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春ギター【毎週ショートショートnote】

店先で、ひときわ目立つ桃色ボディ。
桜のあしらわれたそのアコギは、「春ギター 格安」のポップが添えられていた。

安っぽい、おもちゃみたい。
でもなぜか、惹かれてしまった。
ゆみこの小遣いで買えるほどの値段だった。

河川敷で鳴らしてみる。
案外いい音だ。
調子に乗って、一曲演奏。
晴天の下、単独ライブだ。

川むこうの桜に流され、「桜ソング」をかき鳴らす。
定番の「さくら」に、ちょっと古いやつだって。
思わず、歌も口ずさむ。



フォークソング部は、廃部だ。
先輩の卒業で、部員はゆみこだけになってしまった。
でも、べつにいい。
部活なんかなくたって、私は弾くのをやめたりしない。

ざあ、と強い風が吹き、桜の花びらが舞いおどる。
負けるもんか。
ゆみこはさらに音を鳴らした。


「その曲、私も好きです!」

急に後ろから声をかけられ、ゆみこは慌ててふりかえった。
そこには、自分と同じ制服の子。

「私もギターやるんです!先輩、何部ですか?」

新一年生か。
初々しい黒髪の彼女に、ゆみこは目を細めて笑った。

「フォークソング部部長の___!」

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(441字)

ほんとうに「桜のギター」ってあるらしいですね。
ゆみこの小遣いで買える値段ではありませんでしたが。


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