母の事(30代〜40代の頃)

実母の死に目に会えなかった母は、泣き暮らし、精神病院への入院となりました。
幼子を抱え大変だったと、後年、当時の事を父は語っていました。
その3年半後に誕生したのが私です。
母は私を一心に愛してくれました。
当時の育児日記には、事細かく成長記録や当時の家族の出来事が綴られています。
育児に夢中で、実母との別れの寂しさも少しずつ薄らいでいったのかもしれません。
本当のところは母本人にしかわかりませんが。
両親の愛情に育まれ、何不自由なく子供時代を暮らした私。
だけど、うちの母は、よそのお母さんと比べて何か違うと気になってきたのは中学時代だったか。
気分悪そうに塞ぎ込む頻度が高く、気が弱い人なのかと思う節があり、又、婦人科系の病気で入院する事も有り。
そんな折、近所のお母さんが私達兄弟を心配して手作りご飯を持参下さった時に、兄と二人、「世間のお母さんはこんなに美味いご飯を作ってくれるんだ!」と驚きました。
手作りの「鶏の唐揚げ」を生まれて初めて食べました。
今、思い返すと、鶏肉は母が苦手で一切料理をする事がなかったのです。
また、友人の家に遊びに行った時、他の家は、「こんなに綺麗に片付いているのか。」と驚いた事もありました。
母は刺繍や編み物、裁縫等、細い作業を伴う手仕事は繊細に仕上げる一方で、料理と掃除はからきし苦手でした。
それでも何とか、子供達を育てる為に一生懸命ご飯を作り、お弁当を詰めてくれました。
しかし、少しずつ少しずつ、どうにもならない症状が頭をもたげ始めていました。



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