【短編小説】願いを叶える星座

「ねえ、聞いたことある?マシュマロ座の噂。見た人は一生幸せになれるんだって。」
彼はそう言った。冬の空。一番星が綺麗に見える季節。河川敷、雨上がりの少し湿った草の上で私たちは二人、肩を並べていた。冬の空で星がよく見えるのは、空気が乾燥していて大気中に含む水蒸気が少なくなるからだと前に何かの本で見たことがある。
「それってオリオン座じゃないの、?」
と私は言った。
「それが違うんだよ。形とかは似てるんだけど、天の川みたいにそこだけに明るい星が集まってるの!それがオリオン座みたいにとっても大きいの。」
彼は手を大きく広げながら言った。
星が集まっていると言えば牡牛座のプレアデス星団が有名だけれど、牛の背中にあるそれはとても小さくひとつのとても明るい星のようだった。それがとても大きいのだから不思議であるし、本当にあるとするなら想像もできないくらい明るいのだろう。きっと夜なんてなくなってしまうくらいには。孤独な夜を消し去ってくれる星座。そんなものが本当に存在するなら、私の前に現れて欲しいものだ。

「そんなのあるわけないよ。図鑑で見たことないもの。」
「そうだよね!でも、ロマンチックじゃない??」
「まあ、たしかにね。」

そんな会話をしながら2人、星空を見上げていた。これがいつの記憶なのか、また現実なのか、夢の中なのか。私には分からなかった。そして隣に確かにいた美しい顔をした少年のことも今では思い出せない。記憶というのはとても不確かなもので、過去のことになればなるほどそれがどんどん薄れて、実際に起きたことなのか、夢なのか。区別できなくなっていく。それでも確かに私の深く、奥底の方に彼はいた。星空と、そしてマシュマロ座の噂が。


1. 入院

怖い。初めてのことには何でも、そんな感情を抱かずにはいられない。そろそろ桜が咲き始める季節だろうか、冷たい風と暖かい日差しに胸を躍らせる私と同い年くらいの学生たちをここに来るまでに多く見かけた。私は、学校には行けない。初めての場所。私は緊張やら恐怖やらを感じていた。知らない場所に一人で乗り込む。ここでは誰も私を知る人はいない。きっと、誰も私を助けてはくれない。どうせ服は着替えることは知っていたけれど、一番お気に入りのピンクの花柄のワンピースを着てきた。靴は柔らかいベージュのブーツ。アクセサリーなどは何もつけず、髪はおろしている。前髪を巻いたりもしない。私の入院が決まって両親は泣きながら見送ってくれた。あまり多くのものは持って来れなかったのだけれど、もう何一つ、必要ないと思った。多くの才能を持って優しい親のもとに生まれて、たくさん愛して貰えて、もう何も必要はない。私の前世はきっと医者か何かだと思う。そうでは無いかもしれないけれどきっと、立派な人だったのだ。私はたくさんの徳を積んでこの世に生まれて神に愛されている。ただ一つ、思い残したことと言えば"彼"のことだった。

彼、かれ?彼って誰だったっけ。幼い時に確かに隣にいて、でもいつの日か私の前からいなくなってしまった人。大切な人は、大切なものは絶対、壊れてしまう。私のそばからいなくなってしまう。嫌だ。嫌だ嫌だいやだ。嫌だ、ひとりにしないで居なくならないで。私のそばを離れないでお願い。私はいつでもひとりぼっちだった。愛なんて関係なく孤独でこの胸が傷んで仕方なかった。眠れない夜と孤独を、いつも助けてくれた君がいなきゃ、ひとつの夜も、冷たい冬も、乗り越えられやしない。私に春は、来ない。

