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[ショートショート]SNSの怖友

また通知が来てる
先週も見覚えのない人から通知が来ていた。

SNSの通知を開くと一枚の写真が貼られている。
先回と同じだ

通知者のSNSを開いてもプロフィール欄に名前も自己紹介も何も載っていない

「一体、誰なんだろう」

そもそもフォローする人も投稿数も少ない、なかば冬眠したような自分のSNSに何か用があるのだろうか?
写真を見るとコンクリートの壁に挟まれた細い道路の写真
アスファルトの道の先には高架線をくぐる短いトンネルがある。

写真の道路は高架線の方に下っているように見える。

時間は午後5時ぐらいだろうか?

当たりは夕日に照らされているように見える。

先週送られてきた写真は髪の長い女性の後ろ姿
会社から帰宅する途中なのかあたりは大分薄暗くて、どこで撮られたものなのかよくわからない。

不気味な写真を送ってくる奴は一体誰なんだ?

最近、仕事でのストレスで調子が悪い上にこの訳の分からないSNSの嫌がらせ、体調がどうもすぐれない。

明日会社を休んで前に通ったことのある近くの心療内科に行こう。



病院に通院した夜、また同じように見知らぬ誰かから通知が来た。
一枚の写真
今度は鋭利なナイフの写真である。

恐怖で一瞬、眼をそむけた。

「一体誰なんだ!」

ナイフをもう一度見てみる。

そういえば同じようなナイフを持っていた。

どこにしまったのだろうか?

机の中、書庫の中、部屋のあらゆる引き出しを開けて探したが出てこない。

どこにしまったのか思い出せない。

最後に使ったのはいつだったか?

3年ぐらい前だろうか?

「そうだ!」
「思い出した!」
「最後に使ったのは、3年ぐらい前に病院に通院した夜の事だった!」

椅子の上に乗り部屋の天井を押すと屋根裏への隙間が少し開いた。

屋根裏を覗くと黄色い断熱材が覆っていた。

その上に新聞紙に包まれたものが置かれている。

それを手に取り屋根裏を閉じた。

「あった」
新聞紙の包みをほどくと中からナイフが出て来た。

「あの写真とすごく似ている」

気持ち悪いナイフだ。

明日、会社に行く前に捨てよう。




しばらくして休日の朝、呼鈴で起きる
「誰なんだろう?」
「こんな朝早くから」
ドアを出ると男が3人立っていた。

3人の男は刑事で、すぐに警察署に同行してほしいとのことだった。

どうも重大事件の参考人らしい。

せっかくの休日なのに仕方がない。

警察に協力するのは市民の務めだし、少し興味もある。



取調室とは本当に殺風景だな

目の前の刑事はなんか仕事できなさそうに見える。

色々聞かれたが、大分昔の事件らしい。

ほとんど記憶にないことばかり
どんな事件の捜査なのかいまいち刑事の話では分からないが、こんな捜査では事件は解決できないだろうな被害者も浮かばれない。

もう帰れるという事なので、刑事に案内されついていく。

廊下をしばらく歩き、部屋のドアを開けると留置場のような部屋に入れられた。

素早く刑事の一人が格子の扉を閉めて鍵をした。

「おい!ここから出せ!」
鉄の格子の前に立つ刑事の一人が言うには、お前は捨てたナイフで3年前に3人の女性を惨殺した。

ずっと警察は監視してたらしい

やっと物的証拠が見つかって、逮捕することができた。

お前は精神を病んでおり、事件の記憶がないと刑事は言った。

「SNSの相手は警察だったのか・・・」

やっと記憶を思い出した・・・




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