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ドイツ滞在者は「ビザなしで」ドイツ国外旅行に行けるか?

ドイツ留学・滞在をしている人は沢山います。そんな人たちの永遠の悩みが、「ビザなしで」ドイツ近隣の国に国外旅行できるか、という少々犯罪染みたものです。当然、韓非子や商鞅のように法律重視の方なら、「何言ってんだ、法律的にダメだろ!」とツッコみたくなるところ。

このドイツ留学者の悩みを、ドイツ留学をしない・興味ない人でもなるべく分かりやすく解説し、実際旅行できるかをまとめていきます。


①「ビザなし」の悩み

法学科出身でもないので滅多なことは言えませんが、前提として「日本のパスポートを持っていれば、海外の国の一部は90日まで海外にビザなしで過ごせる」というのがあります。ドイツの場合、日本からドイツに来て、90日以内の滞在なら特別な申請をする必要はありません。

Q1-7.ビザなしで滞在できる90日を満了して帰国、いつから再入国は可能ですか?(日本国籍の方)

A1-7.ビザ免除協定によるビザ無し滞在が認められている期間は、「あらゆる入国日より180日の期間内で最大90日まで」とされており、「入国される日より180日を遡り、その期間における滞在日数が90日を越えない事」とされています。


次回入国を予定している日から180日遡り、その期間内の滞在日数が90日を越えていないかご確認ください。いずれの場合でも帰国後3ヶ月が経過すれば、新たな180日間の期間内における最大90日の滞在日数として計算を開始することができます。ただし、滞在日数についてはご自身でご計算ください。(大使館・総領事館では各々の滞在日数の計算・確認はいたしません)

https://japan.diplo.de/ja-de/service/-/1032146
ドイツ大使館公式サイト

でも留学は普通90日よりもっとかかるでしょう?、その通りです。ドイツの場合だと、短くて半年・長い人は3年など、90日はあっという間の期間です。そういう人たちは、「ドイツ(ヨーロッパ)に90日の残余期間よりもっと長く住んでいいよ!」という国公認の証明書を申請しないとダメです。その証明書が「ビザ」なんです。ビザを申請して手に入れたら、特に留学生の場合、「あと1年ヨーロッパに住んでいいよ」という国のお許しを貰えるんです。

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さて、「ビザを手に入れれば良いだけの話じゃん、何でそんなことに悩むの?」と住んだことのない人には不思議な話。ドイツ留学生や在住者が頭を抱えているのは、ビザの発行が滅茶苦茶遅いこと!ここなんです!

ビザの発行には大学入学許可証やら公的保険入会証明やら、大量の書類を用意して外国人局に提出する準備が必要です。問題は提出後で、自分のビザが来るまでに少なくとも2か月、運悪く長い人は1年以上など、赤ペン先生もびっくりの遅さです。中には仮ビザ(Fiktionsbescheinigung)なるものが手に入る人もいるそうですが、この仮ビザすらも発行が遅れることが多いんです。ドイツは公的機関の手続きが本当に遅い!

ドイツのビザの例

もちろんビザを待つ間に、90日のパスポート残余期間が切れる人がほとんど。法律的には不法滞在の犯罪者となってしまうわけです。もちろん申請準備をしていて申請途中だと証明できれば、即刻強制帰国なんてことにはなりません。ただし、そんなタイミングで警察に見つかれば詰め寄られるのは事実。特に移民問題でギクシャクしているドイツ警察にとって、不法滞在の外国人なんて蕁麻疹の元。老若男女誰でもキツく問い詰めてきます。

みんな大好きドイツ国境警察

やっとタイトル回収ですが、そんなパスポート切れ・ビザ待ち中の「ビザなし」の状態でも、「ドイツ国外へ旅行に行きたい!」と考える人がいるのも無理はない。特に半年留学の人は、折角ヨーロッパにいて6か月丸々ドイツももったいないでしょう。ここからは、実際ビザなしで国外旅行に行くためのヒントを書き残したいと思います。決して犯罪行為を薦めているわけではなく、これを見た人が窮地に追い込まれても責任は取りません

②飛行機で旅行可能な範囲

結局、旅行先で一番面倒なのは、警察に絡まれてパスポートやビザ(滞在許可証)を提示するよう求められることです。特にドイツ警察は陸続きの国からの越境者に対して、ものすごく警戒を強めています。

ここで重要になるのが、「シェンゲン協定」というもの。平たく言えば、この協定に加盟している国なら、出入国の時にパスポートやビザチェックを求められないという協定です。例えば、最初にシェンゲン協定加盟国であるドイツに入国します。その後、パスポートの90日以内だとして、ドイツから他のシェンゲン協定に加盟している国に入国しても、パスポートチェック・入国審査がありません。

この協定は、特に飛行機だと強くて、航空会社以外にパスポートを見せる必要がなくなります(かなり頻度は低いが、チェックイン時に滞在許可証を見せろと言われるケースもある)。なので、90日以内の残余期間が切れていても、シェンゲン協定加盟国間の飛行機移動は大幅にリスクが低いです。