「春が来るって書いてはるきちゃん、素敵な名前ね」
病院に着くと優しそうな看護師さんが迎えてくれた。彼女は白い服を着ている。ここではみんな白。きっと私もそうなるのだろう。ここではきっとみんな同じで、何も気にすることなどないのだ。私もみんなと同じ。お医者さんのお話も聞いたけど、なんか難しくてよくわからなかった。
「春来ちゃん、今日からここがあなたの部屋よ。」
看護師さんは屈みながら私としっかり目線を合わせて、まるで小さい子供を相手にしているかのような優しい声で言った。案内された部屋は白く、ベッドがぽつんと置いてあるようなそれだけの場所だった。窓はないけれどしっかり明かりがついていて明るい。つまらなそう。一人部屋。他に人はいないのだろうか。
「不安?」
看護師さんが眉を下げて私の方を見る。私は何も言わずにこくりと頷く。
「そうよね。でも大丈夫。心配しないで、しっかり休んでね。」
そう言って看護師さんは部屋を出ていった。1人取り残された私は部屋を見渡す。もちろん先程とは何も変わらず、つまらない景色だった。ここに持ち込めるものは本当にわずかで、大好きだったカッターナイフもぬいぐるみもお留守番だった。本も図鑑もない。星空を見上げることすら許されないこの場所で、今日から1人。私の入院生活が始まるのだ。私にとって本や図鑑がないことはしぬことと同じだ。学ぶことをしない人間はみんなしんでいるのだ。わたしはここで毎日しぬのだ。しにながら生きる。意味のわからないことを言っているのは承知している。この世界において、矛盾のないことの方が少ない。つまり、綺麗な解など存在しない方が多いのだ。こんな意味の無いことを考えながら私は、有り余るような時間を潰して過ごしていく他ないだろうと考えていた。少なくとも誰かが来るまでは。




2.理想の人と春

「春来ちゃん、ご飯の時間だよ」
看護師さんが食事を運んできてくれる。私は軽く会釈をして、口パクでありがとうと言う。そうすると看護師さんは優しく微笑んでくれる。美味しいけれどカロリーが気になる。病院食って薄いイメージあると思うが、実際のところそうでも無い。カロリー計算というのは1度始めてしまうと終えることが出来ない呪いのようなところがあると思う。私は確かに1度は痩せたいと思ったのだ。私の体重は落ちるところまで落ちて、もうその必要が全くなくても食料品のパッケージの裏に書いてあるあの小さい栄養表示を見るのをやめることが出来ないのだ。太る原因というのはカロリーだけではないということはダイエットを経験したほとんどの人が知っているであろう。例えばご飯一杯の140kcalとチロルチョコ2個の140kcalではなにも同じでは無いのだ。その数値が同じような見た目をしているだけである。
「大丈夫だよ。春来はもう少し食べた方がいいんじゃない?」

そんなことを考えていると彼の声が聞こえてきた。嫌だよ。可愛くないと生きてる意味ないからさ。

「なんだよそれ」

私は痩せていれば可愛いとは思っていない。ただやめられないだけ。これはとても辛いことなので今でも痩せたいという気持ちを捨てないでいる。痩せれば可愛いという呪文を私は自分自身に唱え続ける。同じことでは無い。原因と結果の順序が変われば全く別の意味になるのだ。いつからか覚えてないけれど、同い年くらいの男の子が私の部屋に入ってくるようになった。背が私よりも20センチくらい高くて、顔も整ってる。髪は黒く、触り心地が良い。柔らかすぎず固すぎずとてもちょうどいい心地だ。
「めずらしいじゃん、春来ちゃんから触ってくるの。」

