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旅先の京都で彼女と大喧嘩をして持て余したので仕方が無くナンパをした

連休を利用して祇園祭りへと京都へ脚を運んだ。
長距離運転が苦にならない僕にとってもう一つ楽しみとして、
クルマのタイヤをブリジストンのポテンザからミシュランのパイロットスポーツに履き替えたばかりで走りを試すにも絶好の機会だ。

2日目の夜。
食事を済ませて河原町から五条のホテルまでの帰り道、
気の強い彼女といつものように口論になる。
合理的なことは良いと思うが時にそれが過ぎるというか、実も蓋もなく思ったことを正直に伝えるのがベターといった寸法は如何なものだろうか。
その後収拾つかなくなったりしたとしても、あえてそれを言うべきかなど、「少しは考えて喋れよガキじゃねーんだから」とイライラをし始めていた。

人は心の生き物だ。
さすがに僕の心も余りに執拗な口撃に傷付きパリーンと音を立てて割れそうだった。
いつもならこちらも相手に思う存分にぶちまけるところ、大体の場合そこで露呈する口の悪さに相手がドン引きし、目を見て話してくれなくなるのが想像出来たこと、せっかくの旅先だという思いからそれを抑え、しかしたまらず僕は心の中で発狂した。

XのLiveでToshiが客席を「紅だ~」と煽るように。
「ナ○パタ~~~イム」
京都のストリートが僕を呼んでいる。
旅のため気分を変えようと普段仕事でも滅多にかけない黒ぶちのセル眼鏡をはずし、通常運転時のコンタクトレンズにチェンジ。
「大阪いた頃のツレと飲んでくる」とぶっきらぼうに彼女に告げ、ホテルを後にした。

ここは大阪ではなかったと言ったあと気付いたが細かいことは良いだろう、同じ関西だ。
早速ホテル向かいのコンビニへ直行し、得意技の500mlの氷結ストロングを2本購入する。
袋の酒を手にかけたまま街を徘徊し始めた。
まるでパジャマ姿で近所のコンビニへでも行った帰りのようにラフな感じだが、ここは旅先京都だ。
時刻は深夜0時を回ったところで、2時間が勝負だと目途をつけながら京都市内のど真ん中をブラつく。
やはり横浜よりは人は少ないが、地元の田舎で遊び回ってた頃を基準に考えれば全然人いるわけで、むしろ適度な人の数で調度良いといった感触。
先ずは正面から向かってくる背の高い綺麗なおねーさんをファーストコンタクトにと見定めた。

「すみませーん、京都駅行く人ですか?」
おねーさんがiPhoneのイヤホンを片方の耳だけ外す。
「あぁ、あっち側が家なんで方向的にはー」
「ってか僕、横浜の方から祇園祭りで来てて、明日帰るからせっかくなんで街ブラ中なんすけど、駅方面行ってないんで途中までご一緒していいですか?」
「あぁ、全然OKですよー」
iPhoneで再生中の音楽をOFFにしてもう片方のイアフォンも外すおねーさん。
何処と無く自然に心を開いてくれそうな予感だ。

たわいもない話しをしながらぶらぶら歩いている途中でふとあることを思い出した。
僕は先ほどコンビニで氷結を2本買っているではないか。
「そう言えば、2本あるんで一緒に飲みません?」
「wwwwww!ってか何で持ってるーん(笑)」
リアクションのとても良いおねーさんに1本手渡し、歩きながら乾杯した。

「結構歩くの?1本だけだし飲む間だけでも何処か座らない?」
「そうだね、どこ座ろーか」
道沿いのコンクリ造りの建物を見繕い、夏なら地べたに座ったらつめたくて心地が良さそうなその敷地に入った。
立ち入り禁止のチェーンをひょいと飛び越え、おねーさんも僕の後に続く。
ふとした時の行動が我ながら幼稚で哀しくなるがこういう時は逆に活きる。

適当な段差を見つけて2人で並んで腰を掛けた。
おねーさんは21歳の大学生のようで、アラサーの僕よりも一回り近く若い。
僕も「いくつに見える?」の合コンなんかではウザがられそうな問いに、
お世辞かも知れないが嬉しい感じで外してくれたので、嬉しくなり更にテンションが上がった。

「ってか私バイト先の店長以外アラサーの知合いいないんですけどー、もっと落ち着いているイメージが…」
「いや、大体所帯持ちとかなってて落ち着き始める頃だろうからその印象正しいよ。ってかヒトによるでしょ(笑)」
disられてるのかと思いもしたが華麗にスルーする。
いい歳した男がこんなフラフラしてるものかと、僕を傷つけないように表現したように聞こえたが、そもそも僕はそんなことをまったく気にしていなかった。
たまたま旅先の京都でも外でフラフラしながら飲みたくなっただけなのだ。
お酒が強くて酔えそうではあったが、一本ずつではお互い酔い乱れるわけでもなく、 珍しく普段のようなコンビニ梯子もせずに他愛もない話しで和み、
どちらからともなくいつの間にか寄り添うように距離を縮めていたのでジャブを打ってみた。

唇を難なくクリアしたタイミングでどさくさ紛れにブラのホックを指先で軽く弾いて外す。
おねーさんは息を荒げながらこちらのピンと張ったテントを撫でつけるように返して来た。掴みはOKだ。
僕も下へ手を回そうとすると細い指でその手を静止された。
「今日多いから流石にここじゃ出来ない」
真偽を確かめるように指で撫であててみると、おねーさんも腰を浮かせ差し出すように示す。
案の定トビラは白い羽の厚い壁に覆われているようだった。
「そーなんだ、でもこれどうしよう」
ピンと張ったテントのような股間を指し示すと優しいおねーさんは躊躇することもなくその入り口を丁寧に開き、おもむろにクチに含んだ。

ホテルへ着いたのは3時を少し回ったところだった。
寝息を立てている彼女を起こさぬよう、隣にそっと横になった。
想定よりは1時間程タイムオーバーであったが、アウェイのフィールドでの思い出に残る温もりを噛み締めるように目を閉じた。

後日。
どこで飲んでいたんだと今回の旅について振り返りながらGoogleマップを拡大していた。
「ひと・まち交流館京都」というセンス溢れるネーミングに感服する。 
本当に良い交流できた京都の旅だった。
島さんとしみけんのように土地土地をまわりたい思いだ。ナンパミラクル京都編でもレンタルしてみようか。

夏場の京都はうだるような暑さでとろけそうだったが、海の見えない場所で夏の思い出が出来たことは貴重だった。

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