例えば、90日残余期間が切れた状態で、イタリアからドイツに行く際、飛行機を使って入国検査なく移動できたケースがあります。

仮に行きたい国がシェンゲン協定を結んでいなかったら?そうなると渡航は100%不可能です。シェンゲン協定の中に入る場合も、外に出る場合も、空港内で確実にパスポート検査が待ち構えています。なので、飛行機で移動する場合、行き先の国がシェンゲン協定加盟国かを必ず確認しましょう。

LCCのRyanairやWizz Airなどがシェンゲン内の移動におすすめ

③バスで旅行可能な範囲

とはいえ、毎回飛行機に乗る金銭的余裕がない人の方が多いはず。ここでヨーロッパ旅行者が頻繁に使うのが、FlixBus(フリックスバス)をはじめとする長距離格安バスです。特にドイツから近隣の国への移動は、バスだと時間こそかかるものの、飛行機の値段の最大8分の1まで下げられることもしばしば。アプリでオンラインでチケット予約できるのも手軽です。

出入国検査リスト(一例)

バスのメリットは、ドイツ出国時に、ほぼ出国審査が無いことです。上の写真を見れば分かると思いますが、チェコの荷物検査などを除けば、ほとんど警察に会うリスクは低いです。特にフランスとベネルクス三国は緩めです。ですが、出国の容易な国でもドイツ入国には厳しいことがよくあります。特に南側の国は要注意です。これも確率論ではあるので、自分が旅行する際は運悪く検査に遭う可能性もあります。

バスに警察が乗ってきた時点で、パスポートの残余期間が切れていたらかなり問い詰められます。その際は、ビザを現在申請している旨を話せば許してくれる場合もあります。証拠写真があるともっと信じてもらえます。

ですが、警察の全員が全員優しいわけではないので、交渉をしても許してくれない可能性があります。「紙の書類を持っている人以外一切認めない」という頑固な警察がむしろ一般的です。泣きながら「知らなかった、赦してほしい」と言って特別に許されたケースがありますが、毎回乗り切れる得策ではありません。実際にドイツ警察の事務所へ連行され、3時間の取り調べを受けたというケースもあります。

出国が簡単なので、一番安心なやり方としては、バスでドイツを出て、飛行機でドイツに帰ることかもしれません。

FlixBusは深夜帯が安くて人も少ない

④電車で旅行可能な範囲

ドイツにはDB(Deutsche Bahn、ドイツ鉄道)という、日本でいうとJRみたいな全国的鉄道組織があります。基本的にはドイツ国内にしか路線がありませんが、ルクセンブルク・オーストリア・ポーランド・チェコ・ハンガリーなどの一部の国へは、DBの国外路線が通っています

種類としてはローカル線(RE, Regional Express)だったり、特急列車(IC, Intercity)だったりと、料金もそれぞれ異なります。いざドイツ国境を出る際に警察が来ることは、あまりないです。ドイツ入国の場合、電車がドイツ国境に入ってから、時間差で警察の立入り検査が行われることが多く警察遭遇率はFlixBusと同じくらいです(特にドイツ-オーストリア電車国境は確実に警察が来ることで有名)。なので、電車での移動も最終的には博打になります。

DBは国外旅行にも使える

⑤タクシー・車で旅行可能な範囲

絶対にタクシーや車での国境越えはやめて下さい。
理由としては国境検問所が確実に存在するからです。大抵の越境は高速道路上なので、一人一人パスポート入国検査が行われます。警察に出会うリスクはほぼ100%なので、この手段は諦めて下さい。

こんな検問所で期限切れがバレたら…

⑥徒歩で旅行可能な範囲

徒歩での越境は、リスクがかなり抑えられます。例えば、ドイツのFrankfurt an der Oder(フランクフルト・アン・デア・オーダー)と、ポーランドのSłubice(スウビツェ)国境は橋が架かっていて、両国間は徒歩での移動が可能です。電車でFrankfurt an der Oderまで行き、徒歩でSłubiceまで歩いて渡り、FlixBusでポーランドのその先へ行くということもできます。ドイツ側にパトカーが待機していることがあり、その際稀に警察にパスポートチェックを求められることもあるそうです。それでも、その他の交通手段よりはリスクが低めです。

Frankfurt an der OderとSłubiceを結ぶ国境橋

⑦まとめ

ぶっちゃけて言うと、
ドイツ滞在者は「ビザなしで」ドイツ国外旅行に行けます!
ですが、実行は相応の覚悟と度胸が必要です。
特に警察に問い詰められた時、英語・ドイツ語で柔軟に状況説明と交渉をするスキルがないと、本番で焦って間違いを犯したら詰みです。

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安全性を高い順にまとめると、

飛行機=徒歩>バス=電車>>>タクシー・車

といった感じでしょうか。ですが、結局は人のいる場所を移動するので、100%安全な方法はありません。警察も毎回来るわけではなく、来る確率の方が高い、という文言に収まってしまいます。

最後になりますが、本当にリスクを冒したくないなら、
「ドイツから出るな!」
という結論になります。折角ヨーロッパにいるのに強制帰国を喰らったら、取り返しのつかない思いだけが残ります。

留学中何するも個人の自由ですが、絶対に他人の迷惑になることだけは避けましょう。


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