きもいからそのよびかたやめて。

「ちょっとひどくない?」

彼の名前は葵。何故か私の心の声が聞こえるらしい。どこから来たのかわからないけれど、この病院に入院しているらしい。私と言葉を交わして会話出来る唯一の存在だ。葵が来てからはここにいても寂しくなくなったのだけれど、私は17歳の女の子だ。当然外に出てやりたいことがたくさんある。たとえば、春には桜を見て甘いものが食べたい。団子と言いたいところだが私はパフェやクレープが食べたい。大好物なのだ。何も考えず、何も計算せずに食べられる甘いもの。夏には好きな人と一緒に花火を見たい。花火というのは不思議で、小さい頃はうるさいだけだと思っていたが見れなくなるとそれはそれで寂しいものだ。いつでも見れる訳では無いからこそ特別感があり、それを特別な人と肩を並べて一緒に見たいのだ。空を、夜空を見上げると言う行為は私にとってはとても特別なことだった。秋には紅葉やイチョウを本に挟んだりして、あと温かい焼き芋も食べたい。できればスイートポテトを作りたい。冬には手編みの暖かいマフラーを巻いて、真っ白な雪に囲まれて雪だるまを作ったり、雪合戦をしたい。そして疲れたら部屋に戻ってこたつの中でみかんを食べたい。

「ねえ、それって楽しいの?」
と葵は言った。
楽しいに決まってるじゃんか。私も去年まではお外で沢山遊べたのよ。

「なんで今はあそべないの」

ここにいるからだよ。

「ここにいても、出来ることはあるよ?」

私のしたいことはないの。

「ある」

なんで葵が知ってるの。

「だってほら!見てよ。」

葵が指さしたのは窓の外。強く風が吹き私の髪を攫う。私は目を丸くして驚いた。そこには私が願ったものがあった。

「綺麗だね、桜ってこんな大きかったんだ。春来、知ってる?ソメイヨシノってキメラなんだよ。」
と葵は言った。それに対して私は何も言わなかった。頬を伝うものには目もくれず、窓の側へ駆け寄った。今は春だったんだ、私は知らなかった。ここに来てもうどれくらい経つのかも分からないから。





4.理想の人と夏

今日も変わらない。ベッドしかない部屋。届かない天井。優しい看護師さん。

「退屈?」

そう言ってベッドに寝転ぶ私の顔にぐっと近づいてきた。今日も葵が私の部屋にいる。いつからだったか思い出せないのだけれど。気づいた時にはそれが当たり前になっていた。目が大きい。いつも寝癖なくて羨ましいな。まつげも長い。

「恥ずかしいからあんまり褒めないでくれる?」

全く照れてないくせに。葵はいつも余裕な顔をしていてむかつく。私も言いたい。あんまり見つめないでくれる?

「見ているだけで見つめてないよ。春来はいつから話さなくなったの?僕が心の声を聞けるから話さないだけ?」
と葵は言った。私は首を振った。

違うよ。正直私も何があったかはあまりよく覚えていの。気づいたら立ち上がれなくなっていて、全てが怖くなって誰のことも信じられなくなっていた。私は声が出なくなった。不思議だよね。こんなに大事なことなのに、なんで忘れちゃうんだろうね。

「不思議なことないよ」
と葵は言った。
「世の中にはね、矛盾したことがたくさんあるんだ。だから、答えが出ないことを恐れることはないよ。」

私は、どんなことにも答えはあるって信じてるよ。少なくとも今はそうしていたいの。そのうちそれが壊されるとしてもそれは今じゃないと思うんだ。

葵は表情を変えないでずっと微笑んだまま私をを見ていた。

「ねえ、僕春来にずっと聞きたいことがあったんだ」

なに?と言って、私は彼の方を見る。

「春来が前に言ってた好きな人と花火が見たいって」

ああ、言ったねそんなこと。でももう見れないよ。花火は空高くに咲く花だから。ここからじゃ見れないんだよ。

「春来、花火を見ようよ。」

だから見れないって、どうやって見るのよ、無理だよ。

「見れるよ!春来、ほら!」

葵は両手を大きく広げて、カーテンを勢いよく開けた。そこには、大きな花が空いっぱいに咲いていたのだ。私はすぐに窓のそばに駆け寄った。葵の手が私の首の前を通って肩にのった。私の頭の上に顎をのせる。

