズの絆を実感することになると思いますが、価値観は人それぞれだし、最終的には本人がどう思うかということを、他人がどうこうできるものではありません。むしろ、誰かに決められるようなものであれば、うまくいかないだろうし、他人に意思を捻じ曲げられる程度のものなら、どちらにしてもうまくいかないでしょう。

問題は自分の本音を気付かせる

何かが起こらないと、客観的に気付くことができなかったりします。人生には時々に、真価を試されるようなことが起こるものです。その時に、潔く諦めるか、みっともなく足掻くか、色々あると思いますが、「なんでこんなことが起こるんだよ!」っていう時は、原点を見つめ直したり、本当に大事なものが何かを気付かせる機会なんだと思います。

今回は「美学」をテーマにしたコラムですが、自分が試されるような出来事が起きた時、そこで貫きたいと思えるものが「美学」です。貫きたいわけじゃないのに変えられないのは、変化を恐れて逃げているだけです。自分の美学に基づいた判断なのか、変化を恐れて逃げているだけなのか、もしかしたら、自分でも気付いていないようなことを発見することもあるかもしれませんが、しっかりと向き合うことは、アストロズのメンバーと里村のような、感動シーンが自分の中に生まれるのかもしれません。

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