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女性の政治家が少ないのは、「能力がないから?」

 

今の政治っていわゆるダサピンク?!

 商品の色を決める時、意思決定の場に男性しかいなくて「女子はとりあえずピンクでしょ?」という思い込みから超ダサイピンク色のカラバリが作られてしまい、「え?欲しいものはこれじゃない」と、実際の消費者に受け入れられない残念な商品が生み出されてしまうという現象を「ダサピンク現象」と言います。

 この現象、実は政治にも起きています。

 2021年NYNJが実施した衆院選の30歳以下のアンケートで「政治に積極的に取り組んでほしい課題は、
1位「ジェンダー平等」
3位「妊娠・出産・子育てがしやすい社会環境の整備」
でした。

ハフポスト「衆院選、若者が最も関心あるのは「ジェンダー平等」だった。アンケートから見えたこと 」より引用

 しかし、男女の賃金格差は開いたままで、選択的夫婦別姓は実現していませんし、性交同意年齢は13歳のままで、待機児童はゼロにならず、出産費用は高く、高校の無償化は名ばかり。

 「女性活躍だ!」と政府は声高に言っているのに、実施される政策はなぜかいつも的外れ。この現状は「ダサピンク現象」と言わずして、何というのでしょうか。

国会議員は、本当に「国民の代表」なのか?

 実は、このような状況は何ら不思議ではなく、「政治の場(意思決定の場)に当事者が少ない」ために起きているのです。国会議員は「国民の代表」と言われますが、実態はどうなっているのか、簡単に見ていきましょう。

年代別の議員数

 こちらのグラフは2019年に行われた参院選での当選者と日本の人口全体(2019年1月時点)の年代別割合を並べてみたもの。

総務省「令和元年執行参議院議員通常選挙結果調」より作成

 見てのとおり、40代以上の部分に大きく比重が偏っていて、39歳以下の政治家はほぼいないことが分かります。そもそも参議院の場合は被選挙権が「満30歳以上」、つまり30歳以下は選挙に出る権利もありません

男女別の議員数

 男女比総人口は約49対51。

人口推計 2022年1月概算値」、「令和3年衆議院議員総選挙結果調」、「令和元年執行参議院議員通常選挙結果調」より作成

 だけど、国会議員は衆議院でも参議院でも女性の割合は男性と比較して極端に少ないのが現状。衆議院に至っては10%すら切っているという残念な状態。

 このように国会議員は「国民の代表」とは言いつつも、その年代や性別といった属性を見てみると大きく偏りがあることが分かります。

議員の属性の偏りは「能力」なのか?

 こんな話をすると、

「公正なプロセスで選ばれているのだから性別や年代を理由にするのはおかしい」

「属性に限らず優秀な人間が選択されるべき」

という意見が出てくるのがお決まりです。私たちのSNSアカウントにもこのような声は(ちょっと嫌気が差すくらいに)多く届いています。

 このような意見は、今の選挙では完全な実力勝負で、その結果の男女比。それは受け入れるべきなのだ!という考え方です。しかし、このような考えをする前に、2つの事実を見ていただきたいと考えています。

事実1:候補者になれる男女差

 1つめは候補者になれる男女の差です。

 宝くじは買わないと当たらないのと同じように、選挙に当選するには立候補しなければなりません。しかし、候補者時点で男女比は大きく違っているというのが現実なのです。以下は直近の選挙(比例区と選挙区)における男女比の割合。

令和3年衆議院議員総選挙結果調」、「令和元年執行参議院議員通常選挙結果調」より作成

 見ての通り、いずれの選挙の場合においても男性の候補者の方が多くなっています。割合の多い参院選の比例代表でも30%程度、衆院選では20%以下という状況。これでは、当選者の女性割合が低くなるのも当然といえば当然です。

 ちなみに、こちらのグラフは戦後から現在に至るまでの候補者と当選者に占める女性の割合の推移。まず、衆院選の推移。

男女共同参画白書 令和2年版」より引用

 こちらは参院選の推移。

男女共同参画白書 令和2年版」より引用

 もちろん選挙ごとに上がったり下がったりはありますが「女性の候補者が増えれば当選者も増える」というある種当然のことが分かります。
 昭和60年(1985年)あたりから衆院選・参院選ともに女性の候補者の割合が増えてきており、それに伴って女性の当選者も増える傾向にあります。

 こちらは、過去の参院選の候補者と当選者の結果から、男女別の当選率(当選者 / 候補者)の推移を出してみたもの。

令和元年執行参議院議員通常選挙結果調」より作成

 男性の方が当選率が高いというのは事実ではあるものの、見ての通り極端
に大きな違いがあるわけではありません。つまり、「国会議員の男女比において女性が圧倒的に少ない」という事実は、男性が圧倒的に能力が優れている結果ではなく、そもそも候補となる女性が少ないため、と考えるのが妥当であろうとわたしは考えます。