「ね!見れたでしょ?」

なんで知ってたの?今日花火だって。

「毎年この時期になったら花火大会やってるの知ってたから。ここからも見えるかなってね!春来が楽しそうでよかったよ。」

すごいね、花火って綺麗だね。

「どう?好きな人と花火を見た感想教えてよ」

少しいやな言い方だけど、嬉しいかったよ。

「それはよかった!」

やりたいことが二つも叶ってしまった。ありがとう。葵。
ここに来て、夏の思い出を作れるとは思ってもいなかった。病室の窓から見た花火は、今まで見たどれよりも美しかった。打ち上がった時の音も開いた時の心臓を打つような振動もその全てに感動した。



5. 理想の人と秋

私はずっと部屋の中にいる。いつも同じような服装で居られるのはこの部屋が快適な温度に設定されているせいだ。そういえばここに来る時に持ってきた荷物はどこに行ったのだろう。そもそも荷物なんてものはあったのだろうか。そんなことを考えていたら、葵が部屋に入ってきた。

「春来!今日は何する??」

今日も何もしないよ。ここでじっとしてるしかすることないよ。面白いことなんてないし。

「面白いものは自分で見つけるんだよ春来。」

見つけられるかな。
私がここですることと言えば、朝起きて食事をとって、葵と話をして昼が来るのを待ってまた食事をしてといったところだ。時間を消費するだけの毎日に楽しみなんて見出せそうになかった。

「あ、でも春来、今日はやる事あるよ。」

え?なにをするの?

「ほら!春来がやりたいって言ってたこと、まだあるよ」

あるけど、花火見てからそんなに経ってたっけ?

「そんなこと気にしなくていいんだよ!ほら!」

そう言って葵は病室のカーテンを思い切り開けたのだ。そこには、綺麗なオレンジが窓いっぱいに広がっていた。葵は窓を開ける。その時、ビューっと強い風が吹いた。私は咄嗟に閉じた目を開くと葵が私の目をじっと見ていた。

「綺麗だね春来。ほら!これ、本に挟むんでしょ?」

葵がわたしに手のひらくらいのおおきなもみじの葉を渡す。あ、でも私本なんか、

「何言ってるの?春来、本ならここにあるよ。」

あ、そうだっけ、私本持ってきてたんだ。葵は私『年に一度の宇宙旅行』と書いてある本を手渡した。私はその本にもみじを挟む。

「これでまたひとつ春来がやりたかったことが叶ったね」

私があの時、ふとこぼしただけの希望を叶えてくれる理想の男の子。彼は一体私のなんなんだろう。私のことをどう思っているのだろうか。

「春来の事大好きだよ」

ずるいよ葵だけ私の心読んで。

「しょうがないよ聞こえるんだもん」

葵はだれなの?なんで私のそばにずっといるの?どこから来たの?

「その時が来たらわかるよ。そろそろだから待っててよ。」と葵は言った。
葵は一瞬だけ悲しい目をしていたような気がした。

6.理想の人と冬

毎日を消費する日々は何も変わらなかった。私がいつまでここにいるか、誰も教えてくれない。私はなぜここに来たのか、みんなと一緒に学校に行けないのか。みんなと言っても誰の顔も名前も思い出せないのが悲しい。私はどんなふうに生きてきたのか、不思議に思うことがある。
「最近寒くなってきたね」
葵がいつの間にか私の部屋のドアのまえにいて、いつものように私に話しかけた。

そうでもないよ。だってこの前紅葉見たじゃない。そんなすぐ寒くなるの?

