第53話 変わり始める道化師のオレンジ
月のルーナが死神を見た瞬間、実はドン引きしていました。
彼は夏の海を楽しんでいるのか、緊張感の欠片もありません。
ついさっきまで、すさまじい闘気を放ちながら、ネネと格闘戦を繰り広げていたとは思えない程のくつろぎっぷりです。
「死神のやつ、あの余裕はどっから出てくんだ」
さて、道化師のオレンジが質問する度に、死神が答えていました。
しかも何やら2神で、何度も何度も何かを試しています。
よく見えないので、何をやってるのかはさっぱり不明でした。
「あいつら、いったい何やってんだ」
ルーナはスイカの残りを食べながら、しばらく観察を続けます。
するとオレンジが満面の笑顔を見せて、死神と握手を交わしました。
よくわかりませんが、何やら成功したらしいです。
オレンジは小走りで、ルーナとネネのもとへ帰ってきました。
「オレンジ、いったい何をやってたんだ?」
「うへへへへ」
「何だよ、その笑いは」
「実はね・・・」
オレンジはルーナの耳元で、小声でひそひそ話を始めます。
どうやらネネに聞かれたくない内緒話のようです。
「私は、これからサンタ・ブラックの幹部と戦っても大丈夫になった」
「え!どういうことだ、それ!?」
「しーーーー!ちょっと、ルーナ姉ちゃん声が大きいって」
「あ・・・すまん、つい」
意外な答えに思わず大声を出してしまったルーナですが、再び小声に戻しました。
「だから、何をどうやれば大丈夫になるんだよ・・・」
「それはね・・・まだ内緒だし・・・」
「何でだよ、教えてくれてもいいだろ・・・」
結局ルーナは、オレンジが何をやったのかさえ教えてもらえませんでした。
でも今までの経験から言えば、ロクでもないことやったに決まっています。
とはいうものの、今回は死神と相談しているので、意外にまともなのかもしれません。
ルーナは、オレンジの変化に気付きます。
さっきまであったはずの寄生蟲の気配が、すっかり消えていたのです。
「あれ?絵本に封印した寄生蟲だけどさ・・・どこにやったんだ?・・・」
「どこにもやってないけど。まだ持ってるし・・・」
「ウソつくなよ・・・気配が無くなってるぞ・・・」
「う~ん、確かに今持ってないけど・・・でも、持ってる・・・」
「どっちなんだよ・・・」
「いいじゃん。その種明かしは、また今度ね・・・」
「やけに、もったいぶるんだな・・・」
寄生蟲とは道化師のオレンジが、サンタ・ブラックによって付けられた洗脳用の地球外生命体です。
ある意味で寄生蟲に寄生されていることが、サンタ・ブラック配下の幹部の証でもあります。
しかしこのことが逆に災いとなり、人間界で他の幹部連中と戦うわけにはいかなかったのです。
それをどうやって解決したと言うのでしょうか?
道化師のオレンジは内緒話をやめて、大きな声を出しました。
「今からドールの街の悪霊退治、みんなで相談しようよ」
オレンジの掛け声で、ドールの街の悪霊退治に向けて事前打ち合わせが始まります。
どういう運命のいたずらなのか、ここに集まっているのは神の世界でも最上位クラスの神々です。
人間がこの世に生まれた25万年前から存在し、世界の全てを管理している原初神の「道化師のオレンジ」と「月のルーナ」。
ほぼ同時期から存在し、人間の魂(悪霊)を管理している「死神」。
そして最後に控えるのは、経験を積むたびに異常な成長を見せる「サンタ・ネネ」です。
ネネはまだまだポンコツ女神ですが、原初神を圧倒する力を見せる時があります。
死神曰く、神々は大きな問題を抱えていて、それは「幼年期を超えると、一切成長しなくなること」なのだそうです。
その原因は「大きすぎる力を持っているがゆえに、他者についての興味を失ってしまうからだ」と言っています。
それは原初神と言えども、例外ではありません。
サンタ・ネネの行動は一見ムチャクチャに見えますが、成長する過程を通して他者に対して大きな影響を残します。
すでに原初神の道化師のオレンジは、再び成長する道に導かれて歩き始めたようです。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
原初神
1.混沌のカオス
2.時のユイナ
3.太陽のヘリオス
4.大地のガイア
5.終焉の奈落
6.月のルーナ
7.道化師のオレンジ
25万年前に人類が誕生した頃から存在し続ける最高位の神格を持った神々です
数字の順で生まれています
天の川銀河太陽系の最初の神は、父であり母でもある「混沌のカオス」
「時のユイナ」が長女で、「道化師のオレンジ」が末の妹ということになります
不死とも言える長命種なので、自分達が何歳なのか数えていませんが、25万歳ぐらいです
「死神」も、だいたい同じぐらいの年齢になります
一方で「サンタ・ネネ」は、まだ510歳です
圧倒的な年齢の差がありますが、実はネネの年齢には大きな秘密があります
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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