カート・ヴォネガッド・ジュニア『スローターハウス5』
これがこの小説のあらすじになります。これがすべてです。カート・ヴォネガッド・ジュニアが第二次世界大戦にアメリカ兵として従軍し、ドイツのドレスデンで捕虜として空襲をうけた体験をそのまま記述したような小説です。
私がいちばんおもしろかったところは、ビリーのけいれん的時間旅行に影響を与えた小説家キルゴア・トラウトの登場です。『第四次元の狂気』『宇宙からの福音書』『株式取引惑星』などの面白そうな小説の作者です。彼についてこのように表現されています。
ビリーは相当にものわかりの良い人間なのか、クソみたいな小説のくだらなさのおくに潜む深い思想に気づいたようです。従軍したことによっておかしくなって、現実と小説の境がわからなくなります。そのときにキルゴア・トラウトの小説から受けた影響を自分の経験と勘違いして話し出すほどになってしまいます。ビリーは偶然同じ町にすんでいたキルゴア・トラウトに出会いますが、彼が少年少女をだまして新聞配達させているというオチも楽しいです。
この小説が出版された1970年前半にはどのような感想をもって読まれたのだろうか、アメリカがベトナム戦争に参戦している時期なので反戦小説的に扱われていたのかもしれない。2023年時点でも世界各地で戦争が行われていて、人間も進歩ないなという若干あきらめも含んだ気持ちで読まれているのかもしれません。戦争に参加したことはありません。戦争で悲惨な体験をしたという話はもう十分に世間にあるので、その先のどうしたら戦争を回避できるのかという議論ができないかと思っています。
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