「あれから結構経ってると思うけどな。」
私の周りをうろうろしながら葵が言った。随分と楽しそうな様子だ。

そうなのかな?私わかんないや。

「春来はいつもそんな感じだよね。」

ここにいると何日経ったかもよくわかんなくなるからね。

「そうなんだね、次で最後だよ春来!」

最後?なんのことだろう。
私が考えていると、葵はドアに寄りかかっていた体を起こして私の方へ来て
「マフラー巻いて雪見るんでしょ??」
と言った。

まだ覚えてたんだ、いいよそんなの。雪なんてここじゃ滅多に降らないんだからさ。それに、私は毎日白い壁に囲まれてるからさ。白なんて見飽きてきたくらいだよ。

「雪と壁は全然違うよ、それに今日は雪が降るんだよ。」
葵はまるで幼い少年のような表情で言った。

降らないよ。そんな都合のいいことないよさすがに。

「春来は疑い深いなあ、僕が降るって言ったら降るんだよ。ほら春来!一緒に見に行こう」

行けないよ私は、この部屋から出れないんだもの。

「それにね、春来。冬には星も見れるんだよ。こんな話知ってる?マシュマロ座って言って見た人を幸せにするっていう伝説の星座!見てみたくない?」

そんなの御伽噺でしょ。高校生にもなってそんなの信じてるわけないよ。恥ずかしいよ。

私は少し頬を膨らませて葵を睨んだが、彼は表情を変える様子がない。ずっと綺麗な笑顔のままだった。彼が何を考えているのか全く理解できない私は過去の曖昧な記憶を辿ろうと努力していた。マシュマロ座というのは確かに聞いたことのある話だった。でもそれが夢なのか現実なのか、どこで誰に聞いたのか。何一つ思い出すことができなかった。

「恥ずかしくなんかないよ。だって本当にあるもの。」

葵くんはロマンチストなのね。

「ばかにしてるね!春来ひどい」
と葵は言った。先ほどの私のように頬を膨らませているが、それでも彼の感情の変化は全く見られなかった。それはとても不思議な感覚だったがなぜか怖くはなかった。

そんなことないよ。

「じゃあ僕を信じて」

それはまた別だよね。

「これが最後だよ」

いきなり葵が真面目な顔になった。そして悲しい目をして私を見ていた。

「僕のこと信じてくれる?」

私は静かに頷くしかなかった。すると葵は微笑んでベッドに座っていた私の両手をそっと引っ張る。私はベッドから体を起こし、立ち上がった。

「春来、僕が目を開けていいって言うまで絶対開けちゃだめだよ?わかった?」

わかった。開けない。

私は静かに目を閉じた。それと同時に肩と背中あたりに彼の腕の感触があって、葵は私の体を抱いているのだということに気づいた。それから間もない間に葵の声が聞こえた。

「春来!春来!もういいよ!目を開けて!」
そう言われて私は目を開けた。いつもとは違う光に私は目を疑った。

え、なんで外に、なんで屋上にいるの。

「凄いでしょ!見つからないように連れて来れたよ!」

いやさすがにそれは無理があるよ。でも嬉しい。葵はすごいね。
と、私は葵の方を見て伝えた。

「春来が喜ぶなら俺はなんだってするよ。ほらマフラーだよ。」
そう言って葵は手に持っていたマフラーを私の首に巻いてくれた。

マフラーも持ってきてくれたの?

「だって春来が欲しいって言ったから。それにほら!雪が降ってるから寒いでしょ?」

私は上を見上げた。本当に、葵が言った通り雪が降っていた。白い花達が私の額を濡らしていた。葵は私の手を握って、私もその手を握り返した。

「雪って綺麗なんだね。」

そうだよ、雪は特別なんだよ。私は冬が一番好きなの。

「春来、見てよ!星が沢山!」

私が再び空を見上げるとそこには、満天の星空が広がっていた。空いっぱいに広がったそれは眩しすぎるくらいに輝いていた。幼い頃本で見たような夜空だった。

綺麗。プラネタリウムみたい。

「春来」

なに?

ふと横を見たとき、葵の手が私の手から離れていった。そして葵は星たちに吸い込まれるようにして空に高くに上がっていったのだ。信じ難い光景に私は何も言えず、ただ葵の事を見上げていた。彼は悲しそうな目をしながらそっと微笑んだ。

「ほら!春来。マシュマロ座は本当だったでしょ?」

私は柵を飛び越え、空へ向かって思い切りジャンプした。

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