学校現場で「働き方改革」が推進されてきたが・・・

教職はブラックだというイメージが世の中に浸透してきました。働き方改革が叫ばれる以前から，学校現場に身を置いてきた一教諭として感じることを率直に言うと・・・

「どちらかと言えば今の方が息苦しい」

と言うのが本音です。もちろん，改善されてきた部分も少なからずありますし，現在の方が「適正」で「正しい」こともあります。

私が２０代の頃は，確かに自分の中で際限など設定せずにとにかくできることを全力でやっていました。勤務時間という概念はありませんでした。
それは正しくはなかったでしょう。拘束時間は長かったし（もちろん，無理矢理に拘束されていたわけではない）抱えている業務量は明らかにキャパオーバーだったし，帰宅時間も夜の９時，１０時が当たり前でした。

記事にあるような，限りある時間を有意義に使おうとするマインドセットは大切だと思います。現に，ここ数年は私もかなり意識して勤務しています。
大きな校務分掌を抱えていますが，若手の頃と比較すれば勤務時間はかなり少なくなっています。学級経営にしても経験値を積んできたわけですから，今の方が効率的に実践できているのです。

にも関わらず，なぜ今の方が息苦しいと感じてしまうのでしょうか⁉️

ここ数年は特に「ミス」が許されない風潮が強くなりました。
保護者からの要望もかなり細かいし，コンプライアンスという目線でもかなり厳しいです。その上で結果を出さなければならない。

要するに「求められるものが増えたから」だと考えます。

確かにここ数年で，ICTも導入されこれまでより効率的にできるようになった業務が多くあるのは事実です。しかし，それによって表面的には見えていない業務や負担も多いのです。

コロナ禍で前倒しで実施された一人一台タブレットの配布（貸し出し）を一つ例に挙げてみましょう。
一見，効率が良くなったように見えますが実際にはどうでしょうか⁉️
授業で使うにしても，クラスには30人以上の児童生徒が在籍しています。
使用する際に，全員がきちんと持ってくることなんてほとんどありません。そうなると，その子に対する対応を考えて準備しておかなければなりません。忘れた子どもを，自己責任だ‼️と放置できないからです。
また，タブレットが手元にあったとしても，充電ができていない・システムエラーが起きる・ネットの接続が上手くできない・・・といった事象に対応しつつ，こっそりとゲームをしたり好き放題Googleで検索するという子どもにも気を張らなければならないのです。もうそれだけでお腹いっぱいになりそうですね。

もう嫌だ・・・・そう思っているとトドメの一撃
「先生，パスワードを忘れました・・・」

職員室に帰ってからダメ押しの一撃
「タブレット活用に関してのアンケート調査を提出してください」

と，タブレット一つの例でこれです。それが，四方八方から飛んでくる。
目の前の子どもたちと「１対１」で闘っていたはずが，気にしなければならない範囲が360度になった・・・そんなイメージです。つまり競技が変わっているのです。

一つひとつは大したことがない。それでも，そこが可視化されないことが問題の本質であり，その本質は学校教育の仕組みそのものにあります。

「働き方改革」という仮面をかぶった負担

「求められるものが増えたから」と述べましたが，働き方改革が形だけのものになると，それ自体が見えない負担になり得ます。

「働き方改革による負担」は，かなり厄介な存在です。なぜなら，それは「良いこと」という仮面をかぶっているから。働き方改革の観点からという枕詞を付ければ，それを「否」としにくいのです。

私のように不器用で，何の武器も持たない人間からすれば，人より時間をかけてやることでしか結果を生み出せないものだってあります。学級担任制だと，学級経営の責任は個人にのしかかってくることを考えれば，定時だから終わってないけど帰ります・・・は，なかなか難しいでしょう。
その結果，勤務時間内だけでは収まるはずもなく働いてしまう・・・

定時退勤日やノー残業デーに遅くまで残っていると「働き方改革」を進めようと動いているのだから，退勤すればいいのに・・・・
そんな目線が次第にプレッシャーになっていきます。
効率よく勤務時間にスマートに仕事をこなす先生が，いわゆるデキる先生。
定時になっても仕事を抱えている先生は，・・・・・。
なんてイメージが浸透していくかもしれません。悪循環ですね😰

業務削減と仕組みを変えるしかない

もうこれしかないんです。業務を減らさずに，労働時間を適正化することはできません。また，そもそもの学校の仕組みを変えなければ学校は潰れていってしまいます。働き方改革は教員のマインドチェンジも必要だと思いますが，やはり業務削減と仕組みを変えることがセットで必要です。