事実2:女性のチャレンジを阻む社会構造

 それでは、なぜ女性の候補者が増えないのか

 この点については「女性は政治に関心がない!」云々の話が出てきますが、女性だけが極端に関心がないという統計調査はありません。むしろ昨今の調査では、60歳以下の女性の方が投票率が高いというデータもあります。
よって、政治の世界の「当たり前」が女性のチャレンジを阻んでいるという現実を見なければなりません。

 上智大学教授の三浦まりさんは著書「日本の女性議員 どうすれば増えるのか」の中で、女性の政治家が増えにくい原因として3つのポイントを挙げています。

① 家族的責任
(子育ての負担が女性側に偏っている)
② ジェンダーステレオタイプ
(女性は家庭に入り家族的責任を果たすべきという意識)
③ 家族からの支援が受けにくい
(配偶者から賛成が得られないと立候補できない)

日本の女性議員 どうすれば増えるのか」より引用(カッコ書きの補足は筆者)

 これらは世間の「当たり前」として女性に求められている要素であることから、いざ政治にチャレンジをしようとした場合にはこれらの家族の世話の分担や周囲の理解や説得、家族の支援といったハードルがあり、これらによってチャレンジを阻まれる可能性が高い構造にあることを示しています。

 この一例として、1つめの「家族的責任」に関して男女での家事育児時間の統計に注目してみます。他国と比較して突出して低いのが日本の男性の家事育児時間。そして、その反面で突出して高いのが女性の家事育児時間です。

内閣府 「令和2年版 少子化社会対策白書」から引用

 一方で現在、専業主婦世帯と共働き世帯の割合は2000年あたりを境に逆転していて、現状では共働き世帯の方が圧倒的にマジョリティです。

労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」より引用

 しかし、共働き世帯であっても男性の家事・育児時間は専業主婦世帯と同じなのです。

総務省 「平成28年 社会生活基本調査 - 生活時間に関する結果」等から作成

 見てのとおり、専業主婦世帯でも共働き世帯でも男性の家事・育児時間はほぼ変わってないという悲しい結果となっています。

 つまり、社会は共働きが主流になっても、夫の家事育児時間は増えておらず、妻側が「家庭的責任」を担っているのです。

 「それでも政治家を目指したい」と考えたとしても、選挙区=地元にいかに貢献する活動を幅広く行う必要があります。その「地元」というのは多くの場合が男性のコミュニティで、かつ「活動」というのは夜の飲み会だったりします。家事・育児を抱えている女性がこういった場に足繁く通うためには、家庭の協力はもとより、お酒に強くある必要もあるのです。

 上記は単純な時間的な拘束の話で、ほかにも「票ハラスメント」など女性特有の障壁は多数あります。これらの事情を鑑みるに、女性が政治という場において男性と対等に参加する機会を提供されているとは言い難い状況です。

 これらの結果を総合的に勘案すれば、「女性の能力が低い」「女性が政治に関心がない」が女性政治家が少ない理由ではないことが分かります。

「比例代表」という可能性

 しかし、こんな女性の参加を阻んでいる日本の選挙制度に1つの可能性をもたらしうるものがあります。それが今回の参院選の「比例代表」(非拘束名簿方式)という仕組みです。

 ざっくり言うと「東京1区」とか「北海道3区」とか地域が限られた選挙区ではなく、全国を1つの選挙区として立候補が可能なものです。
※衆院選の「比例代表」は地域ブロック単位

 選挙区が全国ですからお祭りや運動会、お葬式、卒業式に家庭生活を犠牲にして参加したり、泥臭い地元活動の効果が薄いと言えます。

 よって政党も比例代表では女性候補者を多く出す傾向にあり、結果として他の選挙よりも多くの女性議員を生み出しています。

令和3年衆議院議員総選挙結果調」、「令和元年執行参議院議員通常選挙結果調」より作成

 能力本位で評価されるからこそ本質的な法案作成などの業務に注力できるという側面もあるようで、実際、先に紹介した三浦まり教授の著書では「参議院比例代表から選出された女性たちは全員、比例代表だったからこそ選挙区のことを気にせず立法活動に注力できた」という証言が紹介されています。

最後に

 この記事では、
・年代と男女比から国会議員の属性に大きな偏りがある
・男女比は世間一般の実力勝負の結果だけではない
・候補者のレベルで人数規模が異なる
・そもそも女性がチャレンジしにくい社会構造にある
・1つの手段として、比例代表の仕組みがある
ことまでを書いてきました。

 この後に比例代表の実態と、なぜ本キャンペーンで「#2枚目は女性」を訴えているのか、その可能性などについても書いていこうと思っているのですが、随分と文章が長くなってしまったのでひとまずここで区切ることにします。続きの記事は、近日中にまた公開